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The wonderful reality  作者: 狐藪
8/17

取りあえず鍛えるそうです‐了


「一先ず休憩にしましょう」


その言葉を待ってました!っと言わんばかりに身体から崩れ落ちる様に座り込む。

ガランっと大きな音を立てて刀を落して荒い呼吸を整えるため、大きく息を吸い込んだ。


疲れた。

マジで此処まで運動したのは久しぶりだ。


身体中の筋肉の痛みを感じながら先程までの訓練を思い返す。

理香のコピーとは言え、理香は女の子と言えど全国常連の猛者である。

その理香を亮太と同じくらい見てきた俺としては、モノマネ位ならそこそこ出来る。



まぁ本家と比べたらかなり見劣りするだろうけど。


形になりつつある俺の二刀流に満足した様子のフェアリーと煉鬼は嬉しそうに頷く。


「大分まともになってきたのですよ。それにしても、理香さんでしたか?その女性の動きを真似しているとなれば、理香さんもかなりの剣術をお持ちのようですね」


「うむ。とても一般人の動きではない」


「いや、俺の動きは完全に真似だから、実際の理香の動きはもっとエグイぞ」


「だからこそ普通の人間ではないと言ってるのでござる」


頷きながら力説する煉鬼に思わず苦笑いを浮かべる。

いや、本当に理香って何者だよ。

魔族にまで認められているみたいだし.....。


まぁ理香も何処かの剣豪の真似をしてるって言ってたしな。

そりゃそうなるか。


「それにしても此処まで成長が早いとは驚きなのです」


「え?そうか?そこまで早くないと思うけど」


形になるまで、多分感覚的に3時間くらい掛かっている。

理香と亮太ならその半分くらいのスピードで覚えられるだろう。


「えぇ早いのです。たった数時間で次の段階に進めるとは思いませんでした」


次の段階?

次は何をするんだろう?

首を傾けながら疑問を浮かべると、フェアリーは部屋から時計を出し時間を確認した。

そう言えば今何時くらいなのだろうか?


「もう午後五時ですね。出来ればもう少し訓練したいのですが、初日ですし異世界から来たのでしたら、色々疲れてるでしょうから此処までにするのです」


もうそんな時間か。

思ったより時間が経っていた事に驚いた。

此処に来てから外の景色を見ていないので、時間が分からなかったのだが、召喚されてから時間が経っていたようだ。


でも。


「いや、まだ続けよう」


俺には時間が無い。

三人を助けるなら早く強くならなければ助けるなんて不可能だ。

目をジッと見てフェアリーと煉鬼に訴えると黙って頷く二人。


「わかったのです。ですが次の段階は少々辛いと思いますよ?」


「大丈夫。三人を助けるなら早く強くならないと」


俺の意思が伝わったようで、頷くと立ち上がる二人。

それに合わせて俺も立ち上がり、刀を持ち準備を終えた。


「では、次は戦闘を行いましょう。この倉庫には低級の魔物である”ゴブリン”と”スライム”が大量に保管されているので、先ずそこから始めて見ましょう」


ポンポンっと、膝に着いたホコリを払ったフェアリーが告げて、先程よりも緊張と恐怖が身体を支配する。この世界に来て初めて、生物と命の奪い合いをするのだ。恐怖せずにいられない、でも亮太達を助ける為には強くならないとダメだ。


嫌な思考を振り切って静かに頷く。


「うむ。初めて命を狩るのでござるから、先ずその怪我を直す必要があるな」


手を俺の脚に向ける煉鬼。

手から淡い光が発生すると、その光が先程自分で付けた傷に向かう。

光が当たって暫くすると元の綺麗な足が姿を見せて傷が塞がっていた。


さすがファンタジー。


どうやって治してるんだよ。


「ありがとう煉鬼。これで傷を気にせずに動ける」


正直さっきまで、痛くてあまり激しく動けなかったのでありがたい。

驚いた表情を一瞬浮かべた煉鬼だったが照れた様子で、ぷいっと顔を背け俺から視線を逸らした。



「礼など不要でござる。それよりも実戦では躊躇すれば自分の命が無くなるぞ。低級とは言えど魔物じゃからの、人の命くらい奪える力がある」


「そうですね。煉鬼の言う通りです。死に掛けたら助けますが、基本的に私達は見ているだけですので、拓海さんだけで頑張ってくださいね?」



二人の忠告に「分かった。気を付ける」と言って、二人から離れた場所で集中する。


生物を殺す事、正直最悪な気分だ。

つい最近まで普通に暮らしていた俺が魔王であり、生物の命を奪う行為をこれから行うのだ。


平常心など保てない。


「はぁ....。じゃあ....頼む」


後ろから、フェアリーの返事が聞こえてギュッと刀を強く握る。

汗が頬を伝い、腕でそれを強く拭う。



冷静に、さっきの理香の真似をイメージして刀を構える。


実戦でこの動きが有効なのだろうか?っと嫌な考えが浮かぶ。

まだ早かったかも知れない。


でも、強くならないと亮太達を救えない。



目を鋭くして嫌な考えを全て振り払う。

丁度その時、視線の先が光ると一体の魔物と呼ばれるそれが姿を現す。


緑色の身体で、顔も恐ろしい、手に持つ棍棒、俺の身長の半分位の魔物。

見た目から察して、ゴブリンであろう。


思わず恐怖で後ずさる。


「グギャギャアァアァ!!」


「ひっ!あ、あれで低級!?」


見た目が恐ろしく強そうなゴブリンに悲鳴を見っともなく上げてしまう。

マジかよ....俺倒せるのか?


「臆するでない!!死にたく無ければ戦うでござる!」


ハッと、後ろから聞こえた煉鬼の声に弱腰だった思考を止めて直ぐに構え直す。

そうだ、躊躇したら死ぬ。

二人は死に掛けたら助けると言っていたが、頼っていてはこのままだ。


「ふぅ...ふぅ。理香を信じるぞ」


理香の構えと、動きを信じるしかない。

緊張でガチガチだが、ジリジリと詰め寄る。


ゴブリンも大人しくしていない。

俺を敵と認識して駆け足で近寄って来る。


動きはそこまで早くない。


後、少しだ。

ゴブリンが数メートルまで近寄って来た。


ここだ!



「う、うわぁああ!!」


大きく踏み出し、大振りに刀を振り下ろす。

さっきまでの動きを再現できていない。


隙だらけのその攻撃を易々と避けたゴブリンは振り下ろして身動きが上手く取れない俺の腹に棍棒を叩き込んだ。


「ぐえっ!」


エビ反りになり吹っ飛ばされた俺を見て満足気に気味の悪い笑い声を上げるゴブリンを横目に悶える。


痛い!マジで死ぬ。

こんなの何回も食らったらマジで死ぬ。


頭の中でパニックに陥った。

苦しくて、このまま倒れていたい気持ちになるが、何とか我慢して立ち上がる。


「グギャギャアアア!!」


クソ、慌て過ぎだ!

落ち着け、さっきの攻撃は失敗だらけだ。


それに二人は、今も何も言わずに俺を見てる。

まだ、死ぬ様な事態じゃ無い。


狙いやすいカモを見つけた様子のゴブリンが醜い笑顔を浮かべながら突進してくる。


そうだ、理香に言われた事はまだ有った!

亮太にも言われたけど”相手の動きを見て動け、喧嘩の時に自分から突っ込む奴は大抵ザコだ”


頭の中で冷静に思考する。


構えたまま、動かずゴブリンの動きを見る。


棍棒を振り上げたそれを確認して、相手が動きを止められないであろうタイミングで今度は、大きく一歩後ろに下がる。


ブンっと、大きく振り下ろしたゴブリンの棍棒をギリギリで避けると、直ぐに大きく一歩を踏み出して、練習と同じように刀を二つ同時に振り下ろす。


自分の体重と振り下ろした勢いが加わる二つの刀は、自然とゴブリンの両肩に吸い込まれた。


嫌な感触と血が噴き出す音を聞いて、一瞬手の勢いを緩めそうになるが、煉鬼達の忠告を思い出して、力を込めた。


「があああああ!!」


「ギャアアアァァァ!」


魔物と自分の叫び声が部屋中に響き渡る。

魔物の血が、自分の服や顔に飛び散っても構わず叫びながら振りぬいて、その場から飛び、離れてゴブリンを警戒するが、ゴブリンが力なく倒れてピクリとも動かないのを見て、命を奪った事が分かった。



ガランっと音がして、自分が持っている刀を落しても、気にせずゴブリンを見つめる。

無残な光景に、胃から込み上げて来るモノを何とか耐えてガクッとその場に跪く。



殺した。

生き物を初めて....殺した。


「ぐっ....はぁ、はぁ、はぁ。最悪だろ....こんなのが後何回も有るのか?」


フワッと、突然後ろから柔らかな感触が伝わる。

確認出来ないが、緑の髪が横目で確認出来たので、恐らくフェアリーだ。

優しく抱きしめるその感触に心を落ち着ける。


「初めて生物を殺したのです。嫌な気分になるのは当然なのです。ですが、今後この世界にいる限り命を奪う事は多くなっていくのですよ」


「そうでござる。私も未だに命を奪うのに慣れ等無い。だが、生きる為、最低限の覚悟は持つのじゃ」


「わかってる....けどやっぱ辛いな」


「じゃが、生き物を殺さなければ強くならん。拓海が助けたいと願う者を救うためにも、強くなるでござるよ」


そんな事分かってる。

今ゴブリンを倒した瞬間、力が込み上げる感覚があった。

おそらく、ゲームで言うレベルが上がった。


最悪だろこの世界。


生物を殺すことでステータスが上がる。

生きる為には殺すしかない。


三人に会い、救うには他の生物を殺すしかないのだ。



________________________


斎藤拓海 男 Lv2


HP 250

MP 240

パワー 250

スピード 350

ディフェンス 600


種族 魔族 (人間)


職業  魔王 (復讐者) (魔導士) (高校生)


スキル 単騎無双Lv1 設定調整Lv2 無限成長Lv1

    鑑定Lv2 書庫Lv1 ボックスLv1


装備 学生靴 学生服 トランクス ボロボロのワイシャツ 無名の刀×2



魔王召喚編はこのページで折り返しです。

今後は実験の意味合いも込めて番外編も入れていく予定です。




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