010話 決意
今日からは普段通りに授業が行われていた。だが、俺は数学教師の授業を話半分に空を眺めている。恨むのなら、くじ引きで俺を窓際の席にした担任教師を恨んでくれ。
教室はいつも通り平凡で、授業には何の面白味もなくあくびが出る。
……退屈だ。この学校、テロリストに占拠されないかな。なんてくだらないことを考える。実際にそんなことがあったら困るのだが、もし本当にそうなれば、俺はクラスメイトを盾にして自分だけは助かろうとするだろう。俺はそういう人間だ。
幼い頃から、誰よりも人間の醜いところを見てきた。
そして、自分自身も醜い存在に成り果ててしまった。
それにしても退屈だな。こんなことなら、暇潰しに漫画でも持ってくればよかった。
この席の位置なら教師にばれることもなく読めるだろう。
そもそも、なぜ俺がアニメや漫画を好きになったかというと、それは俺が中学に上がり、九条邸に戻って、超能力について情報収集をしていたときだった。
最初は自分以外にも特殊な能力を持つ者がいるかを調べることが目的だったが、そのような超能力者は九条家の力を使っても見つけられなかった。
だが超能力者を探す過程で、ネット検索ではいくつものアニメや漫画がヒットする。
俺は興味本位でそれらを見たが、自分に似た特殊な力を持った少年少女が、物語の中で活躍する姿に強く惹きつけられた。それを見るうちにだんだん毒されていき、忌避していた自分の能力も『俺は選ばれた存在なんだ』と思うことで自信を持つことができた。
紫色に変わる左目も、気持ち悪いと思うことがなくなり、今ではちょっとカッコいいかも、とすら思っている。このような思考を持つ人間を、人は『厨二病』と呼ぶらしいが、そう呼ばれる人たちと俺には一つだけ違いがある。
それは、俺が本当に常人とは異なる力を有しているということだ。
しかし、俺の能力は創作物の主人公のように一撃で建物を粉砕したり、物理法則を捻じ曲げるような凄い力じゃない。銃を持った人間に囲まれてしまえば、為す術もなく殺されてしまうだろう。――『他人の思考を読む能力』――
たったこれだけの『奇跡』で、誰が世界を変えようと思うだろうか?
せいぜい変えられるのは、自分の周りの小さな世界だけだ。
だが、俺は九条グループと『洞視眼』。この二つを上手く使い、世界を変えてみせる。
そのためには、人知を超越する圧倒的な知能と精神力が必要だ。
「……やり遂げてみせる」
これは俺の恩人である少女――アーシャへの恩返しでもあるのだから。




