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杖渡し

「ご苦労、ご苦労」

 聞き慣れない声に手を止めて、声の主を見ました。すると、そこには、アダンティーキングのブラフがいるではありませんか。

 金のボタンに、肩当て、そして王冠。とても威厳に満ちています。百獣の王のバックルや、細身ではあるものの、鋭さはキルダン大陸一ともいわれるデクスバウワーという剣が、彼の偉大さを引き立てています。

 髪は、燃えるような赤色です。右眼は、失明しているらしく白目のままです。左眼も、上から下にかけて縫った痕があります。ブラフは王であると同時に、相当な剣の使い手である、とも聞きます。きっと、今までの戦いで受けた勲章なのでしょう。

「さて、その杖を渡してもらおうかな」

「き、貴様! どうやってここへ?」

 守衛二人が、ブラフに飛びかかりました。けれども、ブラフが何事か呟くと、後方へ大きく弾かれました。悲鳴とともに、二人はドラゴンの口から急降下。

 おそらく、ブラフは魔法を使ったのでしょう。魔法まで使える、とはさすがにチキンも知りませんでした。普通、剣士は魔法が使えませんし、使えてもちょっとした程度です。でも、今のは十分に威力がありました。

「くっ……」

 威勢のいいゼブルの額で、冷や汗が光っています。

「そんなに怖いか?」

 聞き慣れた声がしました。え、と思っていると、奥から現れたのは――

「セブン!」

 ゼブルが、素っ頓狂な声を出します。一体、どういうことでしょう。セブンは、キンダーキャッスルの王のはず。なのに、ブラフを前にして、なぜ落ち着き払った態度でいられるのでしょう。

「お前、とっととそいつをやっつけろよ! ま、俺がやっつけてもいいんだけどよ」

 ゼブルがいうと同時に、ブラフが手で空を掻きました。

 ドゴッ、という音がし、ゼブルの近くの床が砕けます。

「ひっ」

と思わず、ゼブルが小さな悲鳴を上げました。

「怖いのか? そして、お前はこの状況をまだ理解していないのか?」

 セブンが、半ば呆れたようにいいます。彼の声は、冷え切っていました。

「は? わけわかってないのは、お前の方だろ? とっとと、そいつをやっつければ、俺たちの戦争は終わる」

「チキンは、だいたいわかっているようだな」

 セブンが、チキンを見ます。その時だけ、子供の王は少し笑みました。

「おい、我が息子よ、もうあの杖を奪ってもよかろう」

「もちろんです、父上」

 この頃になると、ゼブルは目を白黒させて、パニックになっていました。

「あ、あんまりわからねえけど、でも、お前らが悪者だってのは、わかった。よっしゃ、チキン、いっちょ、俺がこいつらをやっつけてやるぜ!」


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