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研究書で研究しよう

 ちょうど今、前方から一羽の鳥が滑空してきました。海色を浴びた全身、翼のなびいている部分は、白波色です。種類は、ティカタ。幸運を呼び寄せる力がある、とされていますが、チキンはそんな非科学的なことは信じません。子供なのに、チキンは現実的なことにしか興味を覚えなかったのです。

 キンダーキャッスルの楼閣、ドラゴンに見立てられたその口からたれさがっている麻紐の先に、板がくくりつけられています。樫の木から作られた、しっかりした板です。

 ええ、そうです、ブランコです。チキンは、それに乗って揺られているところでした。

 チキンは、浄化石について書かれている本をむさぼるようにして読んでいました。

 不浄石が、人を怪物にするのなら、浄化石はきっとラタを元に戻す力を持っているはずなのです。問題は、どうやってラタにそれを触れさせるか、です。それに、そもそも浄化石にそのような力があるかどうかもまだ定かではありません。

 ですので、チキンはこうして研究書を必死になって読んでいるのです。そして、今、読み終えました。ですけど、答えはそこに書かれてありませんでした。ああ、どうすればいいのでしょう。ラタの命は、もう少ししかありません。

 空の浅いところが、朱色に染まってゆきます。もうじき、夜色で満たされることでしょう。

 チキンは、盛大にくしゃみをしました。世界が夜にバトンを渡しかけているのですから、寒いのも無理もありません。それに、ここはとっても高いところです。

「おおーい、引き上げてくれ」

 チキンは、上にいる守衛に頼みました。



 思わず、ビーカーを床に投げつけてしまいました。ブカブカのブーツが、それを踏みつけます。

 チキンはチキンポットに戻り、あらゆる研究書を読んだのですが、もうお手上げ状態でした。

「も、もうダメだ……。浄化石と不浄石の本が、少ない……。なぜなんだ……」

 そうなのです、浄化石と不浄石についての本は、チキンも何冊か持っています。でも、そこには彼の求めている情報は何もありません。

 おそらく、キンダーキャッスル図書館にあるのですが、チキンはまだ十一歳で閲覧禁止だよ、と図書館員にいわれたのでした。

「でも、でも、きっと浄化石が、ラタを救う鍵なんだ……」

 しかし、その鍵がみつかりません。チキンポットにあるのは、読み終えた研究書ばかりです。

「待てよ……」

 まだ探していないところがありました。あの穴ボコです。あそこの中に、もしかしたらラタを助ける鍵が転がっているかもしれません。

 何が待ち受けているのかわからない地下ですけれど、もはやそんなこといっていられません。


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