勇者召喚されたと思ったらどうやら1人だけ魔王召喚だったようです
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人間は皆平等である。
そんな言葉を何処かで聞いた事がある。
どっかの偉い人が言った言葉か、そこらに居る一般人が言った言葉かは思い出せないけど。
だけど俺は平等とは思わない。
人生に置いて、勝ち組がいれば当然負け組もいる。
俺の持論で言えば、自分は間違いなく負け組に入るだろう。
俺、斉藤拓海の家はボロボロのアパート暮らし、親父は借金で自殺、母は朝晩働き、殆ど家に帰ってこない。一応公立高校には行けたけど、やりたい部活にも入れず、アルバイトをして自分の食費を稼いでいる。
ある意味....人生詰んでる。
勿論今の境遇を恨んだ事はあるけど、母に愛されている自信はあるし、生活が苦しいのは慣れているからそこまで悲観してはいない。
ただ、高校での学校生活は不満だらけだ。
クラス全員からハブられて、今じゃ殆ど誰も俺に話しかけない。
入学して1ヶ月で虐めの対象に選ばれた時から校舎裏でボコボコにされ、教科書は捨てられ、挙げ句教師までもが、まるで犯罪者の様に教育と表した言葉の暴力を当たり前の様に与える始末だ。
元々負けん気は強かったので不登校にはなってないけど、こんな毎日が続けば流石に嫌になってくる。
はぁ.....と大きくため息をはいて、トボトボと暗い表情で学校の教室へと向かう。「今日は画鋲か」と靴箱に大量に入っていた画鋲を思い出してぽつりと呟く。
あの大量の画鋲何処で手にいれたんだよ。
そもそも靴箱に画鋲とか古いわ!
教室の扉をあけて何時もと変わらず見向きもしない同級生達を横目で見ながら自分の机に学生用カバンを置いて椅子を引くと、椅子にも画鋲が大量に置いてある。
どんだけ画鋲好きなんだよこいつら。
画鋲でも食ってろ!
内心毒づいたけど、当然そんな事を口にすれば集団でリンチされるから黙って画鋲を拾い上げてゴミ箱に捨てた。
捨てる最中、クラスの人がクスクスと笑っているのを無視して椅子に座ると、DQN連中が数人よってくる。何時もと同じメンバーにあからさまに嫌そうな顔をするが、それでも彼らが近づいてきて、俺の机にバンッ!と手を殴るようにして叩くと胸ぐらを掴んでギロッと睨んできた。
「よぉ!何でまだ生きてんだよ貧乏人」
「さっさと死ねよ」
「つーかクセェから学校来んなよ」
ドカッと大きな音と鈍い痛みを感じて吹っ飛ばされる。
当然殴られたのだが、いつもの事などで特に痛く無いのだが「うぅっ」とわざとらしく呻く。
毎回の様に難癖着けて暴力を振るってくるコイツらのおかげで身体中に痣が出来て、元々の肌の色から大分黒くなってしまった。
「てめぇみたいなクズ人間生きてる価値ねぇんだよ!」
「死ね」
「死ね」
「「しーね!しーね!」」
クラス中から死ねコールが巻き起こって盛大な嫌な笑い声が響く。
なんでだよ!なんで俺がこんな目に合うんだよ!!
クソ!死ねば良い。こんな糞共全員!歯をギュッと噛みしめてギュッと拳を握る。
やり返す力が無い俺は無力だ。
涙を堪えながら何時必ず復讐してやる。
そう決意していた。
だけど....このままじゃ俺にはコイツらをどうにもできない。
相変わらず死ねと連呼しながらクラスの全員から物を投げつけられ、腹を蹴られながら、拓海は憎しみを募らせていく。
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「クソ!クソ!クソが!!なんだよアイツら」
学校の旧教室で悪態を吐きながら壁を力の限り殴り怒りをぶつけた。
この教室には誰も来ない事を知っているからこそ、俺はいつも嫌な事があると此処で怒りを発散している。今の時間帯は授業中なのだが今の授業は、俺でストレス発散している糞教師、楠木だから行く意味が無いのでサボっている。
逃げている訳でなく単純に授業に出ても殆ど廊下に立たされて勉強をさせて貰えない。
ならば授業に出るより誰も来ないこの教室で勉強していた方が何かと便利だ。
一組だけ置いてある机に”真新しい教科書”を広げてイライラしながら教科書の重要な部分をノートに纏める。この学校で唯一俺の味方で勉強を教えてくれる”折原 大吾先生”が用意してくれた教科書と机だ。陰で助けてくれる折原先生には感謝している。
多分、折原先生がこの学校に居なければ今頃自殺してたかも知れない。
「後でお礼しに行かないとな....マジ折原先生サイコー」
新しい教科書も机も用意してくれて、楠木が暴走しない様に見張ってくれている先生だし、なんか....もう神だよあの先生。
ロリコンだけど。
残念な折原先生の性癖に、思わずクスっと笑っていると、不意にドアが開き見知った二人が顔を覗かせた。でた....バカップル!
盛大なため息を吐いて二人に笑顔を見せると、二人は頬の殴られた後を見て苦い顔をしながら教室に入って来た。何時もの事なのに、この二人は優しすぎる。
拓海は、入って来た二人....久瀬 亮太と志野原 理香を手招きして迎え入れる。
「相変わらずヒデェな誰に殴られたんだ?」
「あー誰だっけ....あのDQNみたいな奴」
ヘラヘラと笑いながら亮太に伝えると「高橋達か....マジでぶっ飛ばそうかな」とボソっと頼もしい発言をしながら横の壁に持たれ掛かり、手に持ったコンビニ袋から缶ジュースを二つ取り出して一つを俺に渡してきた。
「お!ありがと。てか亮太と理香は首突っ込まなくていいからな」
そう言いながら二人に忠告すると、理香がバックから消毒液と絆創膏を取り出しながらムスッとした様子で「友達が虐められてるのいい加減無視できないんだけど」と怒り、亮太も同じようにムッとしながら頷いた。
いや....まぁありがたいんだけど。
でも二人にはどうしても手を出して欲しくない。
「でも、来月には全国大会だろ?こんな事に巻き込まれて欲しくないって」
理香は剣道部、亮太は空手部のエースだ。
それも全国大会に出場するレベルの....だから友達として巻き込まれて欲しくない。
そんな希望があっても、俺が酷い苛めを受けているのを見過ごすのが嫌なのだろう。
こうして、俺が授業をサボっている時は、いつも自分達もサボって一緒に話す。
小学校からずっと一緒に居る幼馴染だからこそ、俺の真意も分かっているから、我慢してくれている。
まぁ、何回かキレて俺を虐めていた人に知らない所で喧嘩した事があるみたいだけど。
「それを言うなら拓海だって頭良いじゃん!亮太みたいに脳筋じゃないし....亮太の方がカッコいいけど」
「そうだぞ!成績良いし運動神経は悪くないだろ。こんな事が無ければ可愛い彼女だって出来ただろうし....理香より可愛い人は居ないけど」
これである。
二人とも彼氏彼女、それも小学校からずっと付き合っている。
それにバカップルなのだ....人前で堂々とキスする程に。
今現在も手当が終わった途端に二人で抱き合ってキスしてるし...。
「目の前でキスするの止めてくれ....つーかなんで俺達クラス違うのに、毎回俺がこの教室に居るの分かるんだ?エスパーなの?」
「ん?いや普通に時間割見ればわかるだろ?」
「楠木の授業だけ何時もサボってるじゃん」
あ、そういう事か。そりゃ分かるか、折原先生から楠木の事は聞いてるだろうし。
今迄クラスが違ったから、楠木の暴走を知らないと思っていたけど二人が気付かない訳ないか。