23話 真実はいつも1つとは限らない
「ベートルに会わなくていいのか?」
テンマは壊れかけたベートルから距離を取っていた。
「構わん。特に思い入れなどない。壊したきゃ壊せばいい。そんな悪魔誰も欲しがらん。あやつも報われるじゃろ」
「そうかそうか…つまりあなたは作ったロボットに愛情を注がないそういうタイプの人間なんだな」
「ーーー何のことじゃ。そいつを作った博士はーーー」
「死んだ…それはあなたの中で死なせただけなんだろう。テンマ…いや…水道橋博士」
「!!」
最初から薄々気づいていた。
だが、信じたくはない。
自分が作ったロボットを愛さない博士なんていないと信じたい。
だから直接本人に問うしかないんだ。
「水道橋博士、あなたの名前はロボット学で知らない人はいない。“恥知らずのサイエンティスト”として学者達に知れ渡っているんだ」
「思い出したんです。ベートルってロボットは私がいた数年前…水道橋博士によって試作されたロボットだったんだ。だけど、あまりにも出来が酷すぎたため学会に恥をかかした水道橋博士は学会を追放、そのまま名前を聞かなくなった」
なぜ博士が学会でポンコツロボットを提出したのか。
数年前ならばあれほどのロボットを発表すれば世界に革命を起こすことも出来たはずだ。
私のノリコはポンコツロボットだから提出する気はさらさらないけど。
そういえばベートルにはノリコと同じように感情システムが導入されている。
ずっとニコニコしているから分かりにくいが、“楽しい”や“悲しい”の感情が感じ取れた。
とすれば…
「なぜワシが水道橋博士だという人だと思うのだね?納得いかんのー」
「私が発明した周波数計測器はこの世界ではほぼ0に近い数値を叩き出します。それもそのはず、まだこの世界では周波数を発する機械などあるはずもないんですから」
「ーーーバカじゃのお前さんも」
「ですが、あなたの鍛冶屋からは高い数値を出したんですよ。ベートルが言っていました。ある特定の場所で相手の位置が分からなくなると…それはあなたの鍛冶屋の事です」
「おかしいですよね?この世界で周波数を出す物を作れるのは、例えばある程度の知識があるテンマという鍛治職人だとしても高い周波数を出せる物を作れるのは私がいた世界の人間だけのはずです」
「ですが、あなたがベートルを作った水道橋博士だとして…ベートルが嫌う周波数を作れる水道橋博士ならば…全ては解決するんです」
「あなたはベートルを“近づけたくなかった”…もしくは“近づいて欲しくなかった”……このどちらかが答えだと思われます」
水道橋博士はベートルと会いたくないんじゃない。
会いたくても会う資格がないと思っているんだ。
それが水道橋博士がベートルに近づかない理由だ。
「言いがかりはよせ。それをワシが作った証拠はないはずじゃ。そもそもどこに置いてあるんじゃ。そんな高い周波数を出す機械なら相当な大きさのはずじゃろ?」
「はい。証拠はありません。ですが、調べさせてもらえればすぐ見つかるはずです」
「例えばあのお守りの中とか…」
「…………」
黙ったということはやはり当たりのようだ。
ベートルに襲われた時にお守りで命が助かったが、この中に入っていた機械はやはり小型ジャミングだったんだ。
この世界ではあまり見た事のないお守り…そのお守りが大量にあったので普通に商才がないのかと思っていたが、そのお守りの中にジャミングが入っているとすれば納得だ。
あれだけの数が揃えれば1つの大きなジャミング相当になるだろう。
小さい周波数が複数集まれば大きな周波数になる。
そしてその周波数をベートルは嫌っていたんだ。
ノリコもテンマの家で調子がおかしいと言っていたが、そのお守りが原因だ。
「それからベートルに刻まれていた“JB17”の文字…最初は意味がわからなかったんですが、今になって分かりました」
「これは水道橋博士が作った機械につけていたサインのようなものだったんです。“JB17”…これは日本にある水道橋駅の駅番号なんですよ。あなたはそれで自分が作った機械である事を証明していたんですね」
「その証拠に…あなたからもらったこのジャミングにはこの文字が刻まれています。何ならお守りの中も調べてみますか?あなたが作ったお守りにその文字が刻まれていた場合…全てが繋がります。」
その言葉を聞いたおじいさんはベートルを見つめ、優しい顔になった。
「真実なんてもんはない方が良いな…話すのが辛いし…」
水道橋博士の喋り方はおじいさんには思えないくらいハキハキとしていた。




