バイバイ
「それ舞由のうさぎさん・・・・・・返してっ!」
舞由はあの子の前に跪いて、お気に入りのうさちゃんを返してもらえるよう頼んだ。
あたりは黄昏の色一色に染まっていて、舞由という少女ははやくおうちに帰って温かいシチューを飲みたかったのだ。
でも、ここでうさちゃんを諦めてしまっては、夜ぐっすりと眠れない。
少女はまだそのくらいの齢。
「やーだ。もう近付かないでっ!さぁ、いきましょアキちゃん」
あの子は舞由の大親友だったアキちゃんを盗んだ。
アキちゃんは物心ついたころからの友達で、ちょっとわがままだったけどいい友達だった。
それなのにあの子をとった。おまけに大事にしていたうさぎのぬいぐるみまで・・・・・・。
「ちょっとぉ、返してあげようよーぅ」
アキちゃんはやっぱり友達思いだ。
舞由のことをちゃんと考えてくれてる。
でも、あの子はガンコで・・・・・・誰よりもわがままだから――。
「こうしてあげるっ!」
夕暮れの公園の砂の温泉の中に、薄い桃色のうさぎの縫い包みが浸っている。
泣いても仕方がないと少女は立ち上がった。
帰るあの2人の子供の背中をおもいっきり押してやりたかった。
でも、うさぎの縫い包みの瞳をのぞくと「大丈夫」と言っているようだった。
そんなことを考えながら独りでどろんこあそびをする。
大粒の涙をぬぐったため、幼い顔は砂で汚れていた。
「あぁ・・・うっ・・・うぅぅ・・・」
うさぎさんは無残な姿となっていた。
首からきれいに捥ぎれてしまっていた。
家に帰れば温かい夕食と、手術をしてくれるお医者様だっているはず。
だけど、今は最高に悲しみのどん底へと落ちている真っ最中。
開き直る気もさらさらない。少女はさっきまでうまっていた穴にもういちどうさぎをうめた。
「ごめんね・・・・・・バイバイ・・・・・・」
紫とピンクでできた幻想的な天井の下、少女はうさぎに別れを告げて公園を後にした。
うさぎを生き埋めにしたことはママには内緒にした。
ママに気づかれぬ間、いそいで洗面所に駆け込んでどろまみれの手と顔を洗った。
一応、ホラー小説にするつもりです。
たぶん、それほど恐くないかもです。
なるべくエログロは避けようと思ってます。
すぐグロテスクなのを入れたくなっちゃうんですが・・・自重します。