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異世界偉人フェスティバル  作者: 遠野空
第一章 幻想世界の秋葉原
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馬鹿曰く「まだまだ微乳」


 とっさに貴時は、身構えてしまった。

 別に腕に覚えがあるわけでもないのに、可愛い女の子(小学生だが)連れてる時に、見事に絡まれてしまったと、そう確信したからだ。


 これはもう、ぶん殴られた挙げ句に、二人揃って監禁とかされるんじゃないかと!


 まあ、監禁するにしても、相手も貴時には全然用がないはずだが、本当にそこまで考えてしまったのだからしょうがない。

 日頃から羊のごとく平和に生きているせいで、こういう時はまずパニクる。

 しかし、そろそろと振り向いた瞬間、貴時は脱力した。


 ニヤニヤ笑いながら立っていたのは、男の癖にロン毛で、しかも嫌みなほど切れ者風の二枚目だった。

 知り合い中の知り合い……なんと、唯一の親友の秋月澄人あきづき すみとである。


「おまえ、来てたのかっ」





「おうとも」


 ニヤけた二枚目顔のまま、澄人は頷く。 


「まさかこれほど早く再会できるとは思わなかったけどな」

「……タカくん」


 貴時の背後に半ば隠れていたユウが、そっと腕を揺すった。


「お友達……ですか」


 たまにポロッと敬語が出る子なのだが、今もそうだった。

 多分、無駄に高身長の野郎を見て、不安になったのだろう……ユウも、貴時以上に人見知りする方だし。


「ま、まあ……うん。中学入学からこれまで、ずっと友達ではあるね……うん」

「こらこらっ。嫌そうに言うな、嫌そうにっ」


 澄人がずばっと指摘し、ユウを見て軽く頷いた。


「おまえのことは、耳タコになるほど貴時から聞いてるぞ。俺は秋月澄人という。まあ、適当によろしくな」


 勝手に超偉そうに自己紹介した後、「なるほど、思わぬ再会ってヤツな?」と思わせぶりな目で見てきた。


「そうだよ、悪いかっ。ようやく昔の幼馴染みに出会えたんだから、少しは遠慮しろっ! だいたいなんで、俺の望んだ世界におまえがいるんだっ!?」

「まあ、そう冷たいことを言わず! とりあえず、この街の秘密を教えてやるから、来い。最初に知っておかないと、いろいろとまずいことが起きるんだよ」

「い、いや、俺は今、ユウちゃんに案内してもらってだな――」


「いいの、タカくん。お友達に案内してもらってきて」


 ユウがはにかんだように微笑んだ。

 前方を指差し、鉛筆みたいな細いビルを指差す。


「あそこに、ユウのお部屋があるから……最上階だから。終わったら、訪ねてきてね。お隣の鍵、預かっておくから」

「あ……そ、そう? じゃあ、ちょっとだけ……せっかく会ったのに、本当にごめん。すぐ帰るから」

「いいの。……それより、背中のお荷物、預かりましょうか。ユウが運んでおきます」

「えっ」


 言われて貴時は、今更ながらに、自分が巨大なリュックを背負っていることに気付いた。

 これまでは、そんなことを思い出す余裕もなかったのだ。


「ありがたいけど……重くない?」


 何キロもあるリュックを「うんしょっ」と両手で抱えたユウを見て、貴時は申し訳ない気持で一杯になった。


「へ、へいきなの」


 ちょっと引きつった顔で、にこっと微笑む。


「先にお部屋で……待ってるね」


 貴時は、リュックを抱えて慎重な足取りで歩き去るユウの姿に、思わず見とれてしまった。

 あんな健気な子、今時いるだろうか。


「しかし……まだまだ微乳なのがなぁ」


 首を振って馬鹿が――いや、澄人が呟く。

 

「やかましい、死ねっ」


 いい気分の時に水を差され、貴時は思いっきり顔をしかめた。


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