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9話 はじめての戦闘

 マリアを背中に背負い、アイザークの村へと向かう私達3人は1つの困難を抱えていた。


 この状態で敵に出くわした場合、何も対処ができない事だ。

 暗い森を進行中、マリアは今現在元気にお眠り中で、そのマリアを背負っている私は手が塞がっている。

 ノリコは頭が無いので目視確認ができず、敵にダメージを与えるのは難しいだろう。


 とすると…敵と出会えば間違いなく全滅するという結論に至ったわけだ。


「むにゃにゃにゃにゃ…」


 マリアはぐっすりと眠ってしまっている。

 私の欲を吸い取って満足そうだ。

 今後は絶対に吸わせないけどな!


 そんな時だった。

 目の前にモンスターが現れた。


「ぐへへへ!女の子か!こっちによこせ!!」


 全身が毛で覆われ、顔が狼…要するに狼人間が数匹で襲ってきた。

 普通最初の敵というのは絵で描きやすそうなフォルムで人気が出そうなキャラのはずが、私達が遭遇したのは冒険の終盤に出てくるような敵だった。


「しかもサキュバスの女の子か!闇取引で高く売れるぜ!イヒヒヒ!」


 下品な笑いだ。

 しかし、私は何も出来ない。

 周りは敵に囲まれていてノリコもいるため逃げる事は出来ない。

 脳に働きかけ知恵を絞るが、この状況に慣れていないためかまったくアイデアが出てこない。


「おいヴァリン!やっちまうぞ!」


「へい!ウルルの兄貴!」


 終わった。

 ここで私の運命は幕を閉じる…のか……


「あ…兄貴?ちょっと話よろしいですか?」


 空気が読めなさそうな狼人間が兄貴と呼ばれる狼人間に話しかけた。

 何だか知らないが助かった。

 兄貴は凄く不服そうな顔で振り返る。


「今良い所なんだから黙っとけエックス!!」


「しかし…隣の騎士ってもしかしてデュラハンじゃないですか?」


「デュラハン?あの悪名高きデュラハンか?」


「はい…しかもデュラハンは魔王の幹部になったって風の噂で聞きました。そんなやつに喧嘩売ったらヤバイんじゃ…」


「うるせぇー!俺たちウルフ三兄弟はビビらないんだよー!」


 何やら喧嘩をしている。

 勝手にデュラハンと思っているなら好都合だ。

 その設定を活かさしてもらおう。


「デュラハン様…こやつらどうします…?」


 私は小声でノリコに話しかけた。

 狼人間という事は耳が良いはずだ。

 こんなに小さな声でも奴らには聞こえるはず。


「な…!!」


「兄貴…今デュラハンって……」


「…………」


 どうやら聞こえたようだ。


「デュラハン様ぁ!!ご無礼をお許しくださいませー!!!」


 三兄弟のヴァリンと呼ばれる狼人間が頭を下げてこちらへ歩み寄ってきた。


「おいヴァリン!!何裏切ってんだ!!」


「ウルルの兄貴…俺はまだ死にたくない!!生きて極上の女を抱かねえといかないんだ!!」


 生きる理由において1番恥ずかしい答えが出てきた。

 三兄弟のウルルは驚きながらエックスを見つめる。

 まるでお前は裏切るなよと見つめるように…


「俺はエックス!!デュラハンの兄貴!!!よろしくお願いします!!」


 ウルルがエックスを見つめて3秒後に裏切った。

 さすがのウルルも白目を剥きかけている。

 この三兄弟はバカみたいだ。


「お前らぁ…三兄弟の誓いを忘れたのか!!」


「!!」


 その一言でヴァリンとエックスは我に返ったようだが、ここで我に戻ってもらっては困る。

 その誓いとやらは忘れてもらうぞ!


「後日魔王様に貴様らの働きを伝えてやってもいいとデュラハン様はおっしゃられてます」


『お願いしますデュラハン様ー!!』


 三兄弟は3匹仲良く土下座で私達の目の前に座っていた。

 こいつらはおそらく本当はかなりの強敵なのだろうが、いとも簡単にしつけてしまった。





 ウルル、ヴァリン、エックスの三兄弟はこの森の番人らしく、ラストの町へ向かう勇者たちを3匹で襲っているらしい。

 その動きは速く、並みの勇者では攻撃が当たらない事から“銀色の三連星”と呼ばれている。

 ジェットストリームアタックしかけそうな名前だけど、本人達はそれを気に入ってるらしい。


「どうぞどうぞ!この森で取れた果実と肉でございます!!」


 目の前に用意されたのは色とりどりの果実とこんがり焼かれた獣の肉である。

 実に美味しそうだ。

 一口食べると果実の中から果汁が飛び出てきた。

 というか口の中から飛び出てきた。


「それはカジューの実ですね!口の中でそいつを噛んだら噴水の如く果汁が飛び出てきます!」


 そういう事は早く言わないと顎外れるから!

 ギリギリで吐き出したから助かったけどさぁ!


「それより…アイザークの村へ行くってのは本当ですかデュラハン様…?」


 なぜかエックスが怯えながら尋ねてきた。


「そうだとデュラハン様はおっしゃっている」


「そうですか。気をつけてください…あそこには魔女が住んでいますからね」


 魔女?

 魔女って魔法を使う練り物作ってそうな見た目のアレ?


「魔女ですか?」


「はい。アイザークの村は勇者達を倒すために作られた村です。なので勇者立ち入り禁止なんですが、村の中に秘宝が隠されていてそれを求めて勇者達がこっそりと入ったりするんです。その勇者達を撲滅しているのが魔女なんです」


 何その恐ろしい設定。

 勇者立ち入り禁止の村とか聞いた事ないんだけど。

 しかもその中に魔女が潜んでいて、秘宝を盗もうと思ったらヤられるとかもう立ち入らないが吉じゃないか。


「そこでなんですが…頼みがあるんです」


 頼み?

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