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岸壁が遠ざかる

作者: そのかぜ
掲載日:2026/10/25

フェリーターミナルの待合室。

ベンチがいくつも列をなして鎮座している。

私は、窓際の席に腰を下ろした。


窓からは海が見える。

その海は、私がこれから旅する海。

穏やかではあるが、砂浜ではない。

鮮やかではないが、化学コンビナートでもない。

そんなフェリーターミナル特有の海だ。


蟻が巣に戻るように、フェリーへ列をなしてトラックが入り込んでいく。

ランプウェイを踏むたび、列車の走る音のようにガタンゴトンと重い音を鳴らしていた。


時間が流れ、次は私が乗船する番になる。

乗船口へ行き切符を見せ、屋根のある少し長い桟橋を渡る。


私の乗るフェリーは、大きい。

甲板は鋼鉄でできているのか、歩くとコツコツと硬い音が鳴る。

ロビーは広く、エレベーターもある。私は6階の部屋だ。

このフェリーは4階まで車が乗り込む。そんな大型船。


程なくして、宿であり乗り物でもある部屋に入る。


私の部屋は、雑魚寝をする大部屋だ。

同じようにフェリーで移動する人たちと共同で利用する。

ベッドもなく、薄いシーツのような敷布団があるだけ。

そんな安価な部屋が、これからの旅のワクワク感を湧き立たせてくれる。


身支度をいくらか済ませ、再度甲板に戻った。

フェリーは出発するらしく、汽車とは相容れない低い汽笛を鳴らす。


タグボートが集まり、次第に岸壁から離れていく。

私のいた地面は、私の動かぬところで離れていく。


船の大きなエンジンがうねりを上げる。

その振動は、甲板から足へ、足から体全体へと伝わってくる。


フェリーは、波をかき分けながら進むのだった。

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― 新着の感想 ―
初めまして ていねいに描写していると思いました。 具体的な地名があった方が、よりリアルになるかな
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