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さくらんぼライフ  作者: あやの
18/22

18.突撃! 莉緒の自宅

 練習が終わり、帰る途中の校門で莉緒と薊が待っていた。

 莉緒の右足首には大げさに包帯が巻かれている。

 両手には松葉杖で、莉緒の鞄は薊が持っていた。


『大変そう、ですね……』


 怪我をしていない事は分かっているけど、儀礼上聞いておかないとね。


「いやまぁ、三日もすれば大丈夫だと思うんですけどね!」


 朗らかに言う莉緒、しかし薊が猛烈な勢いで割り込んできた。


「ダメに決まってるでしょ!! 二ヶ月は安静にしないと!! 何せ骨がへし折れているだから!!」


 何故か症状が悪化してるんだけど?


「へし折れてませんよ!? ちょっとヒビが入ってるだけです!!」


「どちらにせよ、無理させられないわ! ……そうだ、さくら! 怪我が完治するまでわたしの家に来なさい」


 この薊の提案はあたしにとって都合がいい。

 何せ莉緒をマンションに寝泊まりさせると、ろくな事にならないのだもの。


 ただ一つ問題が。

 マンションの鍵、莉緒が持ってるんだよなぁ……。

 彼女達が保健室に行っている間、莉緒の鞄の中を探しても見つからなかったし、何とかして取り返さないと!


「はぁ? 嫌ですよ、私は莉緒と一緒がいいです!」


 案の定、提案を断る莉緒。

 そしてあたしを見る目が勝ち誇っているようで気にくわない。


「何言ってんの! 金子さんと二人きりになんてさせる訳ないでしょ!!」


『私も絶対に嫌です!!』


「えっ!?」


 あたしのコメントを見て、薊がビックリして目を見開いていた。

 入れ替わる前の莉緒の言動からは考えられなかったからだろう。


「ほ、ほら金子さんも嫌がってるし、素直にわたしの家に来なさい!」


 それでも渋る莉緒の前に、あたしは静かに歩み出た。


「な、何ですか? ……ちょ、ちょっと笑顔が怖いんですけど!?」


 あたしは微笑みながら、彼女に本気のボディブローを打ち込む。

 元々自分の身体なので何一つ遠慮はしていない。


「ぶへぇっ……」


 妙な声を上げ、地面に崩れ落ちる莉緒。

 倒れ込む寸前にあたしは彼女の体を抱き止めた。

 その間に莉緒のスカートのポケットをまさぐる。


 ……あった……。


 ついでに彼女のスマホも奪っておこう。

 助けを呼ばれると面倒だし。


「アンタ、無茶するわね……」


 呆れる薊に莉緒を背負わせる。


「……気を失わせたければ、首筋とかでも良かったんじゃないの?」


『実はそれで人間が気絶する事無いんですよ』


「えっ、そうなの?」


 漫画の情報だけどね。


『それよか早く帰りませんか? さくらんぼもいつ目を覚ますか分かりませんし』


「それもそうね。じゃあね、金子さん」


『さようなら』


 莉緒を背負った薊が遠ざかっていく。

 あたしも自分のマンションに向かって歩き出したのだけど、ふと思いついた。

 

 ――莉緒ってどんな生活をしているのだろう?――


 入学から数日、彼女はあたしのマンションに泊まってばかりで家に帰っていない。

 家族も心配しているだろうし、ここはひとつ莉緒の家に行ってみよう。

 そう考えたあたしは莉緒のスマホを取り出し、多分ダウンロードしてあるであろう地図アプリを探した。


 彼女もあたしと同じで、高校からこの地域に出てきた。

 あたしはマンションから学校までどう行けば分からなかったのでダウンロードしている。

 莉緒も同じだと思うんだけど……。


 若干不安になりながら、画面をいじっているとアプリ内で彼女の自宅を見つけた。

 けど、ここって……メッチャ遠!?

 完全に県を跨いでるじゃん!?


 莉緒ってば、実家から通っていたのか……。

 昔、遠征に行った莉緒の中学に程近いし、多分間違いない。

 だからこそ、あたしのマンションに泊まりたがったのかな。


 てか部活なんてやってる場合じゃないと思うんだけど。

 ここからじゃ始発の電車に乗れなきゃ完全に遅刻するし、帰りなんて部活終わりなら家に着くのは夜中じゃん。

 つまり今から行くとなると、着く頃には夜中……。


 ……はぁ……、どうしよう?

 行くの辞めようかなぁ……。

 でも気になるのは気になるし……。


 ああ、もう!

 うだうだしている間に行こう!

 そう決心し、あたしは駅に向かい電車に乗り込んだ。



 アプリを頼りにようやくたどり着いた莉緒の家は何というか……。


 ……普通だった……。


 何の事はないごくごく一般的な一軒家である。

 あえて他の家との違いを無理矢理捻り出すとするなら、表札が【金子】になっている事ぐらいかな。


 ……………………。


 夜も遅い所為か、妙なテンションでつまらない事を考えてしまった。

 それ以上に緊張しているっていうのもあるけど。


 いくら姿形が【金子莉緒】だとしても、中身は【星野某(あたしは自分の名前が嫌いだ)】である。

 他人の家に真夜中訪ねるのにはかなり抵抗があった。


 ……どうやってこの家に入ろう……。

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