5話 偽物と本物
「どうだ?美味いかデュラハンよ」
「頭がないので食べれませんとおっしゃってます」
「それは失礼した。ワッハッハー!」
「はっはっはー」
魔王様が笑いになられたので愛想笑いをしてみたが、乾いた笑いしか出てこない。
幹部就任祝いで夕食に招かれた私達。
見たこともない食材が並んでいた。
周りにはいかにも魔物っぽい魔王軍の手下がせっせと料理を運んでくる。
胃が痛い。
早くこの場から立ち去りたい。バレたら死刑確実。
現実に戻してください神様。
「魔王様。1つご報告を…」
そこに突然フールが現れた。何か嫌な予感がする…
「フール…デュラハンとの食事中だぞ…?」
その一言で場が静まり返った。魔王様の一言はとても重い。
フールはそれに怯まず魔王様に報告をした。
「先ほどラストの門の前にデュラハン様を名乗る不届き者が現れました」
「ふぇっ!!?」
思わず奇声をあげてしまった。ま…まさか……
「スカルが確認した所、デュラハン様の変装をしていたそうです。それも完璧に…」
「それで…?」
「私も確認しましたが、偽物でございました。デュラハン様ならば私ごときの悪魔との会話もしないはずでございます。しかし、そのデュラハン様を名乗る不届き者は自分がデュラハンだと訴えかけて来たのです」
多分本物ですそのデュラハン!!
本物だからこそ訴えかけてるんだと思います!
だって私達偽物だから!
ポンコツロボットとそれ作った博士だから!!
「始末したのか?」
「いいえ。私が本気を出す前に泣き声をあげて帰って行きました。本物のデュラハン様なら私を切っていた事でしょう」
本物のデュラハンだから泣いてると思います!
偽物は嘘をついてここに居座ってる私達ですから!
「偽物が現れるほどデュラハンの悪名が全国に広まったのであろう。さすがデュラハンだ。ワッハッハー!」
これ胃に穴が開くパターンだ…もう耐えられない。
この城から逃げないと胃が爆発して大惨事になってしまうだろう。
城を出たらまずはノリコの頭を探しに行かないと…
「それでなんですが…私からの提案なのですが……」
「申してみろ」
「デュラハン様には魔王軍の幹部として各地で悪名をさらに広げていただくというのはどうでしょうか?」
フールが変な事を言い出した。
「ほう!それは面白い!」
魔王様が面白くない事を言い出した。
「デュラハンよ!突然ではあるが、貴様は明日から旅に出て各地で悪名を広げてきてこい!見事悪名を広めてきた暁には貴様に魔王の右腕に任命しよう!!」
「デュラハン様。おめでとうございます」
フールが拍手し、魔王様は大笑いしている。
周りの手下たちはデュラハンの名前を何度も連呼していた。
私達は何もしていないのにどんどん事が大きくなっていっているのに気付いた私は考えるのをやめた。
こうなったら全てを受け止めよう。考えたら負けだ。
「ありがたき幸せ!とデュラハン様はおっしゃってます」
「いいぞ!デュラハン様万歳!」
「デュラハン様万歳!!」
「これからの魔王軍を頼んだぞデュラハン様ー!」
魔王様の手下が盛り上がってきた!こうなったらヤケだ!!なりきってやろう!!デュラハンに!!
「デュラハン様。期待していますよ」
こうしてポンコツロボットはデュラハンとして生きる事になりました。