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騒動

興味なんてなかった。

戦場にいたあの頃は、目の前のやるべきことに精一杯で、周りのことなんて目に入らなかった。明日には無いかもしれない命を、どう繋ぐか。そんなことばかり考えて生きた。だから、それ以外は興味なんて感じることもなかった。分からなかったのかもしれない。

傍にあったのは、鈍く光る鉄の塊と弾丸。聞こえないノイズが頭から離れない。ソレを消すために俺は銃口を向ける。クリアにしたい。このノイズを。それだけだった。












狭い部屋にいた。いや、半ば強制的に収容されている。中央に一人分の机と、相対するように置かれた二つの椅子。入り口にはひとつの机と椅子。俺は中央に居て、目の前には中年のいかつい男。入り口にはもう少し若めの男。もしかしなくても事情聴取だ。

「リリル・フェレット二十六歳。いや、今日で二十七か」

目の前の男が淡々と俺の経歴を読み上げる。

「とんだ誕生日だな。最近まで軍隊に在籍してたのか。なら、銃器の扱いには精通してるな」

数時間前、この街の中央で大きな爆発が起きた。俺はたまたま旅の途中に立ち寄ったこの街で、攻性魔法(アンクリア)攻性魔具(バッド)を持った者を片っ端から捕まえて聴取している地元警察に捕まったわけだ。

「正直こんな雑な聴取で犯人を捕まえられるとは思っちゃいない。だが、これが俺らの仕事でな。それで、もう一度聞く。お前はこの街に何しに来た」

昨日から続く同じ質問、同じ返答の繰り返しだ。正直飽き飽きしていたところだが、俺の発言に矛盾が無いかの粗探しだろう。何度目かの同じ返答を俺は繰り返す。

「俺はこの街を抜けた先に用事があるが、その前にバイクの燃料が底をつきそうになったから立ち寄った。時刻も夕方だったから、宿に泊まり明日にでも立ち去るところだったんだ」

「前の街には給油所はなかったのか」

中年刑事の眉間の皺が深まる。

「あるにはあったが、そこから二百㌔以上も走らせてきたんだ。燃料も底が見える」

刑事の視線は、俺の目の奥にある思考を読み取るかのように見据えながら、少し考えるように喉を鳴らした。

「まぁ、こちらとそんな証拠があるわけでもない。現場からは大量の魔法反応(ノイズ)が検出された。複数名の犯行と考えてる。お前さんを捕らえたのも、爆破された給油所を攻性魔具(バッド)を持ったやつが利用したってタレコミがあったからだ」

中年の男はそう言いながらポケットからタバコを出すと、ソレを咥える。しかし、何かに気づくかのように顔をしかめると、舌打ちしながら火を点けずに折った。

「いいか、俺はそんな人殺しの道具なんざ振り回してる奴なんざ信用しないことにしてるんだ。何か急ぎの用事があったんならすまねぇが、しばらく容疑がはれるまでここに留置させてもらうぞ」

両手を口の前で組んで俺に語る刑事の言葉は、抑揚こそ薄いものの、何か強烈な怒気を孕んでいるようにも聞こえた。警察としての正義感だろうか、それにしては、あまりにも殺気が混じっているようにも思えた。

「まぁ、寝食がある程度しっかりしているなら、俺は問題な・・・」

そこまで言いかけると、刑事は俺の顔の前で手を振り言葉を遮る。

「と言いたいところなんだが、朝からお前さんに客が来ていてな」

「お客さん?」

「なんでも、世界有数の大財閥のご令嬢さんだとか」

嫌な予感、いや確信がした。

「ノイマン家って言えばそこらのガキでも知ってる名前だ。いったいどんな関係だ?」

「いや、まぁ、ははは・・・・・・」

ただの幼馴染なだけなんだが・・・・・・信用はされまい。世界最大の軍事産業を誇るノイマン家。先の大戦で世界の八割の人間がノイマン家の何かを使ったことがあると言われるくらいだ。終戦後各国の軍の縮小が決まった際には、民間の造船、医療、土地の売買など、あらゆるものに手をつけて、かつ成功させた商売上手な家である。そんな貴族みたいな出身のお嬢様と、一般的な平民の俺が幼馴染なんて言っても誰も信じてくれない。昔からうそつき呼ばわりだった。

悲しい記憶を甦らせていると、扉の外から騒々しい声が聞こえてくる。そのまま立ち去ってくれと祈るも虚しく、派手な音を立てながら扉が俺の背後で開く。

「早くリリルを解放なさい!さもなくばあなた達全員に私の権威を知らしめることになりますわよ!」

怒りを含ませたその言葉は、その場の全員を固まらせた。


メアリー・F(フリューゲル)・ノイマン

長い腰まである金髪をなびかせ、それに劣らないほど見るものを圧倒する真っ赤なドレス。大人しくしておけば、絶世の美女と称えられる端正な顔立ち。芯の通った佇まい。それと釣り合いをとるかのように、彼女は「可愛く言えば」おてんばであり、最近では俺の追跡者(ストーカー)と化している気がする。


権威を知らしめるとか言う彼女だが、普段はそういったことは一切しない。これは脅し文句なのだろう。ただ、登場が唐突すぎて、この場の全員が固まってしまっている。

「あら、リリルおはよう。早くこんな暗い場所からは出ますわよ」

おはようじゃない、国家権力には逆らわないという俺の信念もあるが、あまりに非常識な幼馴染の行動に、今までの所業もあってか、内蔵がキリキリと痛み出す。

ため息を出す間も無く、メアリーの後から紳士な老人と、浅黒い肌のメイドが入ってくる。

「これはリリル殿、ノイマン家に仕えていた者として、このような場所に宿泊される予定とは、いささか考えるモノがsりますな。早急に別の宿を用意していただかねば、このフォンゲルが黙っていませぬぞ」

女主人よろしく、場所を考えているのかいないのか分からない発言をする老紳士。


フォンゲル・マシュー

見事な白髪と白髭の紳士的な老人。その経歴はすさまじく、先の大戦において、ユルム大陸の伝説的な傭兵である。穏やかな口調とは裏腹に、これまでに出た戦場の数はすさまじく、正確な記録が残されているのものでも数十。非公式な戦場も含めれば三桁になるといわれている。

終戦後は、人知れず退役し、ノイマン家に仕え、メアリーの執事兼格闘術の師範になっている。

「百の武器と百の技があれば無限の力となる」が彼の信念らしく、彼と試合した際に、俺はスリッパでボコボコにされた。


「まったく、リリ(にぃ)は事あるごとに厄介ごとばかりもってくるねぇ」

もう一人の浅黒い肌のメイドが、やれやれとわざとらしく両手を上げて俺をたしなめる。


ルシュカ・ヘイトマン

幼い頃にノイマン家に引き取られた戦争孤児。その頃からフォンゲルに教育され、

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