第四十一話 鉄級VS白金級
「こ、これは一体どういうことだ!!!!」
アンバートは慌てて馬車から出ようとして、重心を崩して顔から地面に突っ込んでしまった。
しかし、彼は顔の痛みは気にせず、すぐにエルフとウィニエスの後ろに逃げ込み、震えながらウィニエスの服をつかんだ。
エルフとウィニエスは突然現れたジャクシスを見て、緊張した表情で手に持っている武器を握りしめた。
「ウィニーちゃん。その男、雰囲気がヤバイ……さっきの盗賊たちとは全然違う!」
「私も感じます……彼の圧迫感はアンゴアとは比べ物にならない別次元です…おそらく白金級の冒険者……」
「こ、これが白金級の冒険者……へロ君なら大丈夫だよね!?」
「今はへロさんを信じるしかありません……もし彼でも敵わないなら……私たちも逃げられないかもしれません。」
間違いなく、目の前の男は白金級の冒険者だ。
今の一撃と彼から漂う圧迫感だけでも、この男はさっきの雑魚たちとは段違いだ。
「お前は俺様があの盗賊団を築くのにどれだけの時間をかけたか知ってるか!!一瞬で……たった一瞬で全て台無しにされた!三人の元金級冒険者でさえあっさり殺されたのに、お前は鉄級冒険者だと言うのか?冗談じゃない!!!」
「僕の一番の長所は正直者であることだ。信じるか信じないかはあなたの自由だが、あなたはそれを確かめるためにここに来たんじゃないか?」
「もちろん……お前が俺の手下になる気がないなら、お前を殺す!!」
男は一瞬でその場から消えた。
僕はそれが瞬歩の効果だとすぐにわかったが、彼の瞬歩の技術は明らかに上級で、彼の速度には追いつけない。
次の瞬間、彼の巨剣が僕の頭に向かって振り下ろされる──
要害回避発動。
要害回避には発動の条件がある。
直接急所に命中しない、かつ致命的な攻撃でなければ、このスキルはまったく発動しない。
そして発動後はある程度のクールダウン時間があり、連続して使用できるスキルではない。
この自動発動型の被動スキルで、僕は素早く一歩後退した。
巨剣が僕が立っていた場所に振り下ろされ、強力な衝撃で土が飛び散った。
スキルの発動は正しかった。
もし僕がこの一撃を剣で防ごうとしたら、僕の剣はきっと折れて、僕は粉々になっていただろう。
だが、こんな重たい剣で次々に攻撃を繰り出すのは困難なはず。
彼が剣を持ち上げる前が僕の最大の攻撃のチャンスだ──いや!!!
僕は男が顔に笑みを浮かべているのに気付いた。
彼は一瞬で僕の右側に移動した。
彼の動きに合わせて、大剣も引っ張られて僕の腰に向かって振り下ろされる。
僕はすぐに瞬歩を発動して横に一歩動き、なんとか腰から真っ二つに斬られることを免れた。
剣を振り下ろした後、男は巧みに剣を再び肩に持ち上げ、剣を振るう姿勢に変えた。
ソロモンキングは発動しなかったということは、これは明らかにスキルではなく、単なる戦闘技術だ!
このような技術は、攻撃の後隙を完全に補うだけでなく、連携によって相手を制圧することができる……
これではいけない、このままでは攻撃のチャンスがまったくない。何とかしなければ!
だが……クソ、どう考えても、僕の攻撃は彼にダメージはおろか、かすりすらしない!
どんな攻撃も彼に阻まれ、しかも剣が折れないように注意しなければならない!
これがガイアが言っていた危機か!?
こいつは明らかにさっきの奴らよりもずっと厄介だ!
超神速のおかげで、僕は熟考することができる。
超神速で男の動きを何とか読むことができるが、反撃の方法が見つからない。
男の攻撃はあまりにも多様で、技巧性の高い攻撃やいくつかのスキルを組み合わせた攻撃がある上に、攻撃の間にもスキルを使ってくる。
すべての動きが非常に滑らかで、本当に隙が見当たらない。
「おい、おい、ずっと回避しているだけでは意味がないぞ。どうせ死ぬのだから、抵抗を諦めるべきだ!!!」
「それなら、僕に攻撃なんかしないで、武器を下ろして素直に降参したらどうだ?」
男は明らかに余裕があり、攻撃しながら話しかけてくる。
僕は攻撃を回避するだけでも十分に苦労しているが、自分がまだ余裕があるように見せかけるために一生懸命返事をする。
「だが安心しろ!俺様はお前をすぐに殺しはしない、まずは四肢を切り落として、お前を死なせずに、人質として利用する!そうすればあの巨乳エルフと貴族娘はすんなり俺様の言うことを聞くだろう!あぁ、もう巨乳エルフと貴族娘を味わうのが楽しみだ!」
「そのことは心配いらない!あなたにそんなチャンスなんかないからだ!」
しかし、今全力を出し尽くさないと、エルフやウィニエスが危険にさらされる。
イスタの様子を見ると、女性冒険者にとって最悪なのは死ではないこともある。
彼女たちが彼に遊ばれるのを防ぐためにも、僕は目の前の男に絶対に勝たなければならない!
そう思ってはいるが、僕には手立てがない。
いや、違う、手立てはある。
しかし成功させるのは困難で、しかもチャンスは一度きりだ。
攻撃を回避し続けているだけでも、体力が徐々に奪われていくのがわかる。
ジャクシスは自分の勝利を確信している。
数十回の連続攻撃を繰り出したが、この程度の動きでは彼にとっては体力の消耗にならない。
だが、攻撃を回避し続けるヘロに対して、ジャクシスは自分の判断が間違っているかもしれないと疑問を抱き始めた。
いずれにしても、ジャクシスはヘロを白金級冒険者だとは考えていない。
ヘロが彼の金級の手下を簡単に倒したことは事実だが、本物の白金級冒険者ならばここまで一方的になることはないだろう。
重要なのはステータスとレベルの差だ。
ジャクシスのレベルは47だが、ヘロのレベルはたったの10だ。
レベルで生じるステータスの差は大きく、ジャクシスはいとも簡単にヘロを倒すことができる。
それだけでなく、戦闘経験の差もある。
ヘロはこの世界に転生して間もない。
サイクロプスを倒したり、アローン狼の群れと戦ったり、ゴブリンジャイアントを倒した実績はあるが、相手はただの「魔物」だった。
魔物は経験を積むことができないが、人間はできる。
ジャクシスが白金級の冒険者になれたのは、その経験がヘロの数十倍、あるいは百倍以上だったからだ。
しかし、ヘロはまだ耐えている。
ヘロの強みは神から授かったスキルと豊富なゲーム経験だ。
そうだ、ヘロは考え方を変え始めている。
彼は目の前の戦闘をアクションゲームとして考え始めた。
彼はダメ人間として、唯一誇れるのはあらゆるタイプのゲームに精通しているということだ。
それは孤独が故磨かれた技術だ。
友達も彼女もおらず、彼は二次元の世界に没頭するしかなかった。
その中で、ゲームは彼が最も得意なこと。
彼はさまざまなタイプのゲーム経験があり、その中でもアクションゲームとストラテジーゲームが最も好きだ。
トッププレイヤーとの距離はまだあるが、並のゲームプレイヤーにとって彼は上位であり、先端を行くプレイヤーだ。
これが彼が迅速にスキルを選択できる理由だ。
これがプロメテウスの言う、「平和な世界では発揮することのできない才能」なのだ。
これ以上は無理だ…体力がもう持たない……
クソ!手段はひとつしかない、どう考えても他の方法は行き詰まりだ!
もしこれ以上回避し続ければ、隙を見せてしまうのは時間の問題だ!
だから今は賭けるしかない!
チャンスは一度きりであり、失敗すればもう手はない!
突然、ヘロは足を止めた。
その後、左足を少し緩めると、全体の重心が右に傾いた。
「ハハハハハ──!!!!やっと止まった、すばしっこいネズミのような奴め!!これで終わりだ!!!!」
「ヘ、ヘロ君!!!」
「ヘロさん!!!!」
ジャクシスは得意気に手に持った巨剣をヘロの肩を目掛けて斬りつけた。
彼にとって、ヘロは明らかに重心が不安定だから止まったのだと思っていた。
しかし、剣を振り下ろす瞬間、彼はすぐにヘロの笑顔を見て、異変に気づいた。だが振り下ろした巨剣はもう戻ってきない。
「ファイアボール!!!」
ヘロはファイアボールをジャクシスの顔に打ち込んだ。




