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魔眼の王~思考読解の邪視~  作者: くろふゆ
  第二章 終焉の鐘が鳴る rule uselessness kills each other
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014話 襲撃

 一体どうしてこうなった? などと、慌てふためいている場合ではない。


「落ち着け。冷静になれ。考えろ。まずは状況を的確に捉える必要がある」


 襲撃者は十二人。だが、あと数人は伏兵がいると考えて間違いない。


「こちらの勢力は、九条家の警備員が八人。父さんのボディーガードが四人。そして、俺に京香が一人。しかし、京香は今いない。代わりに野々村が俺に付き、父さんにボディーガードが三人だ」


 俺は引き出しから戦闘用の武器を取り出し、それを自身が着ている黒い制服の至る所に仕込む。そして、制服のポケットからスマホを取り出し、野々村に電話をかけた。呼び出し音の二回目で野々村が出る。どうやら周囲にジャミングはかけられていないようだ。


『と、透様! ご無事ですか!?』

「ああ、問題ない。野々村さん、今どこにいますか?」

『……三階の自室です』


 九条邸には、住み込みの使用人やボディーガードたちのために与えられた、簡素な個室がある。余っている部屋を有効活用しているのだ。


 三階の野々村の部屋……か。そこから俺の部屋までは少し距離がある。


「よし、なら野々村さんは三階のパーティー会場に向かってください」


 九条邸の三階には、九条家と友好の深い人たちをもてなすための、広めのパーティー会場が存在している。


『パーティー会場? 透様のもとに向かわなくてもよろしいのでしょうか?』


 電話口から野々村の戸惑いの声が聞こえた。


「構いません。俺がそっちに向かいます。野々村さんは先に行って、パーティー会場に侵入者がいた場合、それを排除しておいてください」

『三階ですよ。……いますかね?』

「地上の戦闘に紛れ、なんらかの手段を用いて上から侵入してくる可能性も否めません」

『かしこまりました。宗司様はどうなさっているのでしょうか?』


 一応、本来の主である父さんの安否が気になるのだろう。


「父さんも、おそらくパーティー会場に向かうはずです。あなたはそこを防守することに専念してください」

『承りました。では透様、ご無事で』


 野々村との通話が終わる。そして、俺は自室の扉を開け放ち、廊下に出た。

 どうやらまだ屋敷の外で交戦中のようで、屋敷内に被害はなさそうだ。しかし、どこに敵が潜んでいるか分かったものじゃないが。そのとき、後方から不意に声がかかった。


「あ、あの……透様?」


 声のほうを振り向くと――そこには清楚なメイド服を着込んだ、佐藤夕夏がいた。

 ……なんだ? まだ逃げていなかったのか? 戦闘力のない使用人は、緊急時の場合退避命令を出しているはずだが……


「どうしたんですか? 逃げ遅れましたか?」

「いえ、透様を置いて、私だけ逃げられませんから」


 夕夏が柔らかな笑みを浮かべる。俺のことを心配してくれていたのか。


「……そうか。ありがとう」


 と、表面上は柔らかい笑みを作りながらも、俺は夕夏の行動の裏を読む。

 一人で逃げるよりも、俺と行動をともにしたほうが安全と判断したのか?

 それとも――


「――本当の目的はなんだ?」


 俺は左目に意識を集中して『洞視眼』を発動させ、低い声と鋭い目線を夕夏に向けた。

 一瞬、夕夏の顔がこわばり、


「えっ? 何をおっしゃっているのですか? 私は透様を――」

《……この襲撃規模はまずい。でも、透様を差し出せば、私の命は助かるかもしれない。私には病気の母と二人の妹がいる。まだこんなところで死ぬわけには――》


 夕夏の思考の途中で、俺は夕夏との距離を『縮地』で素早く詰める。

 そして、右手のひら全体で夕夏の顔面を掴み、指先の握力のみで強く締め上げた。


《……えっ? なんで? 私、今何をされて――》


 俺は夕夏の顔面を掴んだまま、力まかせに背中から頭を地面に叩き付けた。


「あがぁ! うっぅ!」


 激痛に耐えきれず、夕夏が喘ぐ。おそらく、夕夏のこの行動にも、複雑な事情があるのだろう。それはこの左目――『洞視眼』を通じて十分に伝わってきた。


 その解釈は無限だ。だが、事実は一つである。

 こいつは俺を――――裏切った。


「……不快なんだよ」


 夕夏が顔だけを必死に起こして俺の顔を見た。


「なにっ、その左目? まさかっ! あの噂は本当に……」


 夕夏は、俺の左目をはっきりとその瞳で捉えた。

 今、俺の左目は、あの毒々しい紫色に輝いているのだろう。


「秘密を知られたからには、仕方ないな」

「ま、待ってください! 私は透様を守るためにここにきたんです! 本当です! 信じてくださいっ! 私、誰にも何も言いませんから!」


 その言葉が無意味だと理解していない夕夏が、俺を説き伏せようと言葉を紡ぐ。

 だが、その必死の弁解も、俺には何一つとして響かない。


 なぜなら、この瞬間も俺の左目が、夕夏の『嘘』を暴き続けているからだ。

 自分の感情がなくなり、頭が冴え、心が冷えていくのがわかった。

 いや、もう俺の心はとっくに壊れていたか。


「佐藤夕夏、お前はもう――用済みだ」


 軽い脳震盪を起こし、身動きの取れない夕夏の頭上に俺は右足を掲げ――

 ――容赦なく夕夏の頭部を踏み潰した。


「ぐ、ぐえぇぅ……ぇ」


 ギシギシと夕夏の頭蓋が軋む音が鳴り、潰れたカエルのような声が上がる。

 足をずらすと、夕夏は白目を向いて痙攣しており、意識を失っていた。


 これでも一応、手加減はしたつもりだ。死んではいないだろう。

 しかし、重度の脳震盪により意識喪失前後の記憶が混乱し、直後の記憶がはっきりしないはずだ。つまり、俺の『洞視眼』を見たという記憶は喪失することになる。


「俺の邪魔をするやつは誰であろうと潰す。だが、今日まで仕えてくれた礼だ」


 俺は夕夏の頭部を動かないように固定して抱きかかえ、自室に戻ってベッドに寝かせた。

 この部屋が襲撃されれば、夕夏の安否は保障できない。だが、そんなことまで考慮してやる義理もない。それに、おそらくやつらの狙いは俺、もしくは俺の父――九条宗司だ。

 下手に動き回らず大人しくしていれば、敵も使用人にまでは手を出さないだろう。


「さて、ここからが問題だ。何事もなくパーティー会場までたどり着ければいいのだが」


 それにしても、こういう大事なときに限って、京香は九条邸を留守にしている。


「まったく……京香のやつ、一体どこで何をしているんだ?」



これにて日常編は終わり、次回から戦闘シーンに

本格武術アクションへと移行します

ここからさらに熱くなります

どうかお付き合いの程よろしくお願いいたします

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