第三話 転生
神達の対話から判断すると彼らが賭けた内容はおそらく僕の転生後の死に方。
「事故死」か「自然死」かだ。
ガイアは僕が自然死することに賭けて、ウラノスは僕が事故死することに賭けているようだ。
プロメテウスはおそらくこの賭けに参加していない。
彼の発言と表情はギャンブラーのようには思えず、ガイアとウラノスとは全く違う。
そして、さっきの会話から彼らは過去に失敗した経験があるのは明らかだ。
前に送り込んだのは僕よりも優れた能力を持つ人間だったが、早く死んでしまったため、今度はガイアが主導者だ。
一生隠れているだろうと考えるくらいの無能な存在を見つけて賭けに勝とうとしているようだ。
彼女の推論は正しい。
僕だったら確かに隠れる方法を模索するだろう。
しかし、自分の不運な人生に立ち向かう。
そして死後も神達の賭けのために頑張らなければならない。
これほど不幸な人生はない。
ふざけんな!
僕の人生をおもちゃにされるつもりはない、クソ神達め!
あぁ、かわいそうな子よ。
あなたの才能はこのような状況で初めて引き出されるものです。
元の世界はあなたには合っていませんでした。
あなた持っている才能は平和な世界には適していませんでした。
あなたの才能は、きっと挑戦の中で輝きます!
僕はガイアやウラノスの意向に従うつもりはない。
ましてや、この賭け事の実験台にされるのも嫌だ。
しかし、今の僕には選択肢がない。
転生を拒否するのはウラノスの計画を受け入れるのと同じだ。
だから、最も合理的な答えはおそらくーー
「転生を受ける。」
「やった!」
「クソ!」
今はガイアに従っているが、いずれは僕のことをクズと見なすウラノスに反撃する。
「でも、僕は絶対におとなしく隠れるつもりはない。どこかの隅で生き延びるなんてこともしない!」
「ガイア、貴様は裸で走るを準備してろ!ハハハハハ!」
そして、カイアに反撃する。
誰にも従うつもりはない。
今は中間に立つだけで、両者の勝敗がつかない状況が僕の勝利だ。
今一番良い選択は生き残る可能性がある状況で賭けを乱すために全力を尽くすことだ。
もし異世界であれば、この賭けを完全に破壊する方法があるかもしない。
簡単に言えば『死なないこと』だ。
事故死でないなら、ウラノスの負けだ。
自然死でないなら、ガイアの負けだ。
だから一番良い結論は永遠の命を手に入れることだ。
そうすれば、ガイアとウラノスの両方に負けることはない、それが僕の勝利だ!
まずい、プロメテウスは僕の考えが分かるんだ……
緊張してプロメテウスの方をそっと見たが、プロメテウスは微笑みながら目を細めるだけで、僕はほっとした。
「ウラノス、あまり得意げになるなやん!この状況を防ぐために、あたしは既に準備してたやん。」
ガイアの言葉と共に、僕の周りには数え切れないほどのタロットカードのようなカードが現れた。
カードの色は5つで、金、紫、青、緑、白だ。
この色分けは非常に直感的で、正確に言えば僕の生前のゲームデザインと同じだ。おそらくS、A、B、C、Dのランクに対応している。
「貴様、彼にスキルを与えるつもりだの?」
「もちろんなことだやん!前にも言った通り、何もしなかったから送り込まれた人達が早く死んだのではないの?」
「貴様!それはめちゃくちゃだ!全部彼に与えてしまったら彼は死なないぞ!それでは全く面白くない!」
面白いか…..このクソ神達の目には僕の人生は面白いかどうかの違いしかないんだな。
「全部与えても問題ないやん。神と同じ力を授けるわけでもないし、何が問題なの?」
「神と同じ力の問題じゃない!彼は死なないからこそ問題なんだ!せめていくつか強力なスキルを取り除くべきではないのか?そうでなければ賭けが成立しない!バカが?『永生』と『不死の体』が混ざっているぞ!もし彼が完全に死なないなら、どうやって勝者を決めるつもりなんだ!」
「……あたしのIQをお前と比べないでくれやん!」
やっぱりこんなスキルがあるんだな!
僕は消えゆくカードをちらりと見た。
「不死の体」、「神の体」、「命の泉」そして最も重要な「永生」。
「これで十分でしょ?賭け事に影響を与えるスキルはすべて取り除いたやん。」
「それに、すべてのスキルを彼に与えてはいけない!3つのスキルだけだ!」
「3つって少なすぎない?ウラノス、いい加減にして!」
「いい加減にするのは貴様の方だろう!全部与えると彼は簡単に世界最強になるぞ!最強だと寿命の終わりまで楽に生きられるから、不公平だ!」
「150種、それでいいやん。残りの1546種のスキル、全部の10%も与えてないし、それで公平でしょ?」
「3つ!それが受け入れられる最大限だ!さもなければ、賭けはやめだ!面白みが全くない!」
「それはあまりにも大げさじゃない?100種!」
「3つ!」
「50!」
「3つ!」
「……10!」
「3つ!」
「お前本当に面倒くさいやん!3つね!3つ!でも、先天スキルは含まれない!そして、彼は途中で新しいスキルを習得することができやん!これがあたしの受け入れられる最低限やん!」
僕の意にぴったりだ!新しいスキルを学べるならそれでいい!
「もう一つ!彼に与えるスキルは全部がSランクはダメだ!各色に最大一つまでだ!」
「お前のルールは本当に多いやん!これでいくなら、あたしは賭けをしない!どうぞ好きなようにして!」
変だな。
これは明らかに僕の人生なのに、自分で決定できず、クソ神達の意のままに従わなければならない。
これでは元の人生と何も変わらない。
「はいはい。俺のルールはこれまでだ。それから、貴様は理解しておけ。俺はただ俺たちの賭けが公平になるにしたかっただけだ!不公平な賭けには楽しみがないだろう?」
「そうだけど…... あんたの言う通りにルールを定めるなやん。でも!これで最後よ!もう他に何も意見は言わないで!」
「もちろん、前に言った通りだ。俺のルールは二つだ。1つ目は与えるスキルは3つだけ。2つ目は各ランクのスキルは1つだけ選べる。」
「これで決まりだやん!」
両神はついに合意に達し、彼らが僕を見つめている時、僕は手を上げた。
「僕にも条件がある。受けないなら転生を拒否する。」
僕の言葉を聞いた途端ウラノスとガイアは明らかに驚いた表情をみせた。
僕の心の声をずっと聞いていたプロメテウスは微笑んだ。
「お前は...なんの条件?」
ガイアの表情からは緊張がにじみ出ており、一方のウラノスはゆっくりと口を開けて笑いってる。
僕の行動が彼に思いがけない娯楽をもたらしたのは明白だが、彼を楽しませるためではなく、単に自分の人生を自分でコントロールするための行動をとりたかっただけだ。
「スキルは自分で選ぶ。」
「待って、待って!これらのスキルをお前は知らないし、最適な組み合わせもわからないやん!ここにあるスキルの数を知っているの?先ほど取り除かれたカードを差し引いて、Sランク46枚、Aランク100枚、Bランク200枚、Cランク400枚、Dランク800枚ある!お前は一番良い選び方なんて知らないやん!」
もちろん、分かる。
スキルの数を見ただけでは、瞬時にガイアのように熟知することはできないのを理解しているし、僕のような凡人が最適な組み合わせを見つけるのは不可能だということも理解している。
しかし、それでも僕は自分の運命だけは他人の命を賭けて楽しむだけのクソ神達に委ねたくない。
だから、少なくともチャンスがあるなら、神達に対して小さな抵抗を試み、自分の人生を少しでも掌握する。
もしチャンスがあるなら、前のようにはなりたくない!
僕は絶対に他人に自分の人生の選択をされたくない!
「貴様面白いな!貴様がスキルを選ぶことを許可する!」
「お前……!」
「もしあなたが拒否するなら、僕は転生を拒否する。たとえ強制的に転生させられても、僕はすぐに死んでやる……!」
今一体何が起こっているの?
ぜんぜん思い通りにならないやん!
どうして!
やっぱりこいつは面白いな!
面白いことになりそうだ!
ガイアの思惑では召喚された人は神からの恩恵に感謝し、強力なスキルを得て転生するはずで、普通の人はそのように彼女の計画を受け入れるはずだった。
しかし、現在の状況は完全に予期していないもので、気付いた時にはウラノスの口車に乗せられ、彼女は目の前の人間に対抗する手段すら持っていない。
目の前の人間が転生を拒否する瞬間、彼女はその賭けに負けたのも同然だ。
「わ、分かった……お前は転生するためにこれしか選択肢がないなら、あたしはどうしようもない......」
「安心しろ。僕は簡単に死ぬことも、命を放棄することもしない。もし僕が本当にそんな簡単に諦める人なら、既に命を絶っている。」
これは本音だ。
人生が苦しみだけなら、どんな人でも耐えられない。
命を絶つことを考えなかったのか?
正直に言えば考えた。
いろんな死に方を考えたが、結局自殺しなかった。
勇気がなかったわけじゃない。
ただ負けたくなかったんだ。
そのように自殺するのは、運命に屈服し、僕を苦しめた人達に敗北を認めるのと同義だ。
僕はダメ人間だが、ダメ人間でも人だ。
誰もが負けること好まないだろう。誰であろうと最後まで粘り強く戦いたいと思うもので、持ち堪える限り戦い続ける。
だから、今回も同じだ。
僕は諦めないし、運命に再び負けたくない。
できるなら、今回こそ僕が勝者になりたいと願っている。
目の前には僕が長らく待ち望んでいたチャンスがある!
金色のスキルカードが僕の前に落ちるが、僕は頭を振る。
なぜなら僕はすでにどのスキルを選ぶかを決めているから。
「欲しいスキルはもう決めた。」
「ま、マジ!?お前もう少しゆっくり選ばないの?急いで決める必要はないやん!」
「クソビッチ、聞こえてないのか? 彼はもう選んだって言ってるんだ、喋るな!」
「僕が選ぶのは……」
何年も新鮮な空気を吸っていないし、こんなに鮮やかな陽光を見たり、風を感じたりするのは久しぶりだ。
普段はこんなに快晴の日にはオフィスに閉じこもるか、部屋にこもってしまうことが多い。
この瞬間、心の汚れがすべて洗い流され、完全に生まれ変わったかのように感じる。
同時に、僕は着ている服が、何日も洗っていないパジャマではなく、非常に質素で中世背景のRPGで見かけるような粗い布の服だと気付く。
そして、僕は舗装道路ではなく、砂利道に立っている。
これは歩行者が長い時間をかけて作ってきたもので、元の世界の田舎よくで見る道だ。
スキルを選んだ後、まばたきする間もなく、僕はここに立っている。
余分な説明も特別な手順もなく、異世界に転生するは、そのクソ神達にとっては息をするのと同じくらい簡単なことだと分かった。
余分な説明はないが、必要となる基本的な知識は次第に僕の頭に流れ込んでくる。
この世界に関する情報が徐々に明確になり、文字、文化、言語を含む基本的な知識の一部は数秒で大まかに把握できた。
急速な転生に適応できないことはなかった。
この世界の地理は地球とほぼ同じで七大陸と三大洋があり、名前以外はほぼ同じ地理的配置だ。
しかし、各方面の構成は僕が知っている世界とは大きく異なっている。
僕が現在いるのはアメリカ大陸だ。
地球で言えばアメリカ大陸の相対的な位置はアジア大陸だ。
ただし、アジア大陸のような統一性はなく、アメリカ大陸は多くの国がある。僕がいる国はファスト王国、目の前の町はハジメ タウンだ。
この世界には科学技術と呼ばれるものは存在せず、基本的な工業と電力は一部存在するが、あまり普及しておらず発展していない。
理由はこの世界が剣と魔法の世界であり、工業に比べて魔法の方がさらに便利であるからだ。
頭の中の知識を整理した後、僕は力強く息を吸い込み、そしてハジメ タウンの方向に向かって歩く。
僕が突然街中に現れるのを避けるために、神達は僕を町の外れに送った。
これは合理的な方法だが、長い間運動をしていない僕にとって、たった1キロの道を歩くだけでもかなりきつかった。
ハジメ タウンの入り口にたどり着いた時には、もう汗だくだった。
「身分ボードをご提示ください。」
町の門の前に到着した時、町の警備兵は僕を止めた。
身分ボードは身分証明書と同じだが、もっと簡素なものだ。
僕はすぐにズボンのポケットに手を入れ、手のひらサイズの木の札を見つける。
その札には、僕の頭の中に存在しない村と名前が書かれており、明らかにこれが僕のこの世界での名前と出生地であることが分かる。
「ヘロ・ブレイブ・セイファールか?」
衛兵は札の名前を見てから僕を見て笑う。
「……どうなさいましたか?」
「君はヘロという名前には見えないな。」
衛兵がそう言って、札を僕に返す。
僕は黙って彼のからかいを無視する。
「ヘロ」、この名前はこの国では「英雄」を意味する別の言葉だ。
僕は本当にこの名前を与えられたのはクソ神達の悪趣味だと思う。
彼らは口を開けば僕をダメ人間と言うが、それでも僕にこのような名前を与えたのは、ガイアが僕に期待しているのか、ウラノスが僕を皮肉っているのかは分からない。
僕は衛兵の言葉を理解できる。
僕はただの30歳のダメ人間だし、髭も生えっぱなし。
睡眠不足でできたクマやたるみ、死人と変わらないような顔になってしまった。
この顔は深夜にコンビニに行けば、人を驚かせるかもしれない。
もしそれなりのビール腹があれば、理想のダメ大叔のような姿になれたかもしれないが、残念ながら僕の給料ではビール腹を養うことすらできない。
影も見えないくらい平坦なお腹だけが残っている。10年前に趣味で鍛えたシックスパックもすっかり消えてしまった。
ハジメ タウンに入った後、僕はすぐにメインストリートに沿って目的地に向かう。
最初に行くと決めていた、冒険者ギルド。
僕はこの世界では家も土地もなく、あるものはポケット中の身分ボードと1枚の銀貨だけ、だから、まずは食事や宿の基本的な問題を解決する必要がある。
1枚の銀貨は100枚の銅貨に相当し、冒険者ギルドの入会費を50枚の銅貨として差し引いたら、残りの50枚の銅貨がちょうど1日の生活費になる。
つまり、今日中に冒険者ギルドのメンバーになり、少しお金を稼がなければならない。
おそらく神達には僕に1枚の銀貨しか与えなかった理由でもあるのだろう。
これは非常に不快だ。
まるで「どこに行っても彼らの支配から逃れることはできない」と言っているようだ。
しかし、クソ神達!
覚えとけよ!
いつか、クソ神達の支配から逃れてやる!
「新鮮な果物はいかがですか?ぜひご覧ください!今日採れたて新鮮の果物です!ぜひお買い求めください!」
市場ストリートに足を踏み入れると、賑やかな売り声が耳に入ってくる。
市場ストリートは非常に賑やかで、混雑しているわけではないが、すごくにぎやかだ。
多くの冒険者風の人々が市場街で必需品を購入しており、人間以外にも、ドワーフ、ハーフオーク、妖精、エルフなどのファンタジーの種族の姿が見られる。
僕、本当にファンタジーの世界に転生したんだ。
この瞬間、ようやく僕は実感した。
次の更新日は10/14(土)です。
どうぞよろしくお願いいたします。