8話 悪魔嬢
その後、カルロスが服装を選んでくれた。
見た目で人を判断していたが、カルロスの選んだ服は私達に合った装備だった。
ノリコは黒の鎧を身につけ、私は魔法使いのような服装になった。
実はカルロスはラストの町でファッションリーダーとして活躍しているらしい。
レゲエっぽい服装は勇者達から目を欺くために着ているとの事だった。
カルロスに感謝した私達はいよいよ町の門へとやってきた。
「デュラハン様。いってらっしゃいませ!」
スカルが深々と頭を下げてきた。
本音を言うと悪名を広げるつもりは一切ない。
私達がいた世界へのルートを探す旅に出るのだ。
そのためにはデュラハンという設定を活用し、情報を集める。
何としても戻ってみせる!してみせる!
「デュラハン様。1つ頼みがあるのですが…」
フールはそう言うと、後ろに隠れていた女の子を前に連れてくる。
「この子はサキュバスの子供のマリアと言います。本来マリアはここラストの町ではなく、アイザークの生まれなのでございます。サキュバス修行のためこの町へ来たのですが、どうやらホームシックになってしまったらしく…一度アイザークの村へと帰した方が良いと思うのです。聞くところによるとデュラハン様はアイザークの村へ行くと聞きました。そこでマリアをアイザークの村へ連れていってはいただけませんか?」
マリアという女の子はフールの腕にしがみつき、私達を睨んでいた。
特に断るつもりはないが、この女の子を守れる気がしない。
私は運動音痴、ポンコツロボットはポンコツロボットだ。
いつ力尽きてもおかしくないパーティーに女の子が加わっても守れる保証は…
「デュラハン様。体を大きく縦に振っていただきありがとうございます。それでは頼みますよ」
隣を見るとノリコが大きく上半身を前後させていた。
ロボットなのに居眠りモードをつけた私が馬鹿だった。
コツンと腕を殴るとポンコツロボットは背筋をピンと伸ばした。
人間らしさの追求は時として残念な結果を招く事を忘れずに生きていこう。
「マリア…挨拶は?」
「………フン」
何この可愛い悪魔。
ツンツンしてる。
元の世界へ連れて帰りたいぐらい可愛い。
「すみません。では私はこれで…」
フールは穏やかな笑みを浮かべ消えた。
結局フールがどんな奴なのか分からなかったが、味方である限りは良い奴だと感じた。
ラストの町を離れて1時間ぐらいが経過した。
ノリコはもちろん喋らないが、マリアも黙っている。
この空気に耐えれなかった私はマリアに声をかけた。
「マリアちゃんは何歳なのかな?」
特に質問を考えてなかった私はふと悪魔の年齢について聞いて見ることにした。
見た目は幼いが実は年を重ねてたりして…
「ザコが…我に話しかけるでない!」
ーーーあれ?
思ってた展開と違うんですけど。
「おい貴様。デュラハンの子分の分際でこのサキュバスの時期エース候補の我に話しかけるつもりかー!」
見た目とは裏腹に中身は悪魔のようだ。
カルロスの爪の垢を煎じて飲ましてあげたい。
「え…えーと…マリアちゃんは…」
「我の名前はマリアージュ・センドリック三世!!マリア様と呼ぶが良い!」
うわ…メンドくさいよこの子。
ツンツンし過ぎて触れられない。
早くアイザークに届けてあげよう!
うん!それが良い!
「マリア様!なるべく早くアイザークの村へ行きましょうね!」
「当然だ童貞が!!」
グサリと心に突き刺さる悪魔の言葉という名の攻撃。
耐えきれず私は膝から崩れ落ちた。
「どうしたぁ?悪魔の一言は重いか?ヌハッ!我も強くなったな!」
「ふむふむ…興味深いなぁ?貴様…なぜこんなに屈しているのに欲が出ているのだ…?」
い…いや…それはですねぇ…あまり人前では…
「こ…この欲はまさか!!す…吸いきれないほどの欲が我を…あぁぁんッ!!」
マリアはいきなり倒れた。
サキュバスは食事の代わりに欲を吸い取って生きていると聞いたことがある。
では逆に聞きたい。
吸いきれないほどの欲って何さぁ!!
別に年下の女の子に罵られて欲が出たとかじゃないからぁ!!
そんでもってさっきから上半身揺らすな馬鹿ロボット!!居眠りモードうっとおしいわ!!
何この状況!?
小さな女の子が地面に倒れ、首なし騎士が上半身揺らしながら立っていて、そこにひっそりと立っている私。
どういう状況だぁーーー!