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The wonderful reality  作者: 狐藪
2/17

勇者召喚されたようですが俺はどうやら魔王召喚されたようです


「でさぁ~理香がその後....」


「ちょっと!亮太それは言わないでよ~!」


「はいはい。夫婦漫才は俺抜きでやってくれ」


夫婦漫才を苦笑いを浮かべながら聞いているとそれは突然起こった。

異変に気付いた俺達は「なんだこれ!?」っと驚きながら足元を凝視して、よくあるファンタジーの定番である魔方陣の様な光る円形のモノを見ながら、慌てて立ち上がる。


絶対にこれ定番の勇者召喚の魔方陣だよ。

むしろそれ以外無いだろ!!良く周りをを見渡すと窓の外から見える他の教室からも光が見えて学校中の人間に不可思議な現象が起きている様だと想像できる。


「なぁ!!こ、これって.....あ、あれだよな?」


「え!え?なにこれ!?着いて来るんだけど?」


慌てている理香と、少しだけ嬉しそうに興奮しながら俺を見て問いかける亮太に、曖昧に頷く。

「多分....ファンタジーの定番の異世界召喚じゃないか?」と自分でも厨二病的な考察を告げて亮太に答えると理香はかなり怯えた様子で亮太に抱き着いた。


こんな時でも抱き着くとは....さすがバカップル。


「えぇー!亮太怖いよ~」


可愛らしい声にゾクっと寒気がした。

理香....お前、部活中に侵入した不審者に笑いながら竹刀でボコボコにしてただろ。

しかもお化け屋敷で幽霊役の従業員に笑顔で「もっと演技力を磨いてから来い三下が」とか言ってただろ。



「よーし!理香は必ず俺が守ってやる!」


亮太、俺が知らないとでも思ってるのか?お前、理香の前だと、ド級のМじゃねーか。

二人でイチャイチャしながら抱き合っているのを見て、嫌な予感がした。


「二人とも、一応そのまま何か変化が在るまで抱き合っててくれ」


未だに光輝く魔方陣を見ながら自身が思った仮説から、考え付いた打開策を告げると、不思議そうな顔をしながら頷く二人。


「え?良いけどなんで?」


「拓海....なにか分かったのか?」


「分かったってより....もしかしたら召喚される場所が違うかも知れないだろ?」


自身が立てた仮説を告げると、慌てた様に抱き合いながら俺に手を伸ばす亮太と理香。

多分俺も同じ場所に飛ばされる可能性を上げるために手を差し出したのだろう。

二人と同じ場所に飛ばされる方が今後の為に良いかも知れないと、手を伸ばすがそれよりも早く魔方陣から光の壁が現れて二人に触れることが出来なかった。


何故か手をその先に延ばせず、透明な壁に覆われている様な状態になって、「くそっ間に合わなかったか!」と壁を力いっぱい殴る。それでもビクともしないが、どうやら声は届く様で抱き合った状態の二人も「拓海!どうすんだよこれ!!」と叫びながら不安そうにドンドンと二人とも抱き合ったまま壁を叩き続けた。


恐らく抱き合った状態を解けば壁が現れて二人とも離されるだろうと察知した拓海は「そのまま抱き合った状態でいろ!」と指示して今後の対策を練った。



違う場所に飛ばされる可能性も高いが、魔方陣の形と、見た目の文字の共通性から同じ異世界に飛ばされると思う。


「しかたない!俺が違う場所に飛ばされたら、何とかして合流する!それまで無茶しないでくれ」


二人の運動神経なら、異世界でも何とか出来るだろう。

それに、離れ離れになっても如何にかして二人には合流したい。

当然同じ場所に飛ばされれば良いのだけれど....魔方陣の色が二人のと、俺のとでは少し違う。


「無茶するなって....異世界だろ!?俺らの場所が分からなければ会えないだろーが!!」


「そ、そうだよ!それより如何にかして私達の所に早くきてよぉ!!」


二人共先程とは違って少し焦りながら俺を見ている。

さっき、下の魔方陣を見て自分達と色が違う事を悟って焦ったのだろう。


離れる可能性は高いが、もしかしたら一緒の場所に飛べるかも。

それにこれは、実はドッキリだった~なんて事もあるだろう。

そう少し楽観的に捉えて二人に声を掛けようと笑った瞬間―――――




景色が変わった。



文字通り、さっきまで居た教室でも無く。


理香も亮太も居ない。


先程まで少しだけ騒がしかった周りもシンっと静まり、暗い中世ヨーロッパの王宮の様な場所にいて、俺の嫌な予感は当たっていた事が分かった。


内心焦りながらゆっくりと見渡すと、女性と思われる背中から真っ黒な翼を生やした緑色の長い髪の美人な女性と、鬼のお面を頭に付けた可愛らしい幼女がいて、冷汗が止まらない。


「あ、....え?....なにこれ?俺だけ?」


周りに同級生や学校の生徒らしき人が居ない状況に思わず焦った声を漏らす。

これ、ボッチじゃね?

俺だけ違う場所に飛ばされたとか?


というより....なんで後ろの二人は未だに無言なの?


「あ、あのー?何ですか?これ?」


「ふむ、どうやらニンゲンのようだぞ?フェアリー....どうするのじゃ?」


「どうするも....先代魔王様の召喚魔法なのですから確かだと思うのですよぉ」



え?先代魔王?

聞き捨てならない発言に目を大きく見開いて思わず詰め寄る。

だが、何故か異常に警戒している幼女は自身の腰に下がっている刀を抜き....刀!?



「え!?ちょ、ちょちょっと待ってくれ!...それ刀だよね!?」


ビビりながら幼女に聞くと刀を構えながらコクリと頷く。


「そうでござる。それよりもニンゲン....何故近寄った?」


「へ?....あ、この世界では勝手に近付いちゃダメなのか?....あ、でもロリコン先生みたいな人もいるから警戒するのも当たり前か?」


刀にビビッて思わず後ずさりしながら早口で告げると今迄黙っていたフェアリーと呼ばれた女性がピクリと微かに肩を動かし「この世界?....どういう事ですかぁ?」と先程よりも鋭い視線で俺に視線を向ける。この世界の女性怖いわ....ってなんでこの世界って言葉に反応したんだ?



「え?いや....ここって異世界ってやつだろ?」


そう告げると益々鋭さを増した目で「異世界?何の事ですか?」っと首を傾げながら少しだけ俺に近寄る二人。当然一人は刀を構えたままなので、怖くて少しづつ後ろに下がる。


「いや....此処って地球じゃないんだろ?」


「チきゅう?....意味がわからないでござる。ここは、魔族の住まう魔王国だぞ?」


魔王国?.....え?あれ?魔族って言えばファンタジー定番のテンプレ的なラスボスじゃないか?

勇者召喚で何でいきなり魔王の居る国に飛ばされるんだ?



冷汗が更に吹き出し血の気が一気に下がって行くのが分かり、立ちくらみがするが、グッと我慢して「これって勇者召喚で呼ばれたんだよね?」っと期待の籠った声で告げると目を丸くしたフェアリーと呼ばれていた女性が困った様な顔で隣に居る幼女に目くばせする。


そして二人とも困った様子で俺を見ると聞きたくなかった言葉を耳にした。


「いえ、私達は魔王召喚を行ったのですよぉ」


「で、召喚されたお主は、一応魔王になる資格を持っておる」




―――――――――――――――――――――――――――――――――



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