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ダメ人間の僕はクソ神達の賭けるものとなる。  作者: ハピ
第一章 賭ける物になる
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第十六話 忘れられない初めての冒険

 今日は旅に出てから3日目で、ハジメタウンを離れる。

 初日の夜にアローン狼に襲われた後、2日目の夜も同様にアローン狼に襲われた。

 しかし、初日の経験を活かして2日目のキャンプ前には準備を十分にしており、襲ってきたアローン狼は楽勝で倒せた。

 その結果、戦利品としてアローン狼の皮を5枚手に入れた。

 今回の旅で、狼の皮だけで5枚の銀貨を稼いだことになる。

 エルフに分ける分を差し引いても、最低でも2銀5銅貨は儲けたことになる。

 それに加えて、レベルもLv5に上がり、ステータスも上昇した。


 筋力:16 知性:10 根性:7 敏捷:12 幸運:0


 ただし、ステータスの向上率を見るとレベルとは絶対的な関係がなく、また線形的な向上でもないようだ。

 エルフのステータスを参考にすると、ステータスの向上は戦闘で使用した能力と関係があるようだ。

 エルフのレベルはこの2日間の戦闘でLv6からLv7に上がり、現在のステータスは:


 筋力:15 知性:6 根性:25 敏捷:15 幸運:13


 エルフは戦闘で後方から射撃支援を行った後、何故か前衛の肉盾となる。

 そのため、レベルが1つしか上がっていないにも関わらず、根性が5ポイントも上がり、他のステータスはほとんど変化がない。

 一方で僕は主要な攻撃役を担当しているため、筋力と敏捷が顕著に向上しており、根性と知性はあまり変化がない。

 この対照的な状況を考えると、今後は特定のステータスを向上させることもできそうだ。


 だが、エルフは…

 彼女は前衛に転職するべきか?


 しかし、この2日間の戦闘で僕は確信した。

 エルフの能力は、皆が知っている以上に強いだ。

 バカかもしれないが、戦闘能力においてはエルフは決して弱くない。

 エルフが持つ卓越した弓術に加え、戦士のスキル「怪力」と「強化の肌」を備えており、遠距離からの攻撃と近接戦が可能だ。

 強力ではあるものの、エルフは戦闘時の常識が不足している。

 しかし、適切な指示があればエルフは強力な戦力となり得る。


 おそらくこの世界では、「個々が戦闘能力を持つこと」が冒険者の基本的な常識なのだろう。

 ただ、これは絶対的なものではなく、強力な能力を持っていても、その能力をどう使うかが問題だ。

 そこで僕のリーダーシップが問われる。

 いや、むしろこのような理由からこそ、「リーダー」と「メンバー」の区別が存在しているのだろう。

 エルフは明らかに「メンバー」に分類される。

 僕から見れば、以前エルフとチームを組んでいた仲間こそが本当のバカだったのだ。

 適切な指示をせず、何でもかんでもエルフが何かをするべきだと思っているだけで、そんな考え方ではエルフの能力を十分に活かせない。

 さらに笑い事なのは、彼らは自分たちの無能を認めず、逆にエルフの「バカ」スキルにすべての問題を押し付けていたことだ。


 この世には無駄な存在などなく、他人の長所を見つけられないバカが多い。


 エルフと一緒に旅をしているなかで、僕はそう思ってきた。

 そして、エルフと一緒に旅する最大の利点は、特に何もすることがなくても退屈しないことだ。

 なぜならこのバカは、何かしらのトラブルに巻き込まれることが常だからだ。


「助けて!なんであたしが吊り上げられているの?!」


 罠に足をかけてしまい、木に逆さまに吊るされて揺れるエルフを見ながら、僕はこれからも彼女との旅行がまったく退屈しないことを確信した。


「この2日間、なぜ何度も罠にかかるんだ?なぜいつも狩人の罠に引っかかることができるんだ?」

「あたしはただ見逃しただけだから、早く助けてよ!」


 いや、どう見ても罠は非常に分かりやすく、引っかかるのはその人の問題だ!

 しかも僕が警告したのにもかかわらず、彼女は無視して歩き続けた!

 その結果、案の定罠に引っかかった。


 僕はため息をついて罠の元を見つけて縄を切った。

 エルフは地面に直接落ちて頭を打ちながら痛そうに転がった。


「なんで急に降ろすの!石にぶつかっちゃったじゃない!」

「それならずっと吊るしておいた方がよかったのか?」

「そういうことじゃないよ!ゆっくり降ろしてもよかったんじゃないの!?バカ!バカ!」

「まぁ、どうでもいいけど、ただ痛いだけだろ。普通の人なら頭がパンパンになってるはずだぞ。」


 エルフの頭がぶつかった石は砕け散った。


 普通なら頭の方が砕けるはずで、石が割れるのはおかしいだろ?

 こいつの頭は強化の肌の効果でどれくらい硬くなっているんだろうか?


「あたしも普通の人だ!」

「普通の人は石をこんなに割らないよ。さあ早く起きて、あなたが言ってたんだろ、もう森を出るって。罠にかからないように、早くここを出よう。」

「うぐぐ……」


 頭を抱えながら、エルフは再び先導を始めた。


 森を抜けると平原が広がる。

 遠くにはハジメタウンの西に広がる城壁と畑が見え、畑で働く人々の姿も見える。

 距離があるが、それでも心地よい気分を感じる。

 なぜなら、アローン狼の森は冒険者や狩人以外はほとんど足を踏み入れることはないからだ。

 狩人であっても、基本的には昼間に罠を設置したり獲物を回収してすぐに去るだけで、冒険者たちも僕たちのように長居することはない。

 夜の森は非常に危険だ。

 だからこそこの2日間は森で他の人影を全く見なかったのだ。


 そう言いながらも、帰ってからはおそらくこれが僕が最も思い出したい冒険になるだろう。

 なにしろこれが記憶に残る初めての冒険であり、エルフという手間のかかるが面白い仲間がいたからだ。

 初めてだからこそ、忘れがたい冒険だ。


 平原に到達すると、僕たちの進行速度は明らかに速くなった。

 地勢が平坦になっただけでなく、エルフがもう罠に引っかからないからでもある。

 夕暮れ時にはハジメタウンの北西、ハジメ遺跡の入口に到達した。

 夜が迫っていたため、入口近くでキャンプを張る。明日の早朝に任務を遂行し、その後に町に戻ることにした。

 キャンプの準備ができたら、火をおこして夕食の準備を始めた。


 やはりどこかおかしい。


「エルフ、今までで何か変わったことに気付いたか?」

「変わったこと?」


 香ばしく焼けた干し肉をかみしめながら、エルフは僕を見て首をかしげた。


「例えば、僕たちの後ろを誰かがついてきているようなことはないか。」


 初日の夜、鈴の罠に触れた謎の生物を思い出し、今までを振り返ると、なんとなく遠くで視線を感じることがあった。

 今も同じで、何かに見られているような気がする。

 僕はどうもこれが気がかりで、僕が敏感すぎるのか、それとも本当に何かに監視されているのかわからないため、五感が僕よりも優れているエルフに尋ねることにした。

 しかし、僕の質問を聞いたエルフは眉をひそめ、首を横に振った。


「あたしは何も感じなかったかな。錯覚なんじゃないの?」

「そうなの?そっか……」


 エルフに確認しても何も感じないのなら、やはり僕が敏感すぎるだけなのかもしれない。

 孤独に慣れているせいか、他人の視線に敏感になることがある。

 でもエルフが否定した以上、おそらく僕が勝手に考えすぎているだけなのだろう。


「ヘロ君、明日の最後のクエストが終わったら、ハジメタウンに戻るんだよね?」

「うん、戻らないとダメだ。補給はまだ十分あるけど、荷物が多くて大変だしね。」


 終わりなのか?

 初めてこんなに完璧な旅をした。

 今まで半ばで見捨てられていたことが多かった。

 でも明日で終わりなのか?


 スライムが詰まったバックと、アローン狼の毛皮を見つめる。

 重さ的には軽いけれど、かさばりがちで旅には不向きだ。

 だからクエストを終えたら、まず町に戻る必要がある。


 そして、一晩休むべきかどうかも考えなければならない。

 ちゃんとした食事を摂り、補給をし、次の行程を計画する必要がある。

 まだやることはたくさんある。

 エルフが何もできないから、僕が忙しくなるのだろう。


「だから……だから旅はこれで終わりなの?」


 エルフは変な顔をして僕を見る。その顔はどこか惜しい感じがする。

 なぜそんな表情を浮かべているのか理解できない。

 この名残惜しそうな表情に数秒考え込んで、なぜか胸がキュッと締め付けられる感覚がする。

 完璧な答えを言ってあげたいが、僕には最良の答えがわからない。


 彼女に「契約はあと七日残っている」と言うべきだろうか?

 いや、それが彼女がこの表情を浮かべている理由ではないはずだ。

 彼女がこの表情を見せる理由がわからない。


 一人で旅を続けるのは嫌だろうか?

 答えは否だ。

 正直言って、エルフとの旅は悪くない。

 むしろ、長い間感じていなかった興奮や喜びを味わえている。

 エルフは面倒か?

 面倒くさいし、かなり厄介だ。

 彼女の相手をするのは手間がかかるし、いつも変なことに気を取られている。

 彼女が途中で見捨てられる理由も理解できる。

 面倒くさい性格と独特な思考パターンのせいだ。

 もちろん差別的な言い回しではなく、良くも悪くも客観的に問題を判断しているだけだ。

 エルフがいない場合の利点と欠点は?

 利点はおそらく資金を迅速に蓄積できるということだ。

 慎重にクエストを進めれば、1ヶ月で50枚以上の銀貨を稼ぐことができるが、傍に居て支えてくれる人はいない。

 それは非常につまらないだろう。

 考えてみれば利点は欠点よりもずっと大きいはずだが、それでも僕はそうしたくない。


 もしかしたら、僕はそんなに理性的ではないのかもしれない。


 何も良いことがなかった前世で、自分の心はもう壊れ果てていると思っていた。

 感情の大部分を失ってしまったと思い込み、興奮もせず、喜びすら感じないと思っていた。

 毎日がまるでロボットのような生活で、起床、仕事、退勤、部屋でゲームをして過ごす。

 仕事は食べるため、ゲームを買うため、生き延びる手段であり、「生活」は存在しない。

 人生はただ終わりに向かって進んでいくだけで、目標は何もない。

 死んだらそれでいい。


 うん、僕は確かに死んでしまった。

 しかも、自分が考えもしなかった方法で。


 ただし、自分があまりにも無価値で、神の遊びの賭けになる程に役に立たなかったことを考えたことはなかった。

 そして、この世界に投げ込まれてしまった。

 異世界で考えもしなかった冒険を始め、今回の旅でかつて捨てたと思っていた感情を再び取り戻した感じがする。


 エルフがいない旅も受け入れられるかもしれないが、想像することができない。


 もちろん、他の仲間とチームを組むこともできる。

 でも僕はバカ以外の人とは上手くやっていけない気がする。

 やはり僕はただのダメ人間で、ダメ人間と一般人が平和に共存することは絶対に無理で、バカと一緒にいるのが一番心地よい。


 だが、エルフとの旅を続けたいと思う理由の一つは、エルフは美人だからというのは否定できない。

 男として、男の本能に従うことは普通のことだろう?


「明日ハジメタウンに戻るんだ。別の場所に行くつもりはないの?」


 エルフの顔にますます寂しさが滲み出てきた。

 彼女は実際には旅行を終えたくないのだと確信する。

 でも、それは現実的ではない。

 旅はいづれ終わりがやってくる。


「なんだ?あなたは寂しいのか?」

「寂しい…あ、あたしが寂しいわけないし。へロ君が寂しいのが心配で、しかも案内役がいないと、へロ君はすぐ死ぬんじゃないかしら!」

「僕は結構寂しいよ。」

「えっ!?ほらっ、げほっ!」


 エルフは僕がそんな風に言うとは思っていなかったようで、急いで喉に詰まった干し肉を飲み込み、すぐに吐き出し、そして咳き込んだ。


 かかかかかかかか彼は何を言っているの!?

 どういう意味!?

 その言葉はどういう意味!?

 なんで…あたしをハジメタウンに捨てるんじゃないの?

 普通、そうするはずじゃない?

 なんで…そんな風に言うんだろう?

 理解できない、本当に理解できない……


「おい!そんなに噛みつくなら、食べ物を無駄にしないでくれるか?」

「それはあたしのせいじゃない!へロ君の話が気持ち悪かったから!」

「食べ物を無駄にしたことを僕に押し付けないで、ただあなたの質問に答えただけだ。」

「あ、あたしが頼んでそんなふうに答えてって言ったわけじゃないから、全部へロ君のせい!」


 エルフは顔を赤くしながらそう言って、地面に吐き出した干し肉を僕に投げつけてきた。

 僕はそれをすぐに避けて、泥まみれでほぼ泥状になった肉に当たることはなかった。


「汚い!最初は寂しいと思っていたけど、今は全然そう思わなくなった!」

「撤回はできない!寂しいなら寂しいままで!最初は寂しいって言って、それから急に寂しくないって言っても無理があるでしょ?」

「あなた…じゃあどうすればいいんだよ?それにあなたの問題に僕がどう関わるんだよ?」

「あ、あたしは冒険者傭兵だから、みんながあたしを雇う権利がある。だから寂しいと言うのは、ずっと雇いたいってことよ?」

「それなら雇わない。それにこれは僕の問題じゃないし。そこまで言うなら傭兵を辞めたら?」

「まだこんなに借金があるんだから、辞めるわけにはいかないでしょ?へロ君は考えすぎだよ、このバカ!バカ!ヘロバカ!」

「どう考えてもあなたの問題だろ!冒険者って結構稼げるし、雇用料を払わないで報酬をあなたと半分こにすれば、僕の収入は簡単に3枚近くの銀貨になるだろう!」

「それはヘロ君が異常に早く金を稼いでいるからだ!普通の冒険者がそんなに速く稼ぐのは不可能で、アローン狼はCランクの魔物だ。普通なら完全な冒険小隊がいないと、狼の群れには対抗できない!」


 え?そうなの?


「それにしても、なんでヘロ君がシャーロットのスキルを使えるの?見た目は全然強そうじゃないのに、なんでそんな高級な技能を使えるの?全然普通じゃない!」


 冒険者カードの情報を見ると抜刀斬はBランクのスキルで、Cランクのモンスターを処理するのは当然簡単だ。


「あなたも変わってるよ。弓使いのくせに『強化の肌』とか『怪力』とか、戦士の技能持ってるんだから、何言ってんだ。」

「まったく違う!なんでそんなスキルが急に出てきたんだ!」

「くどいな、で、あなたはどうしたいんだ?」

「何をどうしたいって?」

「パーティ組む?それともこのまま解散?」

「あ、あたしはどうしていいかわかんないよ!」

「まぁいいや、とにかくまだ時間はあるから、ゆっくり考えろ。僕があなたを雇ったのは10日だけだし、今はハジメタウンの西側しか探索してないんだ。東側もまだだから、のんびり考えればいい。」

「東側も探索するの!?これは絶対に搾取だ!悪い上司!これはブラック企業なの!?」


 この世界にもブラック企業はあるのか?


「ただ支払った金額に見合った働きを求めているだけだ。そもそも能力があるなら冒険者傭兵になるな、そうすればこんな問題はないんだからな!」


 このバカと言い争うだけで、どんな複雑な感情もどうでもよくなる。

 だって、今の僕は楽しいから。


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