14話 慣れない裁縫
宴が収まり、静かな夜になった。
アイザークの村を冷静に見渡すとやはり沼地であった事が確認できた。
奥の方ではロンドベルが松明を持って見張りをしてくれている。
彼はいったいいつ休んでいるんだろうか。
「マキマキ。起きておるのか」
マリアが話しかけて来た。
この村ではすでにマキマキの名前が広がってしまい、取り返しがつかなくなっていた。
マリアは相変わらず冷たい目つきで私を見てくる。
だが、貴様呼ばわりからマキマキになっただけマシだ。
「ーーーこれからどこへ向かうのだ?」
そういえば目的は達成していたっけか。
ノリコの頭は回収したし、マリアもこうしてアイザークの村に連れてくる事ができた。
次はどこを目指せば良いのか分からないな。
「特に決まっていないな」
「そうか…そうなのか…」
マリアがいつもと違う反応を見せていた。
どこか寂しそうな見えるがそんなはずはない。
悪魔であるマリアが悲しい表情を見せるのはおかしいだろう。
「スカパラズの集落に騎士団が現れると聞いた。そこへ向かえば悪名が広がるかもな…」
おぉ、デレた。
ツンツンしていた悪魔がデレるとここまで可愛く見えるのか。
おそらく本人はさりげなくヒントをあげたと思っているのかもしれないが、外から見たらツンデレしてるようにしか見えない。
別に行く場所が決まっていなかった私達はとりあえずスカパラズの集落に向かおう。
悪名を広げるわけではないが、そこに向かえば何か元の世界に戻る出がかりが手に入るかもしれない。
「ありがとうマリア。次はそこへ向かうよ」
「別に…」
エリカっぽく締めてマリアは部屋へと戻っていった。
ちなみにマリアとはここで別れる。
それが魔王様からの頼みなのだから。
ーーーしかし…あまり嬉しくない。
なんというか、寂しさがある。
ーーーーーー確か私の部屋に裁縫セットがあったな…
翌朝、毎朝恒例のノリコの整備を終わらした私はリリースに村を出ることを伝えた。
「そうですかー。もう行かれるのですねー」
「また来いよマキマキ!その時は男同士酒でも飲もう!」
村中の人が全員お出迎えに来てくれた。
しかし、マリアの姿はそこにはなかった。
「リリースさん。また魔法教わりに来ますね」
「はいはいー。またお待ちしてますー。デュラハン様もまたお話ししましょうねー」
私達はそのまま村を出て、スカパラズの集落へ向かった。
「ーーー行かれましたな。マリアは結局来なかったですな」
「うふふ。私にはお見通しですよー。彼女はお見送りにきてますー」
「なんですと?」
そういえば昨日針が指に突き刺さってたせいか指が腫れてるなー…
慣れない事はするべきじゃないか。
「部屋の窓からこちらを見てます。デュラハン様の人形を持ちながら」