47話 混乱
逃げる先から雄叫びが聞こえてくる。
先回りされているようだ。
「どないなってんのこれ!」
「知るか!ゴーストの仕業だろ!」
このままではキリがない。
ゴーストがいたとしても突っ切るしかない。
「お前の好きな突撃でいくぞ」
「残念やけどそれしかないみたいや」
猪突猛進。
たとえ取り憑かれたとしても一か八かやるしか道が取り残されていない。
これが私の生きる道だ。
「う…!」
ま…また頭が…
これはまさか…ゴーストの仕業か…
「何してんの!このままじゃやられるで!」
周囲から雄叫びが聞こえてくる。
囲まれているようだ。
誰か助けてくれないかと見渡すが、霧で見えるはずがない。
頭を回転させたいところだが、この頭痛だ。
タイミングが悪すぎるぞ…
「……おい…諦めるのは早いぞ」
その言葉はとても冷めた言い方だった。
いつもの明るいアレーラとは違う…どこかで見た事があるような…
「猪突猛進…良い言葉だ。諦めずに前進あるのみだ」
アレーラは大剣を構え、前へ歩みを進める。
私はとりあえずアレーラの後ろへ引っ付く形で後を追う。
雄叫びの正体。
それはまさにザ・ゴーストという姿の幽霊だった。
「諦めなければ人は死なん。命尽きようともその意思は生き続けるのだ」
別人アレーラがその言葉を放った瞬間、目の前が突然明るくなった。
眩しすぎるくらいの明るさに私は目を瞑り、慣れるのを待った。
気付けばアレーラの目の前にいたゴーストは真っ二つに斬られていた。
アレーラの大剣は威力はあるが斬ることが出来なかったはずだ。
しかし目の前では矛盾が生じている。
アレーラはそのままゴーストを蹴り飛ばして前へ進む。
彼女は一体何者なのだろうか。
本当に私と同じ世界から来た人間なのだろうか。
疑問が山ほど出てくるが、私は後ろをついていくので精一杯だった。
「マキ…後で説明する。今はここを抜け出すぞ」
たくましいアレーラに感動した私はコクリと頷いた。
しばらく走った私は呼吸を乱していた。
ゴーストからの恐怖と運動不足が重なった結果だ。
しかし、アレーラは呼吸一つ乱れず走り続けていた。
“違和感”
感じてはいたが、アレーラに対する私の意識が変わりつつあった。
彼女は…もしかしたら…
「マキ。いらぬ事を考えているから呼吸が乱れるんだ。訳は後で話すと言ったぞ」
…ここはアレーラに従うとしよう。