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さくらんぼライフ  作者: あやの
9/22

9.仮入部

 翌朝、目を覚ますと莉緒の顔が目の前にあった。


「うわ~~~!!!!!?」


『朝から失礼ですよ!!」


 寝てる人の顔を覗き込む方が失礼だと思うんだけど……。


 こたつで寝た為か、少し体が気だるい。

 今度からこたつで寝るのは自重しようと胸に秘めつつ、朝ご飯を食べた。



 二人して身支度を素早く整え、学校へ登校すると教室の前で大親友に声をかけられた。

 ちなみに莉緒はもう教室の中に入っている。


「おはよう、さくら!」


 妙に威勢がいいな……。


「おはよう……、でさ、昨日の事なんだけど……」


「昨日? はて……? そんなことより、今日からソフト部に仮入部するでしょ?」


 どうやら、彼女の中で昨日の事は無かったことにしたいらしい。

 あたし的にもその方がいろいろ面倒くさくないので、全力で乗っかることにした。


「うん、そうするつもり」


「じゃあ、放課後ね」


 そう言って、大親友と別れた。

 教室の中に入ると、莉緒が恨めしそうにあたしを睨んでいた……。



 放課後になり、莉緒とソフト部の部室に向かった。

 あたしは大親友とも一緒が良かったのだけど、莉緒が強硬に嫌がったので仕方ない。


 部室で体操着に着替えていると、大親友がやってきた。


「さくら、早いじゃない。気合い入ってるわね」


「そんなことないんだけど……」


 あたしと大親友が話していると、横から莉緒が割り込んできた。


『お二方、私を無視しないで下さい!』


「えっ? スケッチブック?」


 大親友は急に目の前にスケッチブックが現れて、ビックリしている。


「ああ……、この子声が出せないの……」


「ああ、それで……。わたし、小川(おがわ)(あざみ)。よろしくね」


『私は金子莉緒です! さくらんぼの【マジタレ】やってます! よろしくお願いしますね!!』


「「は!?」」


 あたしと薊が呆気にとられていると、莉緒は笑顔で大親友に握手を求めていた。


『……よろしくお願いしますね……』


 莉緒は笑顔だが、目が笑っていない。


「……へぇ……、よろしく……」


 薊も笑顔で握手に応じていた。

 例によって目は笑っていない。


「ところで【マジタレ】ってどういう意味?」


 短い握手が終わり、薊が莉緒に尋ねた。


『? そのままの意味ですよ! 昨日もさくらんぼの部屋に泊まりましたし!』


 薊があたしをもの凄い目で睨んできた。


「さくら! どういうこと!!」


 あたしはビビりつつも、昨日の事をかいつまんで話した。


「ちょっと待って。ってことは昨日あの時も一緒にいたの?」


『あれれ? 昨日、さくらんぼのマンションにいらっしゃったんですか~?』


 莉緒は皮肉たっぷりに聞き返していた。

 教室前でのやりとり聞いていたのかな。


 朝は無かったことにしようとしてたけど、薊どうする気だろう。


「ぐっ、それは、その……。……それより金子さん、声が出せないそうなんだけど、ソフト部には選手として入部するの?」


 薊は先程までとは打って変わって、心配そうに莉緒に聞いていた。

 その話の切り返し方、強引過ぎやしないだろうか。


『ええ、もちろんです! その為に鍛え上げましたから!!』


 莉緒は胸を張って答えていた。

 まあ、グローブを一緒に買いに行ったのだから、その答えは想定内だ。


「でも…………」


 薊が何か言おうと口を開きかけたその時、部室のドアが大きな音を立てて開いた。


「おう、仮入部の人グラウンドに集まってくれ」



 グラウンドに出ると、ユニフォームを着た先輩達が集まっていた。

 その中の一人が声を上げた。


「えぇ~、私がキャプテンの権田原(ごんだわら)だ!! それでは仮入部の諸君、一人ずつ自己紹介してくれ!!」


 あたしと薊含む新部員が自己紹介を終え、莉緒の出番になった。

 スケッチブックに名前とクラス、ソフトボール未経験と声が出ない旨を書き込んでいた。

 先輩達や、他の新部員達が少しざわついている。


「ふむ、キミは声が出ないのか……。まぁ、気をつけていれば問題あるまい」


 権田原さんはそう言うと、あたし達新部員を見回した。


「一年はちょうど9人か……。よし、今日は実力を見るため練習試合を行う!!」


 さっそく、あたしの実力が試されようとしていた。



 今回入部した一年生の中に、運良くピッチャーをしたことがある人がいなかったので、あたしはピッチャーをすることが出来た。

 打順もみんな遠慮してか、四番を打ちたい人がいなかったので、あたしがすることになった。


 莉緒は未経験と言うこともありライトで9番、大親友こと薊はキャッチャーに収まっている。

 本来薊はショートなんだけど、彼女はあたしがピッチャーをするなら、自分がキャッチャーをすると言ってきかなかった。

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