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2話 拐われし乙女

 光に包まれた私達は今森を歩いています。どれくらい歩いたのだろうか。

 ノリコと会話してから数時間が経っている。

 もはや私は会話すらできないぐらいに疲れ切っていた。

 知力には自信があるが、体力に関しては小学校から運動音痴な私にとってこの徒歩は地獄でしかない。



「ーーー博士。そろそろサブオイルが尽きそうです」


 ちなみにノリコのサブオイルが尽きた時には重量100kgはあるこいつを背負わなければならない。死が近くなるな…


「博士。私に良い考えがあります」


「ーーなんだ?」


 話を聞くのも疲れるが、ここはこのポンコツロボットの良い考えとやらに賭けるしかない。

 私はそのままノリコの考えを聞くためにその場に座り込んだ。


「私には望遠機能が備わっています。なので私の頭を上に放り投げていただければ遠くを見渡す事ができるのではないでしょうか?」


 その言葉に私は驚愕した。

 まさかこいつから私も忘れていた設定を思い出させられるとは思わなかった。

 ノリコには色々な機能は付けていた。その一つに望遠機能がある。

 これでもし海の上で遭難した場合に備え、遠くにある船や島を見つける望遠機能を搭載していたのだ。

 私はそのままノリコの首のボタンを押し、頭を取った。


「では、頭上高くに放り投げてください」


「頼んだ」


 全力で投げたノリコの頭は太陽の光で輝いていた。


「町が見えました。それも北の方角に数キロの地点にあります」


 「よくやった!」


 数キロであれば私も死ぬ気で頑張れる距離だ。

 いくらポンコツロボットとはいえ搭載している機能などは高性能な物ばかり。

 さすがは私が作ったロボットだ。

 そのまま私は落ちてくるノリコの頭を受け取る姿勢になった。






 …………


 落ちてこない。


 そんなに高く放り投げたつもりはない。

 運動音痴な私なのだから尚更だ。ふと頭上を見上げた。


 そこには大きな黒い影があった。

 太陽の光が眩しく、はっきり見えないが、やがて目が慣れ、姿がはっきりと見えた。

 それはとても大きなカラスのような鳥であった。

 そしてその鳥の大きなクチバシにくわえられていたのはポンコツロボットの頭であった。

 そのまま鳥は遥か彼方へと飛んで行った。





「どうやら拐われたみたいです」


 拐われたロボットの体から音声が流れた。

 首は無くても一応遠隔で声が流せるようには設定していた。

 しかし、実際に目の当たりにすると気持ち悪かった。


「ーーーそこからの景色は何が見える?」


「鳥の口の中が見えます。解析しますか?」


 ポンコツロボットの体と共に私は鳥が羽ばたいていった方角へ走る事にした。

 たまたま鳥が飛んでいった方角は町がある北の方角。

 そこで情報収集をすれば鳥の情報が聞き出せるはずだ。

 問題は私の隣のロボットだ。


「暗いです。怖いです。早く助けてください」


「頼むから私が話しかけるまでは喋らないでくれないか?」


 頭がないのに喋り出すとかホラー映画でしか見た事がない。

 町の人達がこいつを見れば怯え、情報収集どころの話では無くなるのが予知能力のない私でも分かる。


「了解しました。マナーモードに突入します。解除命令があるまでは震えでしか反応しませんので」


 携帯電話と同レベルにまで落ちたロボットを無視してひたすら道なき道を進んでいく。





 段々と緑が少なくなってきた気がする。

 これはおそらく町が近づいてきた証拠だろう。

 となりのポンコツロボットはさっきからたまに小刻みに震えたりしているが、一体頭部に何が起こっているのか気になってきつつある。

 だが、解除すればまた怖くなることを考えてそっとしておく事にしよう。

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