33話 裏表一体
私はボッチャーによりの部屋へと連れてこられた。
暗い部屋の中には鎖に繋がれたノリコとべーちゃんの姿があった。
ノリコはどうやらオイルが少なくなったせいかぐったりとしている。
べーちゃんは暗い部屋のせいでテンションが暗くなっていた。
「君達2人は新入りの中でも期待できるから紹介しておくね。ここは信教部屋。信教が足りない信者達を入れておく神聖な部屋さ」
確かにこの暗い部屋にいれば魔王様万歳という気持ちになってくる。
「アレーラ君…どうですかこの部屋は?」
「魔王様万歳やな」
こいつはそれしか言えないのか。
だが、魔王様への忠誠は本物のようだ。
「マキ君はあとで僕の部屋に来てよ。この先の暗い部屋が僕の部屋だからさ」
そう言うとボッチャー様は影へと消えていった。
どうやらボッチャー様はワープとは違う技を覚えているようだ。
影を操る魔法…どんな魔法なんだろう。
「博士…」
「マキマキ…助けて…」
私は目を合わせず、反対側を見る。
「魔王様万歳や魔王様万歳」
熱狂的な魔王様信者は放っておいて私はボッチャー様の部屋へと向かった。
その途中でふと気になる人物を見つけた。
気の抜けた顔をしていて穏やかそうなぽっちゃり男だ。
「ーーーボッチャー様の部屋へと向かうのか…?」
「そうだが?」
「ボッチャー様は過去の闇の一族の中でも最強の呼び声が高いお方だ。逆らったら命はないぞ…」
誰だか知らないがボッチャー様に詳しい人みたいだ。
色々と聞いてみよう。
「ボッチャー様はなぜ最強なのだ?」
「ボッチャー様は“シャドウ系”の技を全て覚えてらっしゃる…過去にボッチャー様に挑んだ勇者は全て闇の一族になったそうだ…」
“シャドウ系”…影の中にワープできるのはそれか。
それに加え過去に私と同じように闇の一族になった者達がたくさんいるようだ。
「闇の一族は元を辿れば“シャドウ系”が使える魔法使いの事を指していた。だが、時代が流れるにつれ、魔法使い達はアイザークの村へと移住していった。闇の一族の存続が危ぶまれた中、ボッチャー様は人間達に魔王様の素晴らしさを伝える事によって闇の一族の復活を考えたのだ」
「つまり今の闇の一族は元は人間という事ですか?」
「そうだ」
なかなか興味深い話が聞けた。
あとでボッチャー様にも闇の一族の事について聞いてみよう。
これも全て私が闇の一族に加わるため…
闇に染まるためにやっている事だ。
「感謝する…私はマキ…最後にあなたの名を…」
「マルチネス…過去はそう呼ばれていた…今は名も無き闇の一族さ…」
マルチネス…
この短期間で闇の一族に染まりすぎた男か…
忘れずに心に留めておこう。