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The wonderful reality  作者: 狐藪
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救出編ー序章



フェブル王国

魔法を使う戦闘スタイルの魔術師が国の大部分を占める魔術大国。

その主な理由には魔術協会が関係している。

過去大戦時代に台頭した魔術師達が設立した魔術協会はこの国の全てを牛耳っていると言って良い。


この国の決定権は勿論、国王だが戦闘に関しては魔術協会に頼っている事は世間一般の常識であり、国民も国王もこの事実は重く受け止めている。何故なら近辺国に攻め込まれていないのは当然魔法の力が絶対的に強力であるからだ。


少し暑くなり始めたこの季節。

王国に出稼ぎに来る者も多く街は賑わっていた。


大通りを歩く人の中に、この季節には珍しくローブを纏った男性、斎藤拓海がいた。

当然拓海は出稼ぎに来た訳でなく違う目的でこの場所に来ていた。


奴隷の調達である。


言い方はゲスイ発言だしあんまり良いイメージでは無いのだが。

今後の事を考えれば優秀な仲間は絶対的に必要だし必要な事だと割り切るしかないと考えていた。


でも、やっぱり煉鬼達の言っていた事は当たりだったみたいだな。


俺は周りの通行人を横目に見ながら周りを見回す。

色んな人種がいるが、それよりも此処まで歩いて来るまでに既に奴隷は何人も見ていた。

若い奴から年を取った人まで男女関係なく奴隷と思しき人はいる。


先ず此処まで見て感じたのは、奴隷は基本的にちゃんとした衣食住を提供されていないだろうと言う事。

中にはちゃんとした格好の者も居るがそう言った人は大抵が女性であり、そして殆ど目が死んでいる。

多分そこまでしっかりとした生活は送れていないのだろう。


恰好がちゃんとしてても、内面が死んでいては醜いだけだろうに。

それなら内面もケアしてあげなければ....って、そんな事を考えるのは居ないのだろうけど。


客観的に奴隷の現状を把握した事で今後の対策を練ろう。

と言ってもこの分なら、俺の懸念材料は無くなったも同然だし今後が楽になった。



歩くペースを変えずに周りを見回していると、傍に果物を売っている屋台を見つけて、そう言えば此処に来てまだ何も食べてなかったなっと考え屋台に近寄った。


「お!いらっしゃい。何か買っていくかい?」


威勢のおじさんだな。

まぁこういう人嫌いじゃないけど。


「ん。何か旨い果物を一つください」


「旨い果物か!うーんとちょっと待ってろ!」


そう言ってガタイの良いおじさんが屋台の後ろを漁って真っ赤なリンゴの様な果物を手に取ると俺の前に差し出す。


なんだこれ?

リンゴ?


マジマジと不思議そうに眺めていると二カッと笑った店主がズイッと差し出してくる。


「これはフェブルで取れる名産品でな。フェゴっつー果物なんだけどここら辺じゃ一番安くて旨いぞ!」


フェゴ?

なんだそれは?

聞いた事が無い名前...まぁ当然かもしれないけど、取りあえず食べてみるか。

ローブの中で見つからない様にアイテムボックスを開くと、銀貨を一枚取り出して店主に渡す。


「毎度!じゃこれはお釣りの銅貨9枚な」


ジャラジャラっと銅貨を渡した店主に礼を言って銅貨とフェゴと言う果物を受け取る。

どんな味なんだ?


取りあえず一口食べてみようと口に着けてかぶりつく。


んーこれやっぱ味は完全にリンゴだよな。

普通のリンゴとは少しだけ甘さは違うし美味しいけどリンゴだ。


「どうだ?旨いだろ」


「あ、あぁ久しぶり食べた懐かしい味だ。」


店主に笑顔を向けながら告げると余程嬉しかったのか、大笑いをしている。

いや、そこまで喜ばなくても....っとそんな事より。


「なぁおじさん。ちょっと聞きたいんだけどここ等辺に奴隷商館ってあるのか?」


本来の目的は奴隷商館の場所を聞く事と、あわよくばフェアリーの言っていた”ある”情報を引き出す為だ。


「ん?あぁ奴隷商館なら直ぐそこにあるぞ?....お前さん奴隷なんかに興味あるって事は貴族かい?」


「いや、ちょっと必要でね。そう言えば奴隷って皆あんな扱いなのか?」


クイッと後ろを指差しながら奴隷らしき人を指さす。

すると、不思議そうにした店主。


「なんだ知らないのか?奴隷と言っても買うには相当金が掛かる。当然買うのは貴族や魔術協会の様な富豪が買うんだが、まともな生活をさせてやるモノ好きはいないだろうよ。まぁ奴隷になった以上まともな暮らしなんて望めないだろうがな」


やっぱ奴隷の扱いは結構雑って事か。


「それに....噂じゃ近い内に帝国と戦争が起きるかも知れないらしいからな。その為に今、貴族様達も装備を買うのに忙しいんだろうよ」


戦争。

やっぱりフェアリーの言った通りだ。


近い内に帝国とフェブル王国で戦争が起きる可能性がある。

それはフェアリーから知った情報で既に知っていたが、もう一つ不確かなモノがあった。

正直この不確かな方を確定したいのだが....敵国が情報を持ってる訳ないよな。


「やっぱりそうか。....ま、巻き込まれない内にさっさと出て行くかな」


軽く手を振っておじさんに挨拶すると俺はおじさんに教えてもらった奴隷商館へと向かってく。

思ったより近くにあったそれは、屋台からでも目視できた。


大分古びた洋館の様な佇まいで、他と不釣り合いなその建物には人は誰も入って行かない。

まぁ、店主の話しが本当なら一般人が手を出せる様な金じゃないらしいし、戦争に向けて金を集めている最中だから態々奴隷を買いに来る奴なんて居ないんだろう。



奴隷商館と言っていた建物の前に来ると、どうやら本当のようで門の柱には奴隷商館とバッチリ書いてあった。


異世界だから文字や言語も違うと思っていたから当初は面食らったが、現実を知ってしまった今では別に当たり前の様に感じる身近な”日本語”で書かれたそれを横目に門を潜る。


懐かしい。


一瞬そう思ってしまうのは多分昔見た本に載っていた建物に似ているからだろうか?


洋館の前まで来ると扉の前には綺麗に着飾った服を着た若い男性が一人だけ立っていて、俺を不審者を見るような目で見つめる。


まぁ、貴族とかお金持ちが来る様な場所だから如何にも旅人の様な恰好をしている俺を見れば当然怪しいと思うのが当然か。


軽くため息を吐いた俺だったが直ぐに無表情を作り直す。


「失礼。ここは奴隷商館で間違いないか?」


「そうですが。本日はどのようなご用件でしょうか」


一瞬、俺の問いかけにムッとした様子の男性だったが俺が少なくとも奴隷を探していることが分かったのだろう直ぐに取り繕った笑みを浮かべて事務的に話しかける。



態度悪すぎだろ。

もし日本にこんな態度の従業員が居たら直ぐにクレームだぞ。


そう内心思っても口に出すと面倒だろうと思い「奴隷を買いたい」と無表情で要件を告げた。


普通こんな所に来れば奴隷が欲しい人だって分かるだろうに。


「そうでしたか。.....本来であればその様な服装の者は入れないのがルールなのですが....今はこちらも奴隷を持て余しているので、買ってくださるのであれば中にお入りください」


そう来たか。

まぁ怪しい服装をしていた自分も悪いが、このままでは俺が気に入る奴隷が居なくても一人は買わされるって事になる。


中に入って戦闘に役に立ちそうに無い奴を買わされてもな....。

まぁそれでも魔王国に住んでもらえばそれで良いし...。


ここはアレ使うか。



書庫(メニュー)発動。


瞬間世界中の時が一瞬で止まりメニュー画面が開く。

あの後分かったのだが、このスキル書庫と漢字で書いてあるのに読み方は何故かメニューだったのだ。


そりゃあ声に出しても反応しない訳だと思った....ってそんな事どうでも良い。


メニュー画面のレーダーのコマンドをタッチして周辺にいる人間を調べることにした。


これを使えば近くにいる場合詳しいステータスが分かるから中に入らなくても分かる。


まぁ目の前にいる人にレーダーを使うのと遠くにいる人に使うのでは読み取れるステータスに差が出るから出来れば近くで見たかったのだが....。


取り合えず近くにいるコイツはそれなりに強いみたいだし、下手に騒ぎになれば厄介だったのでここでレーダーを使うのは正解だったな。


パッパと部屋の中にいる人間のステータスを全て確認していく。

中には従業員らしき人もいるので見極めが重要なのだが、これだけステータス値に差があるとだいたいわかるな。



.....アタリ。


ニヤッと思わず顔がにやけてしまう。

普通にこの世界に生きている人からすれば良くいる人なのだろう。


いや、奴隷になってるくらいだからこの世界ではあまり役に立たない職業なのかもしれないが。


まぁそれを抜いてもこれはアタリだ。

下手したら今後、アビス以上の力を持つかもしれない。


俺の力を使えばの話だけど。


メニューを閉じて目の前にいる男に黙って頷くと、余程危機迫っていたのだろうか、嬉しそうに扉を開けて恭しく招き入れてくれる。


さっきまでの態度と随分違うじゃないか。

これで何もアタリがいなければキレたかもな。


今となってはどうでも良い。

むしろ早く手にいれたい。


「そうですか!それはそれは....さっ!どうぞこちらへ。店主がお待ちしております」


「あぁ。ありがとう」



ステータス値に運があれば間違いなくカンストしてるかもな。

にやけそうな顔を必死で押し殺しながら俺は男性の後を着いていき、館の中へ歩みを進めた。


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