21.妹ちゃんの好み
何だかんだと理由をこじつけ、結局【妖精さんの仕業】というワケの分からない結論で落ち着いた後、二人でお風呂に入る事になった。
服を脱ぐ時もそうだったんだけど、ルリちゃんの視線が痛い。
あたしに罪の意識があるせいかもしれないけど、じぃっとこっちを睨んでいる気がする。
こういう時はなるべく早くお風呂から出るに限る。
あたしは手早く体を洗い、一瞬だけ湯船に浸かって出ようとしていると、その様子を突っ立ったまま見ていたルリちゃんが話しかけてきた。
「えっおねぇちゃん、もうでるの?」
その言葉にあたしはふんふんと頷きかけて……やめた。
……それにしても喋れないっていうのはかなり不便だね。
だって寂しそうにあたしを見つめるルリちゃんに、その理由を聞けないから。
これは『もうちょっと一緒に居たいのに……』と解釈してしまっていいのかな?
……分からん……。
けどここはお風呂に入り直すべきだよね。
そう結論づけ、あたしはもう一度湯船に浸かることにした。
「ああまだでないんだ。よかった……」
よしよし、どうやらあたしは正解を引き当てたらしい。
しかしそうなると、さっき睨んでいたのは何だったのだろう?
ルリちゃんは自らの体を丁寧に洗ったあと、湯船に浸かりつつこう呟いた。
「いっしょにおふろにはいるのひさしぶりだったから、【あらいっこ】したかったな……」
なるほど、それを言い出せずにあたしをじっと見ていたのか。
悪いこと、しちゃったかな……。
「おたがいのからだをあらいおえたあとにみせてくれる、【スペシャルファイティングポーズ】もできなかったね……」
……皆さんは幼気な少女が悲しんでいるところを見てどう思うのだろうか?
少なくともあたしは……笑顔に変えたいと思う。
だからあたしは……うろ覚えにも程がある、記憶の片隅にもほとんど残っていないあの【伝説の特戦隊五人】のポーズを再現することにしたんだ。
波を立てないよう静かに湯船から出たあたしは、ルリちゃんの方を振り向き、深呼吸をする。
そして一人一人のポーズを決めていく……。
最後の隊長のポーズが終わると、テンションマックスを振り切ったルリちゃんの声が飛んできた。
「お、おねぇちゃん!! いつもはもったいぶっていっかいひとりぶんしかみせてくれないのにどうしたの!? バカなの!? ありがとう♪」
何か最後の方にサラッと酷いこと言われたような気がするけど、気のせいだよね?
「もうるり、このまましんじゃってもいい……」
ちょっとやめて!?
こんなんで死なれちゃあ後味が悪過ぎる!!
あたしは未だに瞳がハートマークで、一向に湯船から出ようとしないどころか沈みつつあるルリちゃんを抱き上げ、お風呂から出ることにした。
適当に自分とルリちゃんの体を拭き、パジャマを着たあと、二階に上がった。
二階には二部屋あり、片方のドアに【るりのおへや】と可愛らしい字で書かれたプレートが掛けられているので、もう一つの部屋があたし……と言うか莉緒の部屋かな。
取りあえず先にルリちゃんの部屋に行き、この子を寝かしつけた方がいいよね。
その後じっくり莉緒の部屋を探索することにしよう。
あたしがルリちゃんの部屋に入り、電気をつけるとまず最初に目に飛び込んできたのは、マッチョなボディをした莉緒のポスターである。
? あれ、おかしいな?
莉緒は確かに筋肉質だけど、どちらかといえばスマートな細マッチョ体型である。
ポスターのようなゴリマッチョではない。
あたしが不思議に思ってポスターをじっくり見てみると、莉緒の顔は写真の切り抜きだった。
つまりこのポスターは莉緒ではなく誰か別のマッチョで、顔部分だけ莉緒の写真を貼り付けてあるだけだ。
道理で股間部分が盛り上がっているはずだ。
莉緒は恐らく女性なので、多分付いてなかった……はず。
あたしが急に不安になって、確認しようとパジャマを脱ぎ捨て、パンティーをずらしかけたその時、
「おねぇちゃん、るりのおへやでなにしてるの?」
と正気に戻ったのか、ルリちゃんが声を掛けてきた。
あたしは二度も幼き少女を騙したくない一心で、ありのままを伝えることにしました。
『そこのポスターをみて、もしかしてあたしってじつはおとこだったのでは?とおもいいたり、かくにんさぎょうにはいろうとしていたところです!』
これで莉緒に対するルリちゃんの好感度がザックリ下がるだろうけど、しょうが無いよね、非常事態だったし。
まぁただの悪ノリなんだけど。
予想外だったのはこれを読んだルリちゃんの反応でした。
「えっ、ほんとうに!? はやくかくにんしよ、おねぇちゃん!! いえ、にぃさん!!」
異常なまでにノリノリなんだけど!?
しかも既ににぃさん呼びに変わってるし……。
「はあああぁぁぁ…………。もしおとこなら、なにひとつきにすることなく筋肉をつけまくれるね♪」
はっは~~~ん、分かったぞ!
この子、筋肉フェチだ。
しかもかなり重度の。
……ルリちゃんには悪いけど、現実を見せつけなくては。
『ごめん、やっぱりあたし、おんなみたい……』
あたしはパンティーをズリ下ろすことなくルリちゃんに伝えた。
そもそも分かりきっていた事だしね。
「……そっか~~~、これでりそうの【ゴリマッチョ体型】からすこしとおざかっちゃったね」
……あ~あ、ルリちゃん凄いガッカリした表情してる……。
ほんと、悪いことしちゃったな……。
けど……、……少しってなんぞ?
まだ諦めてない感満載でスッゴい不安なんだけど……?




