37話 苦しめられたその先に
ノリコがゴム弾で道を切り開き、私がそのゴム弾を回収。
遠くで魔法を撃とうとしている敵はベーちゃんが撃退。
向かってくる敵に対してはアレーラが大剣で吹き飛ばす。
私は今、初めて異世界でパーティーを組んでいる事を実感していた。
「坊ちゃんはどこにいるのー?」
「おそらく自分の部屋に隠れているはずだ。というか坊ちゃんってあだ名になったんだな」
暗い通路を突き進み、ついにボッチャーの部屋にたどり着いた。
そのまま扉を破壊し、ボッチャーの部屋へと侵入した。
しかし、そこにはボッチャーの姿はない。
周りには本棚で囲まれている。
隠れる場所などないはずだ。
「マキ!下だ!!」
すぐさま下を向くと、そこにはローブを脱ぎ、顔をヘルメットのような何かで隠しているボッチャーの姿があった。
「このカブトは防御力もあり、顔も隠す事ができる素晴らしい装備だ…そう思わないかい?」
どう見てもバイクヘルメットに見えるが…
とにかく私は後ろへ移動し、すぐさまノリコの後ろに隠れる。
再びボッチャーは影の中に沈んでいく。
これが闇の一族の中で最強と呼び声の高いボッチャー…
“シャドウ系”の技がどんな物なのか知らない私達には不利な相手だ。
ここは敵の技を観察しよう。
「坊ちゃん久しぶりー!」
「…………」
ベーちゃんを無視するボッチャー。
ベーちゃんには緊張感がないのかな?
「みんな!敵の攻撃を避ける準備をしよう!」
「遅いよマキ君」
すでに足をボッチャーに掴まれた。
このままでは闇の中に…
「なんで無視するの坊ちゃん…?」
スマイルの悪魔は凄まじいスピードでボッチャーの腕を切った。
しかし、ボッチャーの腕は切れておらず、そのまま私の足を掴んでいる。
「闇の一族は通常攻撃は効かないんだ!」
「その通り…君は知っているけど他の仲間は知らなかったようだね」
どんどん足が引きずり込まれる。
ヤバいってこの状況!
誰か助けてください!
ま、待てよ…
落ち着いて策を練ろう…
闇の一族の弱点を考えるんだ…
確かボッチャーの口から直接弱点を聞いたはずだ…
だとすればその弱点を狙うにはどうしたらいいか考えるんだ…
「自己判断…射撃モードに突入します」
「待ちな!ここで撃てばマキに当たってまうやろ!」
考えろ…考えるんだ…
この状況でできる行動を…
「バイバイ…マキ君…!」
「バイバイはこっちのセリフだボッチャー!」
私は呪文を唱える事にした。
私が覚えている呪文ではない。
ノリコが覚えている呪文だ。
「ノリコ!ライトオン!!」
「了解。ライト照らします」
ノリコのセリフと共にライトが点灯する。
その光はボッチャーに直撃した。
「な…!?」
ボッチャーの手からは煙が出ていた。
闇の一族の弱点は“光”!
ロボット舐めんなよ!!
「ふふふ…マキ君に弱点を教えたのは間違いだったようだ!!」
そう言うとボッチャーは一度影の中に沈み、今度は姿を完全に見せた。
「ここからは“シャドウ系”の全てを見せてあげましょう…」
ついに来る…!
ここからが闇の一族を束ねるボッチャーの本当の力だ。
私は手に持った物を強く握りしめた。