暗い奪い合い
ゼブルがセブンに劣らぬ大きさの剣を抜き、ブラフに飛びかかりました。
セブンは、それを食い止めようとしました。ですが、ブラフは左手を軽く挙げて、それを止めさせます。
「くらえって!」
ゼブルが大剣を振るうと、風切り音が唸りを上げました。
ブラフは、それでも落ち着き払ったままです。このまま、ゼブルの剣が彼を斬るかに見えましたが、ぎりぎりのところで、ブラフが抜刀しました。
デクスバウワーが、全身を見せます。
二本の剣が、互いを喰らいあいます。なりふり構わぬ喰らいあいです。
ひとしきり火花を散らした後、ブラフが、「ふん」と力むと、ゼブルが押し合いに負け、後方に飛ばされました。
よろめきつつも、ゼブルはすぐさま体勢を立て直し、再びブラフに立ち向かおうとします。しかし、力の差は明らかです。
チキンは、浄化杖によって、ブラフを消そうと、振りました。しかし、何も起きません。あれあれ、と何度もやっているうちに、いつの間にか、セブンが背後に回っています。
チキンの手から、浄化杖が奪われました。まるで赤子の手を捻るかのように、あっけないものがありました。
「ご苦労、ご苦労」
ブラフが、満面の笑みを浮かべています。
「念願のものが手に入ったぞ。さて、ここで一振りしたいところだが、邪魔者が多いようだ」
階下から、なんだなんだ、という声とともに、大勢の兵士が駆け上ってくる音がしています。きっと、さっきの騒音を聞きつけたのでしょう。
「それに、独りで振るのはつまらぬ。うむ、明日の朝一番に、我が国民全員を集め、そこで見せてやろう。世界が、浄化される瞬間を」
ブラフは、独り言のようにいってから、浮遊の魔法を自身にかけ、ドラゴンの口から降り立ちました。続いて、セブンも、です。
「ぐおおおおお! 俺を差し置いて、あいつらなめてんのか!」
怒りと悔しさで、ゼブルの顔は、赤くなったり青くなったりを繰り返しています。
「ええいっ! こしゃくな! ゼブルの本気を思い知らせてやる。おい、チキン、バトルロボを呼び出せ」
「そ、それより、もっといい方法があるよ」
「な、何?」
「うん、ちょっと見てて」
チキンはすたすたとドラゴンの口の右側に行き、そこに隠れるようにしてある小さな黒いボタンを、踏みました。すると、ドラゴンの口が閉まり、床から操縦席と、ピカピカの円盤状の床が姿を現しました。
「な、なんだ、なんだ?」
ゼブルが、驚いています。
「うん、実は、この城を、こっそりと改造してたんだ」