12話 魔法の効果は3分まで
私達を歓迎するためにアイザークの村では宴が始まっていた。
ようやく頭を取り戻したノリコは大切に頭を抱き抱えている。
マリアはというと楽しそうに同じくらいの背丈のサキュバスと遊んでいた。
「アイザークの村はどうですか?」
リリースが私の隣に座って話しかけて来た。
髪の色は赤く染まっていて瞳の色も赤。そしてほんのりと匂ってくる良い匂い。まさに美魔女だ。
しかし、私は悩んでいた。
果たして今見ている姿が本当の姿なのかはたまた老婆が本当なのかはっきりしてほしい。
じゃないと頭が痛くなるんで。
「デュラハン様の所へは行かないのですか?」
「大丈夫ですよ。デュラハン様とはまた後ほどお話しますので。それよりデュラハン様の側近のあなたに色々とお話を聞きたいのです」
そう言うとリリースは体を私の腕に寄せて来た。
これが誘惑というのか…たまらないな。
しかし!ここは男として屈するわけにはいかないぞ!
「なんでも聞いてください!」
男のプライドはたやすく折れてしまった。
情けないかもしれないが、他の男でも同じ結果になるはずだ。
こんなに綺麗な女の人に誘惑されたらそりゃあもうアレだよ!
「ウフフ…それじゃあ1つだけ聞きますねー。デュラハン様の弱点はなんですかー?」
「頭」
考えるまでもない。
ポンコツロボットの弱点は頭だ。
しかし、なぜそんな事を聞いてきたのだろう。
「うふふ…そりゃあそうですよねー。頭が弱点なのは当然知ってますー。私はデュラハン様を守りたいんですよー」
すごく良い子だなリリースちゃんは。
恩返ししてくれるなんて魔女の鑑だ!
「だからこそ。デュラハン様の本当の弱点を知る事によって、守る事が出来るんです。本当の弱点はどこですかー?」
「頭」
「え…」
「頭」
だからといって弱点は変わらない。
頭。
それ以外は特にない。
「ーーーうふふ…さすがデュラハン様の側近ですね…ここで本当の弱点を教えてたら魔法をかけてた所でした」
「魔法?」
「えぇ。3分間目が見えなくなるバルッサという魔法です」
なにその怖い魔法。
カップラーメンが出来る時間まで目が見えないとか地味に怖い魔法だぞそれ。
だが、使い道によっては便利な技かもしれない。
あとでこっそり教えてもらおう。
「そういえばあなたの名前を聞いていませんでしたね」
そういえばこの世界に来てからまだ私の名前を言っていなかった。
常にデュラハンの側近だと言われていたからだが、そろそろ名前を決めておくべきだ。
どうしよう…本名はダサいから偽名を使うか。
「マキーノ…マキール…どれがいいのか…」
「マキマキ?そうですかマキマキと言うのですね!では村の者に伝えて来ますー」
リリースは駆け足で去っていた。
…………
えーと…はい。この世界ではマキマキと呼ばれることになりましたー。
シカタナイネ!ウン!シカタナイシカタナイ!
ーーーなんとも虚しい時間だ。