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The wonderful reality  作者: 狐藪
4/17

どうやら魔王になったようです‐続

死んだ?



亮太達が?


なんで?


「は?....いやどう言うことだよ!あの三人が?あり得ないだろ!」



到底理解出来ないフェアリー達の言葉に大きく首を横に振り否定する。あの三人が死ぬなんて考えられないだろ!?



嫌な汗が頬を伝うのを感じながら詰め寄ると、尚更困った表情を浮かべた二人に、怒りが込み上げてくる。



「ふざけんなよ!三人は、俺なんかよりずっと強い奴だぞ!?死ぬなんて考えられない様な程強いんだ....変な憶測を言うな!!」


フェアリーと楝鬼の肩を強く掴んで俺の怒りをぶつけるが、それでも首を横に振り否定する。


ふざけんな!


ふざけんなよ。あり得ないだろ....俺と同時に飛ばされたであろう三人がこんな早く死ぬなんて....。



「残念ですが....おそらく。....正確に言えば、まだ生きているでしょうが、遅かれ早かれ死ぬ可能性が高いのです」



まだ生きているが、そのうち死ぬ?



「な、何を馬鹿なの事を....冗談だろ?」


渇いた笑い声をあげながら必至に否定するがそれでも悲しみの表情を浮かべるフェアリーと楝鬼。


「冗談ではないのでござる。おそらく、その二人は勇者召喚と呼ばれる類いのモノによって飛ばされたであろう。ただ....その者達が前の世界で武術に長けていたのであれば尚更、死の危険が高いであろうな」



楝鬼が淡々と告げる言葉に引っ掛かりを覚えて、少しだけ冷静になった俺は二人から手を離し、説明を求めた。


「勇者召喚とは、魔王召喚と同じ様なモノで呼び出された瞬間に特殊な力や職業を手に出来るモノなのですよ」


職業?

疑問に思った俺の目は自然と鋭くなる。

只、怒りによってではなく亮太達の現状を考えてどうするべきか思考するためだ。


「職業ってなんだ?....あれか?ゲームとかで言う所の戦士とかジョブの事か?」


「げーむ?と言う言葉はわかりませんが、この世界の人には必ずステータスが存在するのです。基本的に鑑定のスキルがある者や、鑑定する為の道具がなければ分からないのですが....職業というのは、その者が極める事の出来る戦闘スタイルや、職業の事なのです」



何となく理解できた。

要するに、商人のジョブを持っている人は商人しかなれなくて、魔法使いなら魔法以外は戦闘面で役に立たないってことか。

実際はもう少し違うのかも知れないが....。


ステータスがあるってことは、テンプレのファンタジーゲームの様な世界ってことだな。


そこまで理解した俺は、二人に対して頷く。



「理解が早いのですよ。三人が勇者召喚されていて、今まで剣術や武術に長けていたのであればそう言った職業を身につけると考えられるのです」



「それも、聞いた話だと、三人....それも内二人はかなり強いのでござろう?ならば高レベルの職業の筈じゃ」



あの二人の運動神経は異常な程高いからな。

折原先生の運動神経は、正直分からないけど。

そりゃあ高レベルの職業にもなるだろう....ん?なら強いって事は少なくとも戦闘で死ぬ様な事は無いんじゃないのか?



「それなら尚更、死ぬなんてあり得ないだろ」


「そうですね....ですが、いえ強いからこそ死ぬ可能性が高いのです」


強いから死ぬ可能性が高い?


「そうじゃな。この世界の事を知らないのであれば当然じゃろうが」



勇者として召喚されて、強い職業であれば、死ぬ危険なんて無いんじゃ....いや、不意討ちとかもあるだろうけど....少なくとも呼ばれた国に留まって居ればそんな事殆どありえない。



それに、二人にはなるべく無茶な事をしないように言ってあるし、折原先生や、他の人達も勇者召喚されたのであれば少なくとも危険な場所に向かうような事態にはならないのでは?



....召喚された?



妙な引っ掛かりを覚えて、口に手を当てて思考する。


「なぁ?この世界に今そんな大量の勇者を召喚する様な脅威がいるのか?....そもそもなんで俺は魔王として召喚されたんだ?」



嫌な予感がする。

なんで、同時期に勇者と魔王を召喚する必要がある?

何故、そんな大量の勇者を召喚する?


そこまで考えて、ふと顔をあげて二人を見ると困った様子で俺を見ていた。


「それが三人が死ぬ可能性が高い理由なのですよ」


ちょっと待てよ。

それが理由?


それに....。



「な、なぁ?俺は今の二人を見て良識ある人だと思っている.....だけど、なんで?なんで、最初人間だと分かったら直ぐに殺そうとしたんだ?なんで人間を嫌っているんだ?」



なぜ、人間だとわかった瞬間二人は俺を敵視した?

そう感じて二人に視線をジッと向けると二人とも俯き悲しそうに笑った。


「私達、魔族を家畜以下の害虫と考えている人間がいるからなのですよ」


「勿論、友好的な国もあるが勇者を召喚した国は間違いなく私達を滅ぼそうと考えておるだろうな」



そこまで聞いてもまだ答えにたどり着けない。

眉間にしわを寄せて必死に二人の言った死の可能性が高い意味を考える。



亮太達を呼んだ国は魔族を嫌っている。

つまりその内、亮太達は魔族の討伐に参加させられる。


「魔族って強いのか?....そもそもこの場所は、その国からどの程度離れているんだ?」


「そうですね....まぁ人間程度であれば多数に攻められない限り問題ないでしょう。そこまで離れた場所ではありませんが、普通の人間にはこの魔王国に侵入する事は不可能です。」


「そうじゃな。この国の周りには、先代の魔王様が防衛用に放った特殊な魔物が大量に生息しておる。魔族以外の人間、特に敵意ある存在を襲う様に設定されておるからな。」



敵対国から離れた場所では無いけど、魔物が大量に居るから普通に考えれば侵入は不可能だと。

だからこそ大人数の勇者召喚を行って侵攻する作戦か。


「だけど、亮太達には無茶をするなって言ってあるし、二人が魔族を嫌うなんて事....少なくとも実害が無い限り無いと思う」



フェアリーと煉鬼は亮太と理香を知らないから魔族を襲うと考えてるのかも知れない。

だからこそ今の内に否定しておこうと告げるが、二人はそれでも険しい顔を止めない。


「それは、そうだと思いたいのですが」


「二人は少なくとも、今俺を信用してくれてるだろ?なら、俺の友達の事も信用してくれないか?」



「そう言う問題では無いのでござるよ。召喚を行ったであろう国は洗脳アイテム”奴隷化の腕輪”を所持しておる。幾らその者達が全うな人間であろうと、腕輪を付けられた者は強制的に思考を植え付けられるのじゃ」



そういうことか。

ようやく意味が理解出来た俺は、ガックリと項垂れた。


「つまり....二人が幾ら敵意を持って無くてもそのアイテムを使えば強制的に魔族に敵意を持つ、そして此処に攻め入って来るって事か」



二人が頷いた事によって、俺の考えが正しい事が分かった。

つまり、強制的に従わされた二人は、魔物や魔族が蔓延っているこの場所に必ず攻め込んで来る。

そうなれば、この二人と、魔族は必ず亮太達に攻撃して殺そうとする。

そもそも、召喚された人間が、魔族に対して敵意を向けるかは召喚するまで分からない。

もしかしたら、魔族と戦う事を恐れて逃げる者も居るかもしれない。


ならば、召喚した後、直ぐに洗脳してしまえば、必ず魔族を殺すだろう。

俺が悪役の立場だったらそうする。


理に適っているが、腐った行為だ。

強制的に戦わせる殺人兵器にするつもりって事だろ。

イライラした様子の拓海に、煉鬼が遠慮気味に俺を見て来る。


まだ何かあるのか?

そう思って煉鬼を見ると、小さく、でもハッキリと聞こえる声でもう一つの最悪の事態を告げた。


「それと、魔王召喚によって呼び出された拓海は、今現在魔族と同類の魔王の職業に着いておるだろう。そうすれば、その者達にとっては拓海は友では無く、憎き敵と認識して首を狩ろうとするじゃろうな」


亮太達が俺を殺す?

親友である俺を....憎むって事か?


「そ、そんなわけないだろ!?俺を殺す?亮太達が?そもそも、何で俺が魔王に!?」


「奴隷の腕輪が発動すればそうなるじゃろう」


「煉鬼の言う通りなのです。それに拓海さんは魔王召喚で呼ばれました。魔王召喚で呼ばれた者は強制的に魔王になるのですよ」


つまり今....俺は魔王であり、敵意を受ける対象って事か?

なんでこんな事になった?


詰んでいる。

この二人の言葉が本当ならだけど....。

少なくとも現状、二人に対して騙すような仕草は感じられない。


必死に打開策を考えるが情報が少ない。

どうしようもないのか?


絶望した様子の拓海を見ていたフェアリーが不安そうに近寄ってくる。


「まだ、助ける方法はあるのですよ」


フェアリーが優しく俺の肩に手を乗せて顔を上げさせる。


「あくまでも賭けです。先ず奴隷の腕輪には、発動すれば本来、元に戻す事は不可能ですが、解除する方法が幾つかあるのです」



解除?洗脳を解く事が出来るって事か?

俺の考えを察知したのか頷く。


「そうなのです。一つは、腕輪着けた本人が外した場合、もう一つは無理やり外そうとした場合に着けている者を即死させる毒が腕輪から装着者に打たれる前に外す方法なのです」



それって、かなり難しいんじゃないのか?


「後、もう一つの方法は....あまり期待は出来ませんが、その亮太さんと理香さんそれから折原さんの可能性を信じる事です」



そう言って俺を無理やり立たせると優しく微笑んだフェアリーは俺の手を握ってこの場所から違う所に連れて行こうとする。


「まだ話の途中だろ?....それに何処に連れて行く気だ?」


「二人を助けたいなら時間が無いのですよ。続きはこれから向かう先の移動中に話すのです」




二人を信用しても良いのか?

と今更考えてしまうが、それでも亮太達の事を考えれば何かをしていなければ落ち着かない。

それに、フェアリー達は一応この世界で初めて会った人だから今は、この二人の言葉を信じてみよう。




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