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携帯ショップの女

 「はあ、ついてないぜ」


 俺は深くため息をつく。先月買ったばかりの最新型スマートフォン。俺が手に取っているそいつの画面は、何本ものひび割れの白線で切り刻まれていた。


 「畜生、スマホでエロ動画なんか見るんじゃなかった」


 ベッドに寝転がり、左手でスマホを持ち、右手で激しくピストン運動をする。それが俺、板橋淳也が独自開発した至高のオナニースタイルである。だが、昨晩致している最中に左手が滑り、ベッドからスマホを床に落としてしまった。その結果がこれだ。実に情けない。

 そんなわけで、高校の授業を終えた俺は最寄り駅の近くにある携帯ショップに向かっていた。友人から聞いた噂によると、修理費はかなり高くつくらしい。しばらく節約が必要になりそうだ。


 「いらっしゃいませ、お客様」


 受付で俺を出迎えてくれたのは、携帯会社のユニフォームを纏った綺麗なお姉さんだった。きわどいミニスカートから覗く太ももが眩しい。栗色のショートヘアに、真珠のような丸い目。歳は俺より4つか5つほど上だろうか。端的に言って美人だ。そう言えば、昨晩見ていたエロ動画の女優にどことなく似ている気がする。その女優は確か、赤井うみという名前だった。

 俺の前に座っているお姉さんは赤井うみかもしれない。そう考えると実に興奮するシチュエーションだ。しかし、今の俺はスマホを直してもらいに来たのだ。ちゃんと修理の依頼をしなければいけない。


 「じ、実は携帯の画面を割ってしまいまして」

 「かしこまりました、こちらにお渡し下さい」

 「あ、はい」


 俺はお姉さんに携帯を差し出す。


 「暗証番号を教えてください」


 その時俺の背筋に悪寒が走った。そのスマホの暗証番号は、俺にとってのそいつの主用途と見事に一致するものであったからだ


 「ぜ…0721です」


 赤面しながら俺は回答する。だが、次の瞬間予想だにしない反応が返って来た。


 「(オナニーっと…)」


 俺はお姉さんが小声でつぶやくのを聞き逃さなかった。俺は意を決して先刻からの疑問を投げかけた。


 「失礼ですがお姉さん、何か他にご職業は」

 「はい?」

 「いやその、映像関係で何か心当たりは」


 その瞬間、俺はお姉さんの表情が微かに変化したことを見逃さなかった。


 「映像関係…?いえ、そんなことは」


 赤井うみはぎこちない作り笑いで答える。だが、俺には分かる。その表情は、昨晩俺を狂わせた赤井うみにそっくりなのだ。なんとしても、確実な証拠を突きつけてやりたい。俺はおもむろにテーブルに置いてあるスマホに手を出し、お気に入り欄に入っているエロ動画のリンクをクリックした。


 「アッ、アッ、アッ、アッ、アーンッ!!」


 二人きりの店内に、赤井うみの絶頂ボイスが響き渡る。白線に切り裂かれた画面の中で、彼女のみずみずしい肉体が踊っている。これでノーリアクションというわけにはいくまい。だが、彼女の反応は予想外のものだった。


 「お、お姉ちゃん…!!」

 「へ…?」

 「これ私のお姉ちゃんです!半年前から行方不明になってて!私はお姉ちゃんを探しに東京まで出てきたんです!この動画はいつ、どこで撮影されたものですか!?」


 どうやらお姉さんは赤井うみの妹だったらしい。俺は彼女に知っている限りの情報を伝えた。お姉さんはショックを受けた様子だったが、俺に感謝の言葉を告げてくれた。

 その後、担当の人によってスマホは無事修理された。修理代金は1万2000円にのぼった。その晩俺は、赤井うみのスカトロ動画で抜いた。


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