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さくらんぼライフ  作者: あやの
14/22

14.入れ替わり直後

 ……ふと目が覚めると、何やら違和感があった。

 いつもなら肩のこりを感じるのに、今回はそれが無かったのだ。

 というよりも体が妙に軽い。

 特に胸の辺りが。


 ……うん、まぁそれはいい。

 日によってそういう時もあったし、今日は調子がいいのだろう。

 それよりも……、目の前にあたしの顔がある方が問題だった。

 寝ている時のあたしの顔って、こんななんだ……。

 とか冷静に観察している場合じゃない。


 あれ、何故こんな事に?

 思いつく原因とすれば、昨日の神社参拝ぐらいだけど、まさか……ねぇ。

 あたしはいても立ってもいられず、あたしの顔をしている人を揺さぶった。


『ねぇ、ちょっと起きて!』


 そう言いたかったのに、声が出ない。

 まさか、今のあたしって……。


「う~ん……何ですかぁ~?」


 気の抜けた声とともに、目の前の人が目覚めた。


「あれ? 私、声出てる……?」


 不思議そうにしてる女性があたしを見て一言、


「私、幽体離脱したのでしょうか?」


 言われてみれば、そう思うのも不思議ではないのか。

 でも、そう言っている彼女はあたしそっくりな訳で、そうなるとこれは……。


『あたしと莉緒が入れ替わっちゃった!!』


 必死にそう伝えたいのに、相変わらず声が出ない!


「えっ、何ですか? あの~、紙か何かに書いてもらわないと、声出てないですよ?」


 おそらく莉緒であろう人が、スケッチブックを手渡してきた。


『あたしと莉緒、入れ替わってる!!』


 スケッチブックにそう書いて見せた。


「えっ、まさかそんな……!」


 そう言って莉緒は右手を胸に、左手を……何故か股間的な部分に突っ込んでいた。


「ある! ……ある!!」


 一発目のあるは分かる。

 多分胸の事なんだろうけど、二回目のは一体?

 男と入れ替わったのなら、アレの事になるんだろうけど……。


『……ねぇ、何があったの?』


「もちろんおっぱいと……、あとはホラ、私まだ生えてないんで」


 ホラって言われても、あたし知らないし!

 ……まぁともかく確認終わり。


『ねぇ、どうしよう……?』


 いろいろ相談したいんだけど、声が出ないのでこんな簡潔な聞き方になってしまう。

 ああ、煩わしい!


「どうしようと言われましても……。そうですね、とりあえずさくらんぼって字、下手ですね。もう少し丁寧に書いてくれないと、ちょっと読みづらいです」


 それはどうでもいいでしょ、今は!

 まぁ善処するけどさ。


「ともかく、そろそろ登校しなければ遅刻してしまいますし、着替えましょうか」


 そう言われて時計を確認すると、8時を過ぎていた。

 確かにヤバい、いろいろと!


「さくらんぼ、着替えるの手伝いますよ。なので、目瞑っておいて下さい!」


 そう言いながら、いつの間にか着替え終えている莉緒が迫ってきた。


『い、いいよ。時間も無いし、自分で……』


 書き切る前に、莉緒が危機迫る形相で腕を掴んできた。

 それにしても自分の怒っている顔ってこんななんだ……。


「そう言って私の裸を見る気ですね! そうはさせませんよ!!」


 この子はどれだけ自分の裸に対し、尋常ではないコンプレックスを抱えているのだろうか。

 莉緒の裸を見る気もないし、あたしは言われるがまま、彼女に着替えさせてあげた。



「さぁ、早く行きましょう」


 そう言ってあたし達は学校までダッシュしたんだけど……。

 何この体!

 まるで風になったかのように軽い!

 しかもほとんど息切れしない!


 テンションがマックスになったあたしは、遅刻することなく教室に辿り着いていた。

 対照的に莉緒はと言うと……。


「星野桜桃さん? あら、星野さんは休みかしら?」


「い、いえ、います、いますよ……」


 点呼中にやってきて、ギリギリ遅刻を免れるという体たらくだった。



 休み時間、あたしと莉緒は二人っきりになる為、体育館裏までやってきた。


『これからどうしよう?』


 あたしは登校前にもした相談を莉緒にぶつけていた。


「そうですね……。とりあえず私は単独行動時、クラスメイトや部員に事あるごとに「莉緒っていい感じだよね!」と伝えておき、私達が付き合う事になっても、これっぽっちも不自然では無い状況にもっていこうと思ってます!」


 そんな事聞きたかった訳じゃないし、それに……


『やらせないよ、そんなこと!』


「そうなると四六時中私と一緒にいなければいけないことになりますが?」


 この子、この状況を最大限生かそうとしてるぅ!?

 もう元に戻れないのかもって不安にならないのかな?

 あたしは誰か……というより、薊に相談…………あっ!!


『ね、ねぇ、薊、薊はどうしたの!?』


 こんな事になってしまったのですっかり忘れてた。


「ええ、マンションのさくらんぼの部屋に布団で縛られたままという、ご褒美プレイの真っ最中のはずですが?」


『ご褒美じゃなく、拷問の間違いじゃ?』


「本人は案外楽しんでいるんじゃないですか? 体が入れ替わってなければ、私に代わってもらいたいぐらいですよ! ……ただまぁそろそろピークでしょうがね……」


『……ピークって何が?』


「尿意的なものですね」


 ――それを聞いたあたしが学校を早引きし、渋る莉緒を引き連れてマンションに帰ったのは言うまでも無い――

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