表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編

僕の声を聞いて2

ちょっと前の僕の声を聞いての2作目です。ですので、先の「無印」もよろしくお願いします。

 今日また友達が工場に入っていった。

(さようなら・・・。)

心の中でさようならを言う。これで残っているのはもう本当に僕ともう一人になってしまった。僕も、友達もいつ最期が来るかなんてわからない。分かっているのはまだ走れるということだけ。

「そんな黄昏ないでくださいよ。多分、その時は僕も一緒ですから。」

エレファントが口を開いた。

「黙ってろ・・・。」

そう言ったら僕の友達はため息をついた。

「うらやましいよなぁ。X兄さん。あれで子供の人気の的だぜ。俺たちもああなりたいよなぁ。」

「まぁ、俺たちにはもうない話だろうぜ。・・・機械でつぶされるのを待つしかないのかも。」

「怖いこと言うなぁ・・・。」

「実際間違ってないだろ・・・。」

するとどこからともなく汽笛が聞こえた。また僕たちの後輩が東京(とうきょう)に向かって旅立っていくのだろう。目をやっていたけど、出て言ったやつが違った。この時間に出るとなると途中の岡山(おかやま)までかぁ・・・。

「宝の持ち腐れだよなぁ。あいつ。」

「確かに・・・。」

普段話している話題だ。最期が近づいてくる僕たちにはこんなどうでもいいことでも笑いを取りたいと思う。

「それは僕たちへの当てつけですか。」

「いや。そういう意味じゃないけど、そう聞こえたか・・・。」

こういうことを言い合えるのもあとほんの少しかぁ・・・。

 しばらく日が経ったある日。僕にも最後の時が来た。残りは友達一人になるけど、仕方がないことだ。機械の宿命ともいうべきだろう。僕の中から最後僕を操った人が出てくる。その人は僕の目のところまで来ると目に手を置いてきた。

「今日でお前ともお別れかぁ。恐らく僕にはもうお前らを運転することはないだろう。ありがとう。そして・・・。」

(さようなら・・・。)

「俺が一番最初に運転したのもお前らだった。」

それからその人は涙をこらえながら、今まで走ってきたことを振り返った。そして最後に、

「じゃあな。今年が最後で本当によかったと思う。じゃ。・・・ありがとう。」

「こちらこそ。ありがとうございます。」

その人は振り向きもせずに遠くのほうへ歩いていった。

 翌日。僕は目を開けなかった。後から来た友達の話によれば、その日は雨だったらしい。それは多分、僕で最後の運転手人生を締めくくれた人の涙だったと思った。


想像力は人間の証です。


MAIN TRAFFIC、彼幽探偵、列島縦断新幹線乗りつくしの旅もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ