第一話 ダメな僕は死んだ
30歳の男にとって、どのような成功があれは自慢できる?
それは人それぞれだ。
綺麗な妻がいる、できれば可愛いくて頭のいい子供がいる?
ある会社の幹部であるか、あるいは会社のオーナー?
ネットで活躍しているか、またはテレビで知名度がある?
研究分野で特筆すべき成就を持つ研究者?
千億円以上の資産を持つ大富豪?
どちらであっても、僕にとっては手の届かないことだ。
この世界には僕よりも成功している人が多い。と同時に、僕と同じ、「成功者達」の視点から見れば社会の底辺にいる人も多く存在する。
独身で財産が少なく、会社で基層の仕事をする。生活のために苦労して…いや、生活とは言えない。
僕の現状ではただ生きているだけ。
毎日の生活は仕事以外は何もなく、5坪の賃貸アパートでゲームをしたり、最近のドラマやアニメを観たりしている。友達と呼べる人もほとんどいなく、同じとうな毎日の繰り返し。
毎朝アラームの音で起こされ、不本意ながら体を起こし、嫌いな会社に行く。夜遅くまで働いた後、帰宅し、コンビニの弁当を食べながら当日のアニメやドラマをみて、その後深夜までゲームを楽しむ。最後に簡単に身支度を整えて眠りにつく。
意味のない生活。
正直で言えば、ただ空気を無駄にしているだけ。
でも、同じ底辺にいる人と違うのは、僕はより強い劣等感を抱いている。
本当に誇りに思えることがあるとすれば、おそらくこれだな。
誰より強い劣等感、僕はそれほどにダメな人間。
父さんは弁護士で、さらに有名な法律事務所のオーナー。
母さんは国内外で有名なファッションデザイナーで、多くの有名人が彼女のデザインした服を着ている。
一つ下の弟は医師で、現在は有名な病院で働いており、女性にも非常に人気がある。
五つ下の妹は英国で経済修士課程を学んでいるし、時々ファッション雑誌でモデルのアルバイトもしている。
まるでドラマやアニメの中に登場するような理想の家族だな、家族の背景を知る人は、僕を御曹司だとでも思うかもしれないが、実際にはそうではない。
遺伝子は繁殖の過程で稀に突然変異を引き起こすことがあり、生物学的にはごく普通のこと。
僕はその稀な突然変異の一例だ。
Fラン大学を中退したから、学歴は高卒だ。
中退の理由は特に大きなことではないが、単純に大学生活で楽しさや充実感を感じることが難しいくてリア充達「一緒に遊ぼう」の対象になった。
教科書が破られ、知らない間に奇妙な液体をリュックに入れられたり、自転車のタイヤが外されたり、いろんな奇妙な出来事があった。
小中高でも同じことがあったが、大学では中退の選択肢があった。
分からないな。
大学生は小学生、中学生、高校生と同じつまらないことが好きなのか?この環境でも僕は浮いてしまったため、離れることを選んだ。
大学を離れた後、さまざまな店で仕事をしたが、ダメな僕は基本的に何をやってもうまくいかず、どんな仕事でも同僚から批判され、上司からも批判された。
恐らく同僚達が僕の状況を上司に報告していたんだろう。結局僕は解雇された。
今の仕事を見つけるのは大変だったが、あっという間にここで5年働いている。
他人からはブラック企業と見られるかもしれないが、ダメな僕には他に選択肢がない。
大学の学歴がないため昇進の可能性はないことを知っていても、僕はこの会社を選んだ。
高卒と敗した職歴の関係で両親からは役に立たない子供だと非難され、順調に事が運ぶ弟と妹からも軽蔑されった。
家族からの侮辱に耐えかね、4年ほど自分で引っ越して一人で生活することを選んた。
最初は独り暮らしで解放感を感じていたが、年月にわたるブラック企業勤めにより、次第に現在の状況になってしまった。
それは口実のように聞こえるかもしれないが、自分には何の才能もないただのダメ人間だからどうぜ今の状況になる、僕は確信している。
社交や成功が少なく、本当に才能と言えるものは、おそらく小説をかくことができる。
書いた小説はネットで多くの人に評価されていること、これは少ないながらも小さな満足感を提供しているかもしれない。
毎週小説を更新し、最近のドラマやアニメ、ラノベ、漫画を見ることは僕が生き続けるための活力となっている。そうでなければ、おそらく5年前にはもう生きていなかったかもしれない。
どんなことをしても、心に余裕はあるけれども、実力が不足していると感じることがある。それは臆病ではなく、むしろ自分の無能さをよく理解しているから。
幼少期から無力感を感じ、そして5年前に愛情を奪われて、僕は何もかも守ることができないという確信をより強く持つようになった。
独身になってからもう5年です。僕のようなダメ人間が独身なのは当たり前かもしれないが、僕は現実の厳しさに負けてしまった。
僕の元カノ、名前も忘れてしまったが、SNSで知り合った女の子で、コスプレとアニメが好きな女の子だった。僕たちは半年間ほどお互いに楽しい時間を過ごし、オフ会で会ってから付き合うを決めった。
それはおそらく僕の記憶の中で最も幸せ時期だった。
しかし、そんな幸せもわずか3か月しか続かなかった。
ある御曹司が僕の元カノにしつこく迫った、彼女にブランド物や新しいコスプレ服を頻繁に贈った。
僕はそれがおかしいと感じながらも、喧嘩を避けてこの幸福を失いたくないと思って、耐えることを選んたが、結局彼女は僕を振った。
もちろん、僕を振った後、彼女はすぐにその御曹司と付き合った。
SNSにはセクシーな写真が投稿され、まるで彼らが交際してから1か月も経たないうちに関係が「もうやった」かのように見せかけられていた。
明らかに僕たちは3か月の付き合いで手をつなぐ程度までしか進展しなかったのに、彼らは1か月もしないうちにやった。
NTRじゃないかもしれないが、僕はNTRの感覚だった。
金の力は僕が想像していた以上に強力だ。
多分僕はあま過ぎる。
最初は愛情を選ぶと思っていたが、実際には金こそが最も現実的なものだと気づいたのかもしれない。
「金」は僕が考えられる唯一の理由、他の理由があるかもしれないが、僕は知らない。唯一しってるのことは付き合った時間は三ヶ月だったが、僕はまだ童貞だ。
学業運が悪い、恋愛運が悪い、仕事運も悪い。
会社では基本的な事務業務を担当しているが、仕事量はいつも夜8時まであった残業しなければならないほど多い。
立場が弱いため、どんなアイデアを持っていても、最終的には上司に重要視されないが、僕のアイデアは上司に盗用されて会議に提案される。そして社長に表彰され、上司が昇進の機会を得た瞬間、僕は仕事運もあまり良くないことを悟った。
家族に評価されず、愛に見捨てられ、会社に裏切られ。
そんな厳しい社会なら、自分にとって最も快適な方法を見つけて、この厳しい社会で何とか生き延びるしかない。
何かを変えたいと思っても、いつも「やめておこう」と考えてしまう。その理由はとても単純なことで、自分をダメ人間だと認識しているから。
努力しても何も変わらず、自分がさらにだめになってしまう可能性があることをよく理解している。
この世界で生き抜くための基本ルールは、自分を正しく理解することだ。
最終的には失敗する結末となることが多いかもしれない。
だから、最初から挑戦するエネルギーを無駄にせず、現状に満足して生きることが賢明かもしれない。
明日の太陽を見ることができればそれで十分だ。
小説を更新して、好きなテレビを見るができればもういい。
何も考えなくてもいい。
呼吸ができるだけでもういいんだ。
僕はたぶんこのまま死ぬ。
僕の仕事は基本的な事務作業だが、意外にもかなりの精神的エネルギーを必要とする。
残業代も含めた月給は約20万円程度しかありないが、仕事量は月給40万円の上司とほぼ同じだと感じている。
実際、僕は上司の代理人としての役割も果たしていた。
また、身分が高いために、上司は彼がやるべき仕事をほぼ僕に投ていた。
普段、上司の姿を見かけることはない。
僕は「上司は忙しい」と自分を納得させているが、実際には上司が会社にいない理由を知っていた。
彼は出勤中に愛人の小林さんと外出し、他人の視線には全く気にしない。上にとっては彼の仕事が完了すれば責める必要はない。
最低限の生計を維持できるこの仕事を保つために、僕は黙っているしか選択肢がなかった。
仕事の負担が大きいくせに給料は少ないから、もう疲れた。
家に帰るか休日になると、休むことしか考えられない。
だから僕は「生活」に対して非常に適当な態度をとっている。
良くないとは思っているが、仕事の後、僕は本当に掃除や生活品質の維持に余力がない。
ゴミは本当に歩く道がないところまで積み重ねていて捨てる暇がない。
食品の包装も、綺麗に洗えば異臭がすることはあまりない。
最低限の生活水準は維持することで、自分自身を悪臭のゴミ山に住んでいる状態にしないように気をつけている。
「あぁ、死んだな。」
独り言を言うことも、知らず知らずのうちに習慣になった。まるで他の人と話しているかのようで、自分がこの空間に一人ではないかのようだった。
たぶん、僕はまだ誰かと一緒にいたいと願っているのかもしれない。
僕みたいなダメ人間でも、誰かが僕の傍にいてくれることを願うことはある。
モニターに表示された「GAME OVER」の文字を見つめる。携帯の時間を確認するともう午前3時だ。
寝る準備をしなければならない。理由は他にはない、ただ明日の仕事がひどい状態になるのを避けるためだ。
ダメ人間が生きるために最も基本的なことは自分の仕事をしっかりとこなすことだ。
これが、僕がこの会社に残り続ける唯一の価値だ。
これは責任感とは関係ない。ただ明日や来月に自分がまだ呼吸し続けていられるためにやらなければならないだ。
ゲームを終了し、たばこを吸いながら意味ないセクシーショートのTicTokで見て、自分の頭を眠りの状態に調整した後、寝る前の身支度をするために風呂に入る。
洗顔の過程で鏡に映る自分を見つめる。
ひげ面で、乱れた髪とクマとたるみがあり、まるでアニメの中にしかいないようなダメおっさんのようだ。
銀魂のグラさんだら、たぶん僕よりもまともだな。
彼には少なくとも仲間がいる、僕のような無能なダメ人間にはいない、愛してくれる妻がいて、銀さんのように頼りになる。臭い趣味が合う友達もいる。
僕には一つもない。
僕の顔はまるで化け屋敷のスタッフになれるほど。着飾りもせず、暗い隅に隠れているだけで人を怖がらせるができる。
誰かが「変えてみれば違う」と言うこともあるが、僕はそれは僕の経験を経ていない人が言う言葉だと思っている。
そんなことを言える人はおそらく社会の底辺で生きていないし、いわゆる才能も持っている人だから、彼らにとっての変わることは息をするのと同じくらい簡単だ。
僕のような人にとって、変わり続けても結果は必ず変わらないし、逆にさらに惨めになる可能性すらある。
「希望がある世界」はすでに遠く手の届かない場所にある。
だから僕は幻想を抱いてない。
風呂から出て、自分が前に倒れていく感覚を覚えている。
ビールを飲んだ時に残されたガラス瓶を見て、僕はそれに直接乗り上げ、そして前に倒れる。
時間の経過が突然遅くなった。
前に倒れるの時、僕の頭が急速に動き始め、そしてなぜか目の前にゲームが終了したばかりの画面が突然現れる──
GAME OVER
血のような赤い文字が黒い背景に現れる。
思い出した。
風呂に入る時、ガラスの瓶を蹴り落としてしまったが、それに気づかずにそのまま風呂に入った。
風呂の外の通路は非常に狭く、僕の「体」が横たえるのにちょうど良いくらい狭さで、僕の「頭」のスペースがはみ出るくらいだ。
僕は壁に手をかけて災難を防ぐべきだっただが、おそらく長期にわたる疲労が僕の手を思考のスピードに追いつかせず、または死に際の状況であるため、僕の脳は危機的な状況で加速的に動いたのかもしれない。
「走馬灯は見えない、たぶん大丈夫だ!」と今まだそのように考えられる。
カッ!
これは僕が聞いた次の音だ。
骨の伝達によってはっきりと聞くができる。僕はこの音の出所をよく知っており、それは僕の頸椎から来ていた。
次の瞬間、目の前は真っ暗になる。
僕はもう死ぬしかない。
それに疑念の余地はない。
しかし、意識は消え去らず、魂の状態で自分の肉体を見ることもなく、ただ闇に包まれた。
これが普通なことなのか分からない。
僕は死んだことがないから。
次の更新日は9/30(土)です。
どうぞよろしくお願いいたします。