閑話 同期生という仲
とある学園都市には一人の男の為に用意された研究所がある。
それ相応の功績をもっている生徒には用意されるのだが、この男のように用意されることはそう多くはない。
いや、会長である彼女ならばありえるかもしれない。
功績によって願いを上層部から聞かれてそれ通りに用意される。
願いを言わない人もでてくるかもしれないが。
今日も彼が魔術について研究していると、来訪者を知らせるチャイムが鳴る。
それに気づいた男は手を休めて受話器を手に取ると空中に透明なディスプレイが浮かび上がる。
そこにはローズピンク色の髪をポニーテールにした女子と黒髪のロングヘアーで赤い瞳の女子。
どちらも彼の同期生なのだが、一人だけちょいミスしたおかげで留年してしまったのだが。
まあ、黒髪の女子生徒は彼と同じクラスに在籍しているし、魔術に関して興味を示している仲間でもあるが。
「やあ、毎度毎度飽きずによく来るね」
『太助っちの様子を見に行くのは別にどうということもないのさ!』
『よく言うわよ、ここに来るまでにどんだけ迷子になっていたのよ』
男の名前は東城太助という。
ここ学園都市”紅凌学園”の高等部の3年生である。
ここにいる九条院響も本来なら彼と同じ3年生なのだが、なにをどうやればなるのか留年してしまったのだ。
その留年の理由が迷子ということでまったく困ったものである。
ちなみに八雲霜月はれっきとした太助と同じ3年生で、クラスも一緒である。
「響、君は変わらないね。 僕がなんど迷子になっている君を世話しているというのに」
『いや、迷路な学園都市がいけないんだとボクは思うんだよ』
『響の場合、どこでも迷子になるじゃない。 物理の法則を無視しているわよ』
太助は懐かしい旧友に会えてもべつだんなんの変化もない。
彼はまず会話を交わした上で信用できるかどうかで決めるのだとか。
響と霜月は信用できるかどうかというより同期としての腐れ縁みたいな立ち位置なのかもしれない。
「それより、なにしにきたのかな? 会話だけをしにきたというわけじゃないでしょ」
『さすが太助っち。 ボクらがそれだけのためにきたなんてこれっぽっちも考えてないよ。
まあ、実際そうなんだけどさ。 ボクとしては長年の溝をうめるために話をしたいくらいだけど』
『響は黙っててややこしくなるから。 とりあえず、中に入れてくれるかしら? 話はそれからよ』
太助の問いに響はにこにこ笑顔で笑いながら言うと霜月は呆れながら彼女を止めて、そう告げる。
すると、太助はキーボードを操作して扉を開けた。
空中へ浮かぶディスプレイモニターに映る響と霜月はそのままそのドアをくぐる。
「やあ、よく来たね二人共」
「ええ、今回ばかりはあなたにも言わないといけないからね」
「そうそう今回の噂聴いてるよね。 あれの件でちょっと相談したいんだよね」
太助は二人が広間のような広い部屋に入ってくると出迎えた。
霜月はさも頭が痛そうにそう言った。
響はというと太助にも情報が届いているだろうと予想しての相談だと告げる。
「違法使い魔と違法能力者の情報なら届いているけど、興味ないものだね」
「興味ないくらい予想の範囲内よ。まあ、それでも相談させてもらうけどね、今回はそいつのことでここに来たのよ」
「違法能力者はともかく違法使い魔のことは許しがたいことだよ」
太助は二人を椅子に座るように促すと彼女らは椅子に座る。
霜月はそういうと宙に触れるとブルーの透明な画面が広がる。
それは今回の事件についての詳細が事細かく記載されていたのだった。
「この男のように使い魔を道具のように扱う違法能力者は少なくない。 だけど、僕は使い魔はあくまでも相棒であるべきだと思っている。 まあ、僕の場合は強制誓約しているけど」
「同感ね。 偶発的に呼びこむ生徒も少なくはないわ。 あんたがはじめてというわけでもないしね。 先ほど述べたそいつらは道具だとしかそう思ってないから困るけどね」
「でもね、どんな使い魔でも必ず刺青が刻まれるものなのに。 この男はそれをなしにして使役してるのよ。 多分、どこかで手に入れた召喚石に刻んだんだと思うけど」
太助は目を細めて呆れたようにそう言うと霜月は同意して画面をスクロールして変えていく。
響はアタッシュケースから透明な石を取り出してそれを見せる。
違法使役するものは必ずといっていいほどこれを使用することはこの場にいる3人は知っている。
「その違法能力者は他人の意思その物が暴力か暴力の理由かでしかないけど、こいつの場合はかなり女子中心的な暴力みたいだね。 それにしてもこんなちゃちの玩具で制御できるなんてしかもそれで犯罪が成り立つなんてね」
「他人のことなんてどうでもいいからという理由で起こしているからね」
「早いとこ、こいつを捕まえて石の入手先とともにこの使い魔を解放してあげるべきだと思うんだけど
なかなか尻尾をださない、これはどうみたっておかしいことなんだよ」
呆れたように太助は石を持ちながらそう言うと霜月は被害の幅を見てため息をもらす。
響は目をほそめてそう言いながら次の画面へとスクロールして見せていく。




