16話 罪と罰
マリオーネの国は今まで見てきたラストの町やアイザークの村と比べると明るい雰囲気に思える。
中世ヨーロッパを彷彿させる街並みや遠くに見える城などに興奮を隠しきれない。
私達が捕らわれの身でなければお買い物をしたかった。
「まもなく城に着く。城に着いたら王の所へ連れて行き、死刑の許可をもらうだけじゃ」
王からの死刑宣告をもらうだけか。
とすれば王に無実を証明すれば死刑は免れる事が出来るはずだ。
王の命令とあれば騎士団も逆らえないはずだ。
「王は気難しい方だ。騎士団長に怪我を負わせたとなれば覆すのは不可能だから覚えておくがよい」
考えが見透かされていた。
いや、諦めるのはまだ早い。
実際にあってみなければ結論はまだ出ないはずだ。
たとえ気難しい王であっても真実を告げればわかってくれる。
それが王だから!
「なるほど。マルコに怪我を負わしたのか。それじゃあ明日死刑だな。うん」
王は気難しかった。
弁明の暇も与えさせてくれないほどの決断力の速さ。
これが王なのか。
王に会って数分で結論が出て、牢獄に入れられた。
「お前らに会えるのは明日までだ。それまで思い残しがないように語り合うがよい」
マルコが嫌味っぽく話しかけてきてすぐさま去っていった。
こいつのせいで死刑とか洒落にならない。
何とか生き残る手段を考えないと…
「牢獄の警備は薄いようですね」
死刑の要因を作ったポンコツロボットが突拍子も無い事を言い始めた。
確かに来る途中、牢獄を守る騎士の数は少なかったが、脱獄でもしたその時には死刑直行だろう。
「脱獄なんか考えるな。他の手段を考えろ」
「しかし博士。この壁ぐらいなら破壊するのは簡単ですよ?」
壁か…
確かに薄そうではあるが…どうしよう。
脱獄しか方法はないのだろうか。
いや、考えるまでもなかったな。
何か崩れる音がしたのでその方向を見ると壁には穴が空いているのだから。
「脆かったです」
そうか…脆かったか…
もう少し頭に知能を与えればよかったかな…ははは…
「な、何の音だ!?」
音を聞いて警備の人が数人やってきた。
やっぱりな。
まぁ、ここまで来たら迷う事はないか。
「ノリコ。射撃を許可する」
「了解。射撃モードに突入します」
ノリコの腕が変形して銃の形になった。
これは私が子供の頃から憧れていたロボット変形をノリコに搭載したものである。
まさか、使う時が来るとは思わなかった。
威力は…まぁ死にはしないだろう。
ノリコの腕から銃弾が発射される。
実弾ではなくゴム弾なので当たっても血が出る事はない。
が、その威力は相手を気絶させるのには十分な威力だったようだ。
ゴム弾が当たった騎士達はその場に倒れていく。
逃げようとするがそれをノリコは逃しはしない。
一人一人確実に床に倒れる…たとえ倒れながら逃げようとしても…ノリコは容赦なく男の大事な部分に発射する。
「た…助けて……ぐぎゃっ!」
最後の騎士が倒れた。
落ちたゴム弾を全て回収した私は騎士達を別の牢屋に押し込み、その場を後にした。
私は何もしていない。
ただ、倒れてた人を運んだだけなのだ。
これを罪だというのなら、私はどんな罰でも受けよう。
というか受けさせてください。