023話 檻
「……………………んっ、……あぁ」
目が覚めると、俺は知らない天井を見ていた。
コンクリートでできた、味気ない灰色の壁。床も硬くて冷たい。
「ここは……どこだ?」
仰向けに寝ていた体を起こし、周りを見渡す。見渡すといっても、その全貌はすぐにつかめた。なぜなら、この部屋は六畳くらいしかない狭い場所だったからだ。
天井の低い、息苦しいこの室内には、鬱積した湿っぽい悪臭が漂っていた。
どうやら俺は部屋の隅にある古びたベッドの上に寝かされていたらしい。
錆びついたベッドが今にも壊れそうで怖くなり、俺はゆっくりと立ち上がる。
「痛っ……!」
朱里と綴に負わされた怪我のせいで全身が酷く痛む。
「あれから、どれくらい時間が経ったのだろう?」
この部屋に時計らしきものは見当たらないのでよくわからない。というか、この部屋には俺が寝ていた古びたベッドの他には、一切の物が置かれていなかった。
ベッドの反対側の隅には、上半分に鉄格子の小窓がついた鉄の扉がある。
――檻。そう、一言で表すのなら、ここはまるで牢獄のようだった。
「ったく、どうしたものかな」
とりあえず、着ていた制服をまさぐって所持品の確認をする。携帯や時計にナイフ等、持っていたものはすべてなくなっていたが、なぜか拳銃が一挺だけ残されていた。
「なんでこれだけ取られていないんだ?」
残弾数を確認すると、あと一発だけ残っている。
これから俺はやつらに何をされるか分かったものじゃない。いざというときはこの銃弾で自殺してやろうか、などとくだらないことを考えながら、俺は鉄格子の小窓がついた扉の前まで行く。無駄だと思いながらもその扉のつまみを引いた。扉が軋んで音を立てる。
「――って、普通に開くじゃないか。鍵とか、かけてないのかよ」
俺は開いた扉から少し顔を出し、近くに誰もいないことを確認してから外に出た。
もしかしたら警報が鳴るかもしれないと覚悟していたが、その心配も杞憂に終わる。
俺が入っていた部屋の隣や正面にも、同じような独房があった。
自分の他にも誰か捕らえられているかもしれないと思い、正面の独房の小窓を覗いたが、中には誰もおらず、乾いた赤黒い血の跡が床に広がっていた。
「うっ、なんだこれ? この辺、やけに血生臭いな」
他の独房の中を見る気になれず、この独房群の空間からの脱出を試みる。
すると、一直線に長い廊下が続く場所に出た。隠れるような場所もなく、俺の体は広い空間に晒される。さっきの閉鎖空間とは大違いだ。
「チッ、この施設内がどうなっているのかは知らないが、早く移動しなければ」
何か地図のようなものがあればいいのだが。構造を把握しなければ動きようもない。
と、辺りを見回しながら廊下を駆けていた俺の足が、とある部屋の前で止まる。
この廊下にもいくつか扉があり、それは各部屋に繋がっていたが、その扉はどれも閉まっていた。だが、この部屋の扉は開いている。
興味本位でその扉の中を覗いた俺の目に飛び込んできたのは――
「……と、父さん!」
奥行きの広い部屋で、両手両足を椅子に固定された父――九条宗司の姿だった。
三章開幕(CV種田梨沙 FGO CM風に)




