領主の息子を探しますか
7
転生から一週間ほどが経った。運の悪すぎる俺たちは当然のようにドタバタしながら、というかトラブルに巻き込まれながらレベルを上げていた。
「なぁ、ケイ。お前時々いないがあるけどどこで何してんの?」
「もちろん仕事だ。それしかない!他は金にならん!」
ケイが(おかしなことを言うなぁ)とでも言いたそうな目でこちらを見ている。
「お前クビになったんじゃなかったの?」
「クビになんでなってない!役立たずだと言われただけだ!」
(同じようなものだと思うが)
「仕事って何ですか?」
いつの間にかリコットがきていた
「主に指名手配や行方不明者の捜索だ。警備からは外されたからなぁ・・・」
「外されないわけないだろう。てか行方不明者なんているのか?」
「ああ一件だけだけどな。領主の息子がいなくなったらしい。だがなぜかあまり情報がなく、探すのに手間取っているんだと。」
「それってもしかして懸賞金みたいなのがあるのか!?ならすぐ探しに行こうじゃないか!」
金の匂いを嗅ぎつけたユイが急に飛びついてきた。
「リコットも一緒に探さない?」
「私はちょっと今日はやめておきます。」
ケイの誘いを断ったリコット。どうも様子がおかしい。話の途中から妙にそわそわしていたし。ま、とりあえずいいか。
「よし!じゃあ三人で捜索開始!・・・は良いんだけどどんな人なんだ?」
「渡されたのはこの絵だけだった。年は16だそうだ。」
「それだけ!?それはいくらなんでも無理であろう。・・・いや、私達ならできる!金のためなら何としてもみつけてやるぞ!」
この二人はそんなに金が欲しいですか。まあユイは今のうちにたくさん貯めておいたほうが後で魔法石に困らなくて済むといった理由だろうがケイはただの欲望の塊。まさに月とスッポンといったところか。
「とりあえず出かけようぜ!それにしてもこの絵の顔、どっかで見たことある気がするんだよなぁ・・・」
8
(これはまずいことになっちゃったなぁ)
リコットは心の中でそう言った。自分がその領主の息子だとはもちろん言えない。ここでばらせば強制的に父の元へ帰されてしまうだろう。そうなればあの三人と冒険ができなくなってしまう。
(それだけは避けたい!)
「リコットも一緒に探さない?」
「私はちょっと今日はやめておきます。」
(この誘いには乗らない、乗れない!)
そう思って酒場を後にし、宿へと向かった。この一週間を共に過ごしてきたがあの二人のお金への執着は計り知れない。つまり諦めることはないだろう。ならば、ばれても一緒に居られる方法を考えなくては。
(冒険者としての活動に納得してもらえればいいんだ!)
そう考えたリコットは方向を変えギルドへと進んでいった。
9
領主邸ではリコットの父、ロンガ=ピネがそわそわとしていた。
「一体あいつはどこへ行ったのだ。冒険者になりたいというからなんとかならせてやろうとしていたというのにあいつがいなくなってしまうとは・・」
「落ち着いてください、ロンガ様。リコット様のことですからそろそろ帰ってこられるはずです。」
「落ち着いてなどいられるか。せっかくあいつのためにしたことが全て無駄になるかもしれんのだぞ。はぁ・・・」
そう言いながらロンガは窓の外、街の方へと視線を向けた。