26話 番外編 デュラハン様はさまよう鎧
「それではここに新たな悪魔名をご記入お願いします」
「“さまよう鎧”でお願いする」
「登録完了しました。それではさまよう鎧様。魔王軍のために頑張ってください」
なぜ我はジョブチェンジなんかしなくてはならないのだ。
居場所をなくしたから?
いやいや、我がデュラハンなのになぜジョブチェンジせねばならん!?
ラストの町に呼ばれて行ったのに追い返されるってどんな仕打ち!?
テメーが来てくださいとか手紙寄越した行ったんだろうがクソ魔王!!!
「それではさまよう鎧様はサイ様の配属となりますのでググルの町へ向かってください」
我はデュラハン。
今はさまよう鎧だ。
我は有名な勇者達を討伐し、1つの町を壊滅状態にした功績を称えられ、幹部へと勧誘された。
だが、ラストの町へ向かうとすでにデュラハンがいた。
我が本物のデュラハンである事を証明したが、バカなのか偽物扱いされた。
ついには偽物のデュラハンとして殺害予告まで来たので仕方なく転職する事にした。
悪魔にも転職という概念はある。
ゴブリンからオークに転職する者もいれば、スライムから上級悪魔に転職する者もいる。
我は最近できたさまよう鎧にジョブチェンジする事にした。
我もいつまでも怒る訳ではない。
いつか我が本物である事を証明したが、再びデュラハンに返り咲く。
そもそもデュラハンという職は1つしかありえない。
先ほど話した上級悪魔というのは枠が1つしか与えられておらず、デュラハンもその一種なのだ。
つまり、先にラストの町に着いたデュラハンは偽物である。
だって我がデュラハンだったんだもん。
絶対見つけ次第打ち首にして魔王様に献上してやる。
「ちなみにさまよう鎧様のランクですと今の装備はつけられませんので脱いでください。代わりに普通の鎧をどうぞ」
デュラハン装備を失った。
我がデュラハンだと分かる要素は頭が取れることぐらいしかなくなった。
今は耐え忍ぶ時…耐えるのだ我!
さてと…ググルの町へ向かわねばならんのだな。
ググルの町もいえばすでにアクマビッチサイの支配下にある町だ。
サイとは面識がある。
今の我を見てどう思うのだろうか。
我はワープの呪文を唱え、ググルの町へと向かう。
我ぐらいの上級悪魔にかかれば高レベルの呪文のワープぐらい覚えている。
しかし、さまよう鎧にジョブチェンジしたせいで何個か呪文が封印されてしまった。
ググルの町は人間の男共が奴隷として働き、サイのために城を作っている。
男共はサイに忠誠を誓った者ばかり。
バカな人間達だ。
我は早速サイのいる城へと向かう。
城の外にはサイの部下のカイとマイが守りを固めている。
「むむむ!こんな所に下級悪魔が何の用だ!」
「さては今日配属予定のさまよう鎧だな!弱そうだなお前!!」
この2人には我がデュラハンの時に飯を奢ってやった事もあった。
こいつらもサイの活躍で中級悪魔になったせいか下級悪魔を見下すようになったようだ。
「下級悪魔がサイ様に会えると思うな。お前は町の外の警備だ。早く外でさまよって勇者を待ち構えてやがれ!」
「さすがマイ!言葉がきついぜ!ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!」
少し見下し過ぎたようだ。
我はそこまで優しくはない。
「アンデットハンド」
我は呪文を唱え、カイとマイを暗黒の手で吹き飛ばし、そのまま門を壊して城内へと入る。
「な…なぜ下級悪魔の分際でデュラハン様の技を…」
呪文は何個か消えたが、全て消える訳ではない。
数百個あるうちの何個かが消えたまでだ。
「サイ様!!城内で下級悪魔が暴れています!!」
「ーーー下級悪魔…?あ、そう」
「失礼」
ここがサイの座る玉座か。
この前来た時よりも華やかになっておるわ。
「下克上のつもりかさまよう鎧よ。女王に逆らえばどうなっておるか分かっておるな…?」
「女王…?笑わせるな。人間の男を誘惑させるために我と作戦を練っていた女の子が」
「な…なぜそれを…!!あんたまさか…?」
さすがにこの秘密を言えば分かるか。
「我こそが暗黒の騎士であり、悪魔女王サイの親友であるデュラハンである」
「やっだーーー!デュラちゃんひさしぶりー!!!!」
サイが抱きついて来た。
「やっと気付いたぁ?もう!すっごい色っぽくなったねサイ!」
「またあんたの料理食べたいから作ってよ!厨房貸すからさ!」
「マジィー!?よーし!今日は本気出すぞォ〜!」
「楽しみだわー!」
何とかサイは覚えてくれていたようだ。
とりあえずはサイの配下で色々と動こうと思う。
打倒偽デュラハン。
そのためには首などくれてやるわ。
続く




