20.そんなことよりトイレについて熱く語ろう!
意外にも全てを食べきれ、かつまだまだいけそうな莉緒の胃袋に驚きつつ食事を終えた。
とっくに日付は変わっており、後はもうお風呂に入って寝るだけなんだけど……莉緒の部屋はどこなんだろ?
パジャマやらバスタオルやら取ってきたいのだけど。
考えてみればお風呂の位置も分からないし、いっそこの家の見取り図が欲しい……。
さすがに自分の家で妹ちゃんに配置を聞く訳にもいかない。
しょうがないので、今も眠そうに食器を片付けている妹ちゃんが眠ってしまうのを待って、探検しようか。
あたしが後片付けをすれば良かったんだけど、食器の位置なんて分かんないし……。
後片付けを終わらせた瞬間を狙って、妹ちゃんの目の前にスケッチブックを掲げた。
『ごはんおいしかったよ。かたづけまでありがとう。ねむそうだし、もうへやにもどってねたほうがいいよ』
目を擦りながら文字を読み終えると、妹ちゃんは少し申し訳なさそうな表情をした。
「……るり……まだおふろはいってない……」
妹ちゃん、ルリって名前なのか。
ひょんな事から知ることができて良かった。
まさか『名前忘れたから教えて』なんて言うわけにもいかないし。
それよりマズったなぁ。
こんな時間までお風呂に入ってなかったなんて。
ただウツラウツラしている状態のルリちゃん一人でお風呂に入らせるのは危ないよね。
仕方ない、一緒に入ることを提案しようか。
部屋の場所が分からないから、バスタオルとか取って来られないけど……ええい、ままよ!
『それじゃあ……、……おねぇちゃんといっしょにはいる?』
それを見たルリちゃんは少し首を傾げていた。
あたしは一瞬親御さんの呼び方同様、自分の人称を間違えたのかと思ったけど、
「……いいの?」
と言うルリちゃんの言葉を聞いて、内心ホッとした。
あたしが頷くとルリちゃんは目を輝かせて、
「じゃあるり、おねぇちゃんのパジャマ取ってくるから、おふろさきにはいってて!」
と言い残し、小走りで二階まで駆け上っていた。
ルリちゃん、莉緒の事大好きなんだなぁ……。
都合のいいことにパジャマ取りに行かなくて済んだし、良かった。
……おっと、ホッコリしている場合じゃなかった。
お風呂もそうだけど、まずはトイレを探さねば。
部活終わりにいってから、全然いけてないからもう結構ヤバい!
あたしは台所を出てキョロキョロしつつ、それっぽい扉を見つけたので急いで開けて入った。
そこにあったのは……紛う事なき便器である!
何と嬉しいことに便座カバーまで付いている!!
テンションの上がったあたしはしずしずと用を足し、若干の名残惜しさを感じつつ『さて流すべ……』と思い、レバーに手を伸ばすところである装置が目に入った。
あれ、ここのトイレ……ウォシュレットがあるぞ?
あたしはお恥ずかしい事に今まで生きてきて、【ウォシュレット】というものを使った事がない。
学校はおろか、マンションにもそんな高価なものは設置されていない。
ウォシュレットに対し、ちょっとした憧れがあったあたしは、恐る恐る一番興味のそそられる【おしり】と書かれたボタンを押してみた。
すると、「あはぁん……」と声が出るなら漏れていたであろう刺激が、ボタンに書かれていた部分に襲いかかってきた。
生まれて初めての感覚で力が抜けたのか、指がとあるボタンを押してしまったようで、水圧が強くなった。
『いたたたた!? でもちょっとアリ……』という何とも言えない感情が芽生えかけたけど、少し冷静になって考えてみた。
おや? 肝心な部分が洗えてないぞ?
あたしは改めて、横の装置を見てみた。
【おしり】は現在進行形で発射中のこれとして、【止】は今はまだ触れない、触りたくない!
となると、余ったこの【ビデ】というのが怪しいな?
あたしはかなり名残惜しみつつ【止】ボタンを押し、【ビデ】という深淵を覗く決意をした。
壊れ物に触れるかのごとく、やんわりとした指使いでボタンを押す。
するとどうでしょう!
水圧が【強】のままだったこともあり、とんでもない刺激があたしの大事な部分に襲いかかってきた!!
「はあああぁん!!」と声に出せないのが悔やまれるほどの快楽に導かれたあたしは、ちょっとしたトランス状態に陥っていた。
そんなあたしを現実に戻してくれたのが、扉をノックした後で放たれたある人物の声である。
「ねぇ、おねぇちゃん、まだ?」
その一言で冷静さを取り戻したあたしは、装置を止め前後をしっかり拭いた後、やや腰砕け気味にトイレから出た。
『ごめんごめん、またせちゃった?』
「もう、おふろにはいっててっていったのに、いないからしんぱいしたよ?」
ルリちゃんはそう言って頬を膨らませた。
『ほんとうにごめんね?』
「もういいよ。ついでだからるりもおトイレすませとく」
ルリちゃんはあたしと入れ替わりでトイレに入ったのだけど……、
「うわぁあ!!!!!!!?!?!?」
叫び声と共にすぐさまトイレから出てきて、あたしにこう言いました。
「ちょっとおねぇちゃん!! べんざカバーがぬれてベチョベチョなんだけど、おトイレでなにしてたの!?」
涙目であたしに問うてくるルリちゃんに、あたしはこう答えるしかありませんでした。
『あたしがはいるまえからそうだったよ!』




