第5話
「まあ、そんなもんかな」
「そんなに手こずらなかったけどな」
と、笑うあいりと斗真の二人。
確かに汚れとかそんな様子もないようなのでどれだけ平気だったことがわかる。
まあ、この二人のコンビネーションもかなり良いので相手する方は大変ではあろうが。
「みんなお揃いでそんなところで何してるんだ?」
「「あ、光一くん。 おはよう」」
「よっす、光一!」
「ちょっと、綾香! ごめんね、光一」
背後から聞こえてきた声に気づいて振り向くと通常の男子とくらべると細身の男子で体力は平均値にも格段に劣り、素手での殴り合いでは間違いなく負ける程。
顔立ちは整っている方で、黙っていればそれなりに女性受けがいい造形。
つぐみ達とは高一の時に出会った仲である。
彼の能力はいわゆるレアで元素なんてそうそう扱うのは難しいといわれている。
そんな彼の名前は久遠光一という。
「ああ、はよう。 鷹久は気にしなくていいさ」
「そう? それならいいんだけどね」
頷いてから鷹久に言って苦笑する光一。
綾香はいつもどおりなのが一番なのは誰しもが思っていることだ。
「あれ、歩美ちゃんはもう送ってきたの?」
「ああ、ばっちりな。 途中でレミアにあったんで歩美のこと頼みはしたけど」
つぐみの問いかけに光一は頷いて名前が表示されている靴箱に手をかける。
ちなみにこの学園の下駄箱はむき出しの下駄箱ではなくきちんと扉つきの下駄箱なのだ。
「彼女なら大丈夫だね!」
「まあ、天然なところあるけど、歩美には使い魔もいるしな」
ひばりの笑顔に笑って言う綾香も下駄箱に手をかける。
つぐみは苦笑しつつ、同じように下駄箱に視線を向けるて廊下に向けるが、そこにはすでに生徒会長もさきほどの男子達もいなかった。
「ぜえ、ぜえ……ひばり。 おいて行かないでよ」
「あ、ごめん。 和くん(汗」
「そうはいってもよ、いきなり秀久ともみ合いになって路地裏のバケツに頭を突っ込んだのはカズじゃん」
肩で息きしながら言う男子に気づいて謝るひばり。
それを聞いて眉をあげて呆れたように言う綾香に視線をそらす。
「まあ、そこまでにしなよ。 なんか言われて慌てたんだろうからさ」
「鷹久、なんだよ。 その顔はもしかして話の内容を?!」
宥める鷹久に詰め寄る和くんと呼ばれたつんつんと立った赤い髪の男子。
彼の名前は沢井和明といい、ひばりの幼なじみである。
彼がひばりに想いを寄せているのはひばり以外の全員が気づいていたりする。
「まあ、ちょっとだけね」
「い、言うなよ? ふりじゃないからな!」
苦笑する鷹久に和明は懇願していた。
それだけ他の誰かにいわれるのが恥ずかしいのだろう。
「お、これはもしかしてセーフか!」
「…………(ふにゃ~)」
と、ここで新たな人物が現れた。
身長は200cmくらいの大柄なようでいてそうではない筋肉質ではあるけど、それほどマッチョでもない。
短い黒髪を立たせ、後ろ髪を背中まで伸ばして首の後ろで結んでいる。
彼の名前はみんなの兄貴こと榊龍星といい、つぐみにとっては大切なお兄さんである。
「お兄ちゃん! 芹ちゃん! セーフだけど、ちゃんと起きれたみたいだね?
りゅーさんとせりかさんのおかげかな?」
目を丸くしながら首をかしげるつぐみ。
まあ、彼の肩にいる使い魔のおかげではあるのだろうことは予想済みである。
ちなみにそんな龍星に姫だきされているのは瀬川芹香といい。
つぐみが姉として尊敬している人物だ。
「ふんぬぅ!」
「かっか~♪」
ムキムキとポージングをとるのは龍星の使い魔であるりゅーさん。
本来は呼ばないかぎりは影の中にいるものなのだが、りゅーさん達は違うようである。
「やっぱり、一番の遅刻は秀久か?」
「いや、土煙をあげてこちらにきてるぞ」
光一のつぶやきに龍星は親指で後ろを示す。
視線を向けるとこの世の不憫は彼しかないという存在の上狼秀久とそんな彼に姫だきされている涼宮みなもがいた。
あの教師に追われながらこちらに向かってきているのはなぜだろうか。
この時のつぐみ達には理解できずにいたのだ。
「あ、あのさ。 なんか倒れている生徒達がいるように見えるのはなんでかな?」
「それは多分……こいつらのせいだろう」
つぐみの言葉に光一は親指であいりと斗真の状態と鷹久に持たれる綾香といまだに芹香を姫だきしている龍星と走り回る秀久とみなもの光景を示す。
それを見て納得するつぐみとひばりは苦笑を浮かべる。