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魔眼の王~思考読解の邪視~  作者: くろふゆ
  第一章 九条透 daily life and old days
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009話 九条透と変態メイドⅡ

 翌朝。いつも通り、俺は目覚まし時計のアラーム音に起こされる。


 浅い眠りから覚めた後、京香が朝食の用意をしている間に、俺は白麗院の黒い制服に着替え、何事もなかったかのように朝食を済ませて家を出る。


 京香が九条邸を空けるのは昼からなので、行きの車にはボディーガードとして同伴した。


「透様ぁ、行ってらっしゃいのハグをしてください」

「……馬鹿なことを言うな」

「え~、してくれないんですか~? 寂しいなぁ~」


「仕方ないな」と呟き、俺は目をつぶって「んっ」と京香に体を委ねた。


 すると、京香が大きく広げた両腕に頭を抱きかかえられる。顔全体が京香の大きな胸と密着し、柔らかな張りのある感触に押し潰された。


「ちょっ……! むーっ!」


 京香は胸だけでなく、ここぞとばかりに全身を密着させてくる。

 引き締まったお腹が触れ合い、むっちりした太股を俺の足に絡めようとしてきた。


 いつになく本気の愛情表現。上目遣いで視線を合わせると、京香は目にハートマークを浮かべているようだ。完全に暴走している。


 髪を梳くみたいに優しく愛おしむように頭を撫でてきた。


 ……やばい。俺は下半身の一部に一気に血が集まるのを感じて、なんとか京香の熱烈なハグから抜け出そうとする。が、京香の両腕に背中をホールドされ、優しく愛撫された。


 凄く甘い、いい匂いがする。そして猛烈な多幸感に包まれた。

 甘い痺れのような快感がじんわりと広がり染み込んでくる。


 あぁ、もう……ダメだ。頭が真っ白になる。


 京香は俺の弱点を知っていた。昔から誰にも愛されず、必要とされてこなかった俺はその反動で誰かに抱きしめてもらうのが凄く好きで、一度愛情を込めて抱擁されてしまうと全身の力が抜けてしまうのだ。膝から崩れ落ちそうになる躰を必死に支えるので精一杯になる。自分から他人と距離を置いておきながら、心の奥底では誰かに側にいてほしいと思っている。そんなことまで、京香には見抜かれていた。


「むー、んっ、ふ……ふ~っ……ふ~っ……ふっ、んっ、んふ~……」


 全身が京香のモノにされているみたいで……

 京香の感触と温もりを、躰に覚えさせられちゃっている。

 これ以上抱きつかれていると、常に京香が側にいてくれないとダメになってしまう。


「三日分の透様成分を吸収しま~す♪ あはっ、癒されるぅ~」


 京香が貪るように俺の首筋に顔を埋めて、その匂いを躰いっぱいに吸い込んだ。呼吸が荒く、情熱的な艶かしい吐息が俺の肌に当たる。俺はろくに抵抗もできず、悔しさと恥ずかしさで耳が熱くなった。それでも嫌じゃないと思う気持ちが、また俺を悩ませる。


 瞳を輝かせた京香に首筋をれろっと舐められた。舌先が敏感なところを這いずり回る。

 躰がゾクゾクする感覚。このままだと快楽の渦に飲み込まれる。


「あぁんっ、う、今、離すなら……許してや、る、ひゃ……ぐ、んんっ、離し……ダメ、ダメ! 思いっきり、ぎゅってしてないで……お願いっ、ぁん! あ、んっ……」

「ふふっ、可愛い喘ぎ声。透様を独り占めしたい。ちゅっ♪」


 最後に首にキスをした後、京香の舌は首筋の上、俺の性感帯の一つである耳元へ。そのままかぷっと京香は俺の耳を咥えると、はむはむと甘噛みしてくる。


 しばらく俺の上げる嬌声を堪能すると、京香は次の行動に移った。

 入る……京香の舌が耳の穴に入ってくる。浅いところから、奥へ、奥へと……


 あぅ、ダメダメダメ! 躰が熱くなる。奥が疼き、頭がびりびりするぅ。


 京香は俺の頭の後ろを左手で支え、右手で腰を抱き上げ、艶のある唇を近づけ――


「ん……んんっ……! 京香、だめっ! つ、続きは……京香が帰ってきてから、ね?」

「……うーん、そうですね。やっぱり透様のお部屋で誰にも邪魔されずにしたいですし」


 残念そうに、まだ少し諦めきれない顔で京香が俺を解放する。

 ……危なかった。あのままだと絶対に犯されていた。言っとくけど、ここ外だぞ。


「はぁ……はぁ……調子に……乗りすぎだ、京香。帰ってきたら仕返ししてやるからな」

「はい! 透様のお仕置き、楽しみにしています!」

「なんで嬉しそうなんだよ、この変態!」


 俺は車内で京香としばしの別れを告げる。

 帰りの車には、別のボディーガードが来るらしい。果たして誰が来るのやら。


 車を降りた俺は、いつものごとく道の途中で詩乃と合流し、どうでもいい会話をしながら白麗院に向かった。教室に入ると、昨日よりも多くの生徒に挨拶の声をかけられる。


 昨日のうちに、今まであまり俺のことをあまり知らなかった生徒も、去年の俺の立ち振る舞いを聞き、俺に対して好感を持ったのだろう。俺はその挨拶に柔らかな笑みを浮かべて応える。洗練された演技に、視界の端で詩乃がなんとも言えない表情を浮かべていた。


 俺は自分の本質が『悪』だということを理解している。

 言葉巧みに他人を惑わし絞り取り、己の感情を表に出さず人を騙す。

 常に利害の計算のもとに動き、すべての人間は自分の役に立つ道具だと考えている。


 他人と楽しみを分かち合うこともなければ、誰かのために涙を流すこともない。

 ただ、変わらない世界に対して憎しみを募らせるだけ。


 まったく、我ながら嫌な性格をしていると思うよ。


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