28話 ウチウチ詐欺
「アンタら。ウチらに何対抗しようとしてんの？やる気かい？」
「そんなつもりはない。聞きたい事があるだけだ」
「なんやて？」
「その関西弁、もしやあなたは異世界から来たのですか？」
「ーーータダで教えるとでも…？」
関西人らしく商売は上手いようだ。
タダより怖い物はないし、当然と言えるだろう。
しかし、私達は金もそんなに持っていない。
あるとすればノリコ用のオイルしかない。
「リーダー、早く行かないとマルチネスが…」
「チッ…残念やけど仲間優先やな。悪いけどこの取引はなしや。ほなまた」
ここで諦めるわけにはいかない。
この関西人は何かを知っている。
私の勘がそう言っている。
「仲間優先…仲間の方に何かあったんですか？」
私はリーダーと呼ばれる子の仲間にコッソリ話を聞いてみた。
「実は…マルチネスが敵の洗脳で…」
「イラン事言うなバッカス！！」
敵の洗脳…？
どうやらこの人達はやばい事に巻き込まれているようだ。
これは助けてあげる事によって情報を教えてくれるというお決まり展開だな。
「今の言葉は忘れてな！絶対他のやつに言ったらアカンで！」
「分かった」
「よっしゃ！物分かりのええ子や」
もちろん約束は守る。
絶対に言わないさ。
「え？仲間が敵に洗脳されたってのは本当ですか？」
「なんでアンタの仲間に情報知られてんねん！？」
「ノリコは耳が良いので今の会話が聞こえてたみたいですねー」
「ナンダッテー。ナカマガセンノウサレタノー？」
「演技下手ッ！？」
「べーちゃんも耳が良いので聞こえてたみたいですねー」
「アンタらの仲間耳良いやつ多すぎやろ！？さっきのやつにいたっては絶対ウソやん！！演技下手クソ過ぎや！」
ウソではない。
本当に耳が良いだけだ。
「もう！こうなったらアンタらにも付き合ってもらうで！連帯責任や！！」
「連帯責任？私達は手伝う立場なのですよ？逆に感謝されたいぐらいだ」
「なんやと…？」
「例えば…情報と交換とか…？」
「く…こいつ…」
知能戦なら負けるつもりはない。
頭の回転は速いからな。
ダテにロボット作ってません。
「しゃーない…それじゃあウチらが持ってる情報と交換で手伝ってもらうわ」
「ありがとうございます。で、敵に味方が洗脳されていると言うのは？」
敵に洗脳。
ファンタジーならばよくある展開である。
催眠術か…はたまた脳に寄生されたのか…もしくは自分の意思で裏切っているのかのどれかだ。
「ウチのマルチネスがいきなりパーティーを離れて敵の群れに合流したんや。そんでもって言った言葉が…」
『魔王様万歳…』
「マルチネスはウチらの中で1番真面目なやつ
やったんや…未だに信じられへん…」
これはどうやら間違いないな。
洗脳…これほど怖いものはない。
