僕の声を聞いて2
ちょっと前の僕の声を聞いての2作目です。ですので、先の「無印」もよろしくお願いします。
今日また友達が工場に入っていった。
(さようなら・・・。)
心の中でさようならを言う。これで残っているのはもう本当に僕ともう一人になってしまった。僕も、友達もいつ最期が来るかなんてわからない。分かっているのはまだ走れるということだけ。
「そんな黄昏ないでくださいよ。多分、その時は僕も一緒ですから。」
エレファントが口を開いた。
「黙ってろ・・・。」
そう言ったら僕の友達はため息をついた。
「うらやましいよなぁ。X兄さん。あれで子供の人気の的だぜ。俺たちもああなりたいよなぁ。」
「まぁ、俺たちにはもうない話だろうぜ。・・・機械でつぶされるのを待つしかないのかも。」
「怖いこと言うなぁ・・・。」
「実際間違ってないだろ・・・。」
するとどこからともなく汽笛が聞こえた。また僕たちの後輩が東京に向かって旅立っていくのだろう。目をやっていたけど、出て言ったやつが違った。この時間に出るとなると途中の岡山までかぁ・・・。
「宝の持ち腐れだよなぁ。あいつ。」
「確かに・・・。」
普段話している話題だ。最期が近づいてくる僕たちにはこんなどうでもいいことでも笑いを取りたいと思う。
「それは僕たちへの当てつけですか。」
「いや。そういう意味じゃないけど、そう聞こえたか・・・。」
こういうことを言い合えるのもあとほんの少しかぁ・・・。
しばらく日が経ったある日。僕にも最後の時が来た。残りは友達一人になるけど、仕方がないことだ。機械の宿命ともいうべきだろう。僕の中から最後僕を操った人が出てくる。その人は僕の目のところまで来ると目に手を置いてきた。
「今日でお前ともお別れかぁ。恐らく僕にはもうお前らを運転することはないだろう。ありがとう。そして・・・。」
(さようなら・・・。)
「俺が一番最初に運転したのもお前らだった。」
それからその人は涙をこらえながら、今まで走ってきたことを振り返った。そして最後に、
「じゃあな。今年が最後で本当によかったと思う。じゃ。・・・ありがとう。」
「こちらこそ。ありがとうございます。」
その人は振り向きもせずに遠くのほうへ歩いていった。
翌日。僕は目を開けなかった。後から来た友達の話によれば、その日は雨だったらしい。それは多分、僕で最後の運転手人生を締めくくれた人の涙だったと思った。
想像力は人間の証です。
MAIN TRAFFIC、彼幽探偵、列島縦断新幹線乗りつくしの旅もよろしくお願いします。