魔法の鏡さん
「真実を告げる魔法の鏡よ、世界で一番美しいのは誰だ?」
『はい、王様。それはあなたのお妃である王妃様です』
いつもと同じ答えを聞いて、王様はほっと胸をなでおろしました。
というのも、王妃様はそれはそれは美しい人だったのですが、その分嫉妬がとても激しくもありました。
そして自分より美しい者がいると知ると、それが誰であっても排除しようとする悪い癖があったのです。
王様は王妃様を大切に思っていましたが、その悪い癖だけはずっと悩みの種でした。
しかし、その日は鏡の答えがいつもと少しだけ違いました。
『……ですがあと数年もすると、あなたたちの娘である王女様の方が王妃様より美しくなるでしょう』
それを聞いて王様は大変驚き、悩みました。
王妃様であれば、たとえ実の娘であろうと、自分より美しい者を放っておかないはずだからです。
「一応聞くが、魔法の鏡よ。お前は嘘をつくことはできないのか?」
『はい、王様。それは無理です。嘘をつくと私は途端に普通の鏡に戻ってしまいます。それに聞かれれば答えないわけにもいきません。ですが、聞かれていないことを黙っていることならば可能です』
王様はその答えを聞いて、難しい顔で何事か考えながら鏡の前を立ち去りました。
そして数年後、ついにその日がやってきました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰です?」
『はい、王妃様。それは……王妃様です』
それを聞いて王妃様はいつものように気分を良くし、足取りを軽くして立ち去りました。
その様子を陰から見ていた王様は、たくらみがうまくいったことを確信しました。
「どうやらうまくいったようだな。王妃は鏡がどこの国の王妃のことか言わなかったのに気づかなかったようだ」
王様はこの日のために、まだ若い王女様を他国の王様と結婚させたのでした。
「王女には多少悪いことをしたが、なに、形だけの話だ。王女が別の者に正式に嫁ぐときには離縁させればよいのだから。それを先方に納得させるのには少々骨が折れたがな」
『王様って一番偉い人のはずなのに、ほんとう気苦労が絶えないですよね』
どうしても本音を隠せない魔法の鏡は、心から王様に同情して言いました。




