親友に会うために強くなるそうです-続
魔族に限った話?
一体どう言うことだ?
意味が分からず困惑した様子を見せる。
もしかして、魔王国の中に一般人も居るって事か?
煉鬼が俺の胸から手を離して無言で布を差し出してくる。
礼を告げて布を受け取って体に付いた返り血を拭きながら冷静さを取り戻す。
「一体どういう意味だ?他に人間がこの国に居るって事か?」
疑問を口にすると「それは違いますよ」とフェアリーが即座に否定した為、益々疑問が浮かぶ。
この国に人間(元)は俺だけって事だよな。
なら、やっぱり....いやまだ方法はある、他の国の人間を味方にする方法だ。
でも、これはあまり現実的じゃない。
「他の国の人間を味方にするって話なら無理じゃないか?」
「何故そう思うのでござる?」
何故って....。
「いや、普通に考えたら分かるだろう?人間には魔族を嫌っている人が多いんだろ?」
「えぇ。ですが、中には魔族に対して敵対心を持っていない人もいるのですよ」
それはそうかも知れないが....。
「いや、仮に”そんな人”が居たとしても、戦えるかどうか分からないだろ?」
「確かにそうでござるが....なにも”そこら辺の国の一般人でなくても良いでござろう”」
あえて強調する様に話した煉鬼の発現に、ん?っと顔をしかめた。
いや、一般人もなにも、それしか無いだろ?
もしかして.....。
「もしかしてギルドとか戦闘用の依頼を請け負う機関があるのか?」
ギルドってそんな都合の良い話は無いだろうけど。
でも煉鬼達の言葉から察してそれぐらいしか思いつかないんだが?
「確かにその手もあるかも知れないのですが、あまり得策では無いのですよ。」
ギルドがあるのか!
どんなテンプレだよ....でもそれも違うと言う事は、他に何か方法があるのか?
「まぁ....ちきゅう?という所に存在しないかもですが、奴隷を調達すれば良いのですよ」
満面の笑みでフェアリーが告げる。
なんで笑顔なんだ?いや、それよりも奴隷?
いや、いやいや。
それダメでしょ。
「いや、ダメでしょ。どう考えても....いや、ありかも知れないけど....違法じゃないのか?」
これから、何人も人を殺すことになるかも知れない状況で違法とか考えてる事も変化も知れないけど、道徳的に反してないか....いや俺が言っても説得力あんまないけど。
フェアリーと煉鬼は顔を見合わせて不思議そうな顔を浮かべながら困った様子の二人。
いや困った顔されても....まぁ二人の言う危機的状況が俺一人では厳しいのであればそれが最善かも知れないが、そもそも奴隷と言う制度も分からないし、無理やり言う事を聞かせるのもある意味、敵の帝国と同じ事をしているような気がする。
「ふむ、知らないのも無理ないでござろうが、奴隷と言っても合法でござる。帝国の様に強制的に従わせる腕輪も使わないでござるよ」
「ある意味、職業と一緒なのですよ。生活が苦しくなった者や、働けなくなった者など、勿論、犯罪を犯した者等が奴隷になるのですよ。」
何となく意味は分かった。
要するに働く事が出来なかったりお金を稼ぐ事が出来ない様な人が最終的に行き着く仕事ってことか。
でも、それだとしてもあんまり意味が無いような気がするが。
「何となく分かったけど....奴隷でもあんまり違いが無いんじゃないのか?」
「いや、そうでも無いでござるよ。奴隷であれば、契約をすれば契約主に攻撃を行う事が出来なくなり、契約主に命令された事であれば、重大な犯罪以外の内容であれば逆らえないでござるよ。それに、もし仮に逆らえば奴隷はその場で死ぬでござるよ」
逆らえば死ぬってヤバいな。
いや、まぁ自分の意思?で奴隷になって居るのなら流石に逆らったりしないだろう。
まぁ....強制的に従わせるか、自分の意思で従っているのかの違いでも良い気はしないが。
「だから、奴隷を調達すれば良いって事か....でも亮太達を助ける為には必要か?」
「えぇ。今後の事を考えれば奴隷も重要になって来るでしょから....早急に調達するべきだと思うのですよ」
確かに、もし奴隷を連れて亮太達三人を助けるなら直ぐにでも確保するべきだろう。
じゃなきゃ実際に必要になった時に奴隷が使えない様な弱さだったら意味が無い。
「ふむ。わかった....あんまり気乗りはしないけど仕方ないか。でもどうやって奴隷を?」
渋々ながら頷く。
まぁ別に性欲をぶつける訳じゃないし、酷い扱いもする気はないから良いか。
こういう時は、楽観的に。
「はい。私達も詳しい事は分かりませんが....そうですね、この魔王国を出て東に向かった先に”フェブル”と呼ばれる王国があります。そこは、戦闘能力もこの近辺の国で一番ですし、最大の国ですので、そこで調達すれば良いのですよ」
「そうじゃな。....そこなら比較的安全ではあるだろう。よいか、国に着いたら先ず奴隷商館と呼ばれる場所がある筈、そこに行ってなるべく腕の立つ者を連れてくればいい」
「奴隷を買うって....金はどうするんだ?」
二人の発言に不自然な点は感じたが、嘘を言っている様子では無い。
何かおかしい。
「お金は、この城に有るのでそれを使えば良いのですよ」
「何でこの城に人間の国の金があるんだ?」
俺が疑問を口にするとフェアリーは「お金は世界共通の通貨なのですが?」と困惑した様子で首を傾げた。それを聞いて益々不自然な事が増えていく。
なんで金が世界共通で”人が来た事が無い”魔王国に存在しているのか?
そもそもお金は、誰が作っている?
金貨とか、銀貨とか作る人がいなければお金は生まれない。
作っている人が居たとしても、魔王国にそのお金がある事が不自然だろう。
それに、人間に深く接触出来ていない、近付けば殺されるかも知れないのに、何故か煉鬼はフェブルと言う国の内部情報も知っている様な口ぶりで俺に奴隷の事も教えて来た。
そうだよ。
やっぱり変だろ....これ。
グッと眉間に力を込めて考え込む。
「どうしたのです?怖い顔をしてるのですよ」
「うむ。....なにかあったのでござろうか?」
職業についてもそうだ。
変な部分も多い。
何か....そう、まるでゲームみたいなんだよ。
瞬間、地球で聞いた事があるパソコンの機械音が響いた。
前に鑑定でステータスを開いた時と同じ様な画面だったが、明らかに違う変化があった。
最初に異変を感じたのは景色だった、周りの景色が先程と違って灰色の様に暗くなり、フェアリーと煉鬼の肌も景色と同じ灰色に変わっていた。
それだけでなく、煉鬼もフェアリーもこの不可解な現象を前にしても何も言葉を発せず、表情一つ変えていなかった。
「え、え....な、なんだこれ?」
慌てて周りを見回すが、時が止まった様に何一つ動きが無い。
自分だけが何故か動ける。
「フェアリー?」
恐る恐る近づいて、フェアリーの前に移動して、顔の前で手を左右に振るが微動だにしない。
なにこれ?
え?時間を止める様な力に目覚めたとか?
.....いやいや。
「なんだこれ!!え?俺何かした!?」
慌てて周りを見回す。
そうだ!外はどうなってる?
倉庫の扉を開けようと扉に手を掛けて開けようとするがビクともしない。
ガンッと大きな音を立てるだけで何も変化しない。
部屋からどうやっても出れない事が分かった俺は、今度は目の前にある画面を見てみる。
この原因が何か分かるかも知れない。
不可解な現象を把握する為に俺の目の前にある画面を覗き込むと、俺の疑問が全て解決できるであろう
言葉が画面いっぱいに乗っていた。
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