火炎
「お、おう」
とゼブルはいい、左目の横にある取っ手を引っぱり、開けました。
チキンは火炎の強さを調整するレバーを最大限にし、そして発射ボタンを押しました。
ドラゴンの口から、森林に、想像を絶する炎が撃たれました。
「どひゃあ。なんでえ、森林なくなっちまうぞ、チキン」
炎は、口から離れるにつれ、横幅が大きくなっています。ドラゴンは首を左右に振りながら、森林を燃やしてゆきます。
「お、おい、もういいだろ?」
ゼブルが、左目から離れて、チキンの頬を突きます。
「う、うん」
チキンは、火炎放射を止め、黒こげになった大地を眺めました。すると、黒がぎりぎり進出していない辺りに、セブンがいました。
最新型のキンダーロボを従えています。蒸気で動くので、排出筒が、背中からにょきりと生えています。そのロボは、セブンの六倍ほどの大きさを誇っています。細かい作業ができるように、手の関節は人のようにしてあります。しかし、細かい作業より、人を殺すことを得意としています。
「お、おい、あのロボより……どうしてあいつらが生きてんだ?」
チキンの心臓が、大きく跳ね上がりました。キンダーロボの右手には魔法を得意とするピピスが、左肩には監視も任されていた目のいいブレティがいるではありませんか。一体、どういうことでしょう。
チキンはドラゴンの足を進め、セブンとの距離を一気に縮めました。
「どういうことだ!」
拡声器を使い、ドラゴンの口から叫びますと、
『どういうこともくそもないだろ。全ては、お前に浄化杖を作ってもらう作戦だったのだ』
頭に声が響いてきます。どうやら、精神共有の魔法を使っているようです。
セブンの冷たく、やや棘のある声が、チキン、そしてゼブルの胸に流れてきます。
『俺はな――』
聞けば、聞くほど、チキンたちの人生の全ては、大人たちの策略で作り出されたものでした。大人達は、ただ浄化杖が欲しかっただけなのです。
セブンは自分の父上とともに、かつて不老不死の力を得ました。不浄石と持続石をある方法で融合させると、不老不死の薬が生まれることを、キルダン大陸一の頭脳を持つ研究者が発見したのです。
無論、多くの大人たちも、不老不死を得ました。しかし、老人たちは、それに反対しました。人々は限りある命だからこそ、頑張れる、と。それからというもの、老人と大人はいがみ合い、結局老人は子供を連れて、大人の国を去りました。
『あれから、どうなったのかは知らない……』
それからも、セブンの声が、チキンの頭に次々と突き刺さります。
『子供なのに、老人の国に連れていかれなかったのは俺だけだ。父上が、我が祖父を殺したのだからな。
大人と老人は、今もまだいがみあっている。最初、老人と大人は話し合いによって争いをおさめようとした。しかし、話が交わることはなかった。だから、戦争が始まった』