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第1話 博士は不調である

 晴天で雲ひとつない月曜日。

 小鳥が今日も元気に鳴いていた。

 十字路では今日も学生達が通学をし、主婦の皆様は子供を見送った帰りなのか道端会議をしている。

 清々しい朝とはこの事を言うのだろう。


「博士。おはようございます」


 声が聞こえる方向からは重みのある足音が聞こえてくる。

 その音で小鳥達は解散を余儀なくされた。


「おはよう。もう少し静かに歩けないのか?」


「博士が重みのある女の子が好きと設定したので」


「悪い。私が悪かった」

 

 私の名前は巻 史哉。

 平成生まれでまもなく20代半ばを過ぎようとしている。

 幼い頃から知力には長けており、同級生とは学力で差をつけていた。

 だが、差をつけていた事によって発生してしまった事件がある。


“いじめ”だ。


 周りからは異端児呼ばわりされ、どんどんいじめがエスカレート。

 やがて私は学校での居場所をなくし、家に引きこもる生活を過ごしていた。

 もちろん悲しかった。

 しかし、いつまでも落ち込んでいる訳にはいかないと感じた私は勉強を重ね、エリートが通う名門大学へ入学に成功した。


 大学デビューを果たした私は主席で大学を卒業。やがて研究所を作り、ロボット研究へと歩みを進めていった。

 しかし…これが私にとっての1番の過ちだったのかもしれない……


 あまり人と絡む機会に恵まれなかった私は不意に理想の彼女像をイメージしてしまった。

 もし理想の彼女がロボットで作れるのであれば全世界の同志達が喜ぶに違いない!と時間は惜しまず昼はロボットを製作、夜はイメージ構想を繰り返し、ついに完成したのがこのポンコツロボットである“ノリコ”なのだ。


 金髪ショートヘア、表情はクールで何を考えてるのか分からないような顔で私の理想の女性を思い描き作り出したのだ。


「お茶でも入れましょうか?」


 こんなに有能そうに見えるが、実は違う。


「お茶っ葉はあるのか?」


「あ。ございませんでしたので買ってきます」


 見ての通り、ロボットなのに頭が足りない残念ロボットを作り上げてしまったのだ。

 見た目は私の理想像に近いが、本当に頭が残念なのだ。


「それから博士の押入れに入っていた大変見苦しい本の始末はしておきましたのでご安心を」


「勝手に部屋をいじるのはやめてもらってもいいかな?」


「フリですか?もう番組は終わってますよ?」


 お前の頭が終わってるよ。

 ロボットなのに頭の回路の回転が非常に遅く、九九の掛け算を25分かけて覚える事に成功した奇跡のロボットが何を言っているんだ。

 おそらく今私は人類史上初であろうポンコツロボット観察に成功しているのではないだろうか。


「博士…そろそろ何か作ってくれないとオイルが仕入れられないのですが」


「分かってるよ。だが優先すべきは私の食材だ。腹が減っては戦はできぬと言うだろう」


 ここ最近発明品やロボットを作ってはいるが、なかなか研究費が増えない。

 それどころか回ってこない。ポンコツロボットを作ったからと言って研究費をくれないつもりですか上の方。

 

「とりあえず今日の昼ご飯を作りましたので置いときます」


「あぁ。ありが…」


「キャベツの千切りオイルがけです」


 何でもオイルを絡めたら美味しくなると思っているのかこのロボットは。

 もこるのはテレビだけにしろ。

 

「お気に召さないのであればこれはセンにあげます」


「やめておこうか。センも生き物だから」


「そうですか」


 そう言うと拗ねて私の研究部屋へと引きこもって言った。

 確かに怒られると拗ねると設定したが、私の研究部屋に引きこもるのは勘弁してもらいたい。

 こんな生活を続けていては私の精神がもたない。何とかお金を稼がなければ…


「博士。これはなんでしょうか?」


 引きこもったはずのノリコが帰ってきた。

 ノリコが持ってきたのは作った覚えのない謎のスイッチだった。

 作った発明品は次に活かせるために記憶はしているつもりだが、こんなスイッチは見た事がない。誰がこんなのを…


「ポチッとな」


 ポチッとな?

 ポチッとな…

 ポチッとな!?


「お前何をした!?」


「ポチッとボタン押しちゃいました」


「おま…バカ!!」


 こんな見た事もないスイッチを押して何も起こらないはずが…あ。

 どうやらもう遅かったみたいだ。

 ボタンを中心に私達は光に包まれていた。

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