第十二話 スライムを大殺戮!
「やめて!お願い!やめて!!!!!この可愛い子たちを許してください!!!あたしに何をしてもいいから!どうか彼らを許して!!!」
スライムを救うのためにそこまでするのか!?
僕は再び通り過ぎるスライムを突き刺した。
エルフが僕の動きを止める怪力を使っても、僕の手や草原のスライム、クエストを成功させたいという決意までは抑えることはできなかった。
だから、僕の動きが制限されていたとしても、スライムが僕の前を通り過ぎる度にゆっくりではあるが討伐を続けることができた。
「まじか、あれは何をやってるんだ?」
「ん? 彼女はバカエルフじゃないか? 彼女が抱いている男は誰だ?」
53匹目のスライムを切り裂く頃にはエルフはもう叫ぶのをやめ、ただ顔を膨らませて僕を見つめてガムのように僕の太ももにぴったりくっついていた。
彼女はずっと僕の太ももを抱きしめており、その変な行動のせいで通りかかる冒険者たちの注目と議論を引き起こしていた。
「あれが伝説の『調教』なのか?」
「あの男、なんであのバカエルフを調教できるんだ?見た目は強そうだが……」
「バカエルフの体べとべとしてるよ、あれって……」
「そういうことしておいてどうして宿に戻れるの?」
「なんて恥ずかしい!あの二人は冒険者の恥よ……」
エルフにイライラしている僕は、その5人のチームを睨みつけた。
僕の視線に気付くや否や、彼らはすぐに僕たちから遠ざかった。
この世界の人たちは他人の噂話を小声で言うべきだと気づかないのか?
なぜそんなに大声で話すんだ?
僕の耳が聞こえないとでも思っているのか?
「いい加減早く離れてくれないか、勘違いされてるよ!」
「スライムの殺戮が止めない限り、離さない!これが条件だ!」
「あなたに何様の資格があってそんな条件を言うんだ!?あなたはただの雇われ冒険者だろ!」
「あたし、あたしは……とにかく、見て見ぬ振りはできない!」
エルフとの無駄な論争を続けるのは面倒くさいので、僕はこのまま通り過ぎるスライムを斬り続けた。
エルフは全く僕の任務を止めることはできなかった。
そして意外なことに、スライムに対するエルフの頑なな抵抗は、僕が100匹のスライムを殺すまで続いた。
彼女は両膝を抱えて横にしゃがみ、泣いていた。
「スライムたち!ごめんなさい!命を救えなくて……」
「もういい!これが仕事だ!とにかく、もう殺さない!あなたもそんなに泣くな!」
不満をこぼしながら、僕はスライムの残骸をバックに収めた。
スライムの残骸はゼリーと触り心地が似ており、非常に軽い。
バック半分ほどまで詰めても、背負っているときは非常に軽い。
「スライムたち!もし復讐したいなら合体して巨大なスライムになって、相手の顔を覚えて、それからきちんと復讐してください!」
「集まってもスライムはスライムだ!何ができる?」
荷物を片付けた後、僕は冒険者カードを取り出してレベルアップの効率を確認した。
100匹のスライムを倒した結果、既にLv2に上昇していたが、ステータスは筋力が3ポイント、敏捷が2ポイントしか増えておらず、他の能力は変化してない。
このレベル制度とステータス向上量はなんだか分からない…
100匹のスライムでたった1レベルしか上がらないなんて、経験値が少なすぎるように思える。
新人期のレベルアップの難易度は高くないはずなんだけど…
それとも、この世界のシステムは僕が知っているゲームと違う?
「さて、次の目的地に向かう。」
「断る!あたしは行かない!あたしはスライムキラーの手先になんてならない!あなたはまた他の場所で何かを殺すつもりでしょ!悪魔!あたしは手伝わない!」
エルフは頬を膨らませ、立ち上がる気配がまったく見受けられない。
少しだけイライラする。
彼女がバカだとは理解しているので、この程度では怒りよりも面倒くささの方がが勝るかもしれない。
僕は再び剣を取り出した。
「な、なんでまた剣を抜くの!?」
「あなたが動かないから、何もすることがなくてスライムを殺してレベルアップするしかないんだ。」
このセリフ、まるでラノベのタイトルのようだな…
「やめて!!!もう可哀想な子たちを傷つけないで!!!あなたは完全に悪魔!分かった!あたしたちはここから立ち去る!可愛いスライムはもう殺さない!!!!」
僕の脅迫を聞いた瞬間、エルフはすぐに立ち上がり、僕を指差して大声で叫んだ。
うん、やっぱりバカエルフをコントロールするにはスライムのことを利用すればいい。
「これからあなたが言うことを聞かないと、僕はスライム平原に来てスライムを殺す。分かった?」
「うぅ…酷い!!スライムであたしを脅すな!!!」
なぜスライムで脅されることになるのか?
バカエルフはスライムのお母さんなのか?
エルフは不満そうな表情で先導を始めた。
しかし、不本意そうな顔をしているにも関わらず、まるで僕が再びスライムに手を出すのを怖がっているかのように、進むスピードはそれほど遅くなかった。
すぐに僕たちはスライム平原を離れ、森に入った。
それはハジメタウンの南西地帯だ。
森の中はどの方向を見てもあまり変わり映えがないが、ここはエルフの庭のような場所らしい。
彼女の森の中を進んでいく姿は、一切ためらいが無いように見受けられる。
さっきのスライム狩りが予想以上に時間がかかったため、最初の宿泊地に到達した時間はかなり遅れていた。
火を焚いた後、僕は今晩の夕食の準備を始めた。
冒険者ギルド内のクエスト掲示板のそばには、ハジメタウン周辺の地図が貼られており、各クエストの場所が記されている。
スライム平原はハジメタウンの真南にあり、アローン狼の森は西南にある。
そう、僕たちはハジメタウンを時計回りに探索している。
左半分の探索が終わったら、ハジメタウンの北の入り口からハジメタウンに戻り、補給とクエストの報告をしに行く。
理論的には5日間で西半分を回りきり、残りの5日間で東半分に向かう予定だ。
今夜のキャンプ地は地図で見る限り川のそばで、僕は方向があまり分からないがエルフが分かっていれば十分だ。
この点においてのみ、エルフは意外に頼りになる。
「エルフ、ちょっとルールを破るかもしれないけど、あなたのスキルを知りたいんだ。」
「ふん!話しかけないで!嫌なやつ!スライムキラー!」
僕があげたパンと炭火で焼いたほ干し肉を食べながら、エルフは顔を背け、食べ物でふくれた頬をより際立たせた。
「ただのスライムだろ!そこまで言う必要あるの?」
「スライムにも家族がいるんだ!『ただのスライムだろ』って何よ!あんなに可愛いのに彼らを殺すなんて、もういい!あなたとは冷戦する!!!」
「あなただって草食じゃないだろ、それなら質問だ!動物を殺さないで干し肉をどうやって手に入れるの?」
「うーん…..」
エルフはちょっと固まって手に持っている干し肉を見つめ、同時に嚥下の仕草を見せ、次に困惑の表情を浮かべた。
明らかに彼女はこのことについて考えたことがなく、この反応は僕の予想と一致していた。
「鶏、牛、豚、この干し肉の材料は生命だろ、それともスライムの命の方が大事で、他の生物のことはどうでもいいってこと?」
「そ、そんなことない!でも干し肉は美味しいからいいんだよ!それに、話しかけないで、あたしたちは冷戦中だから!」
干し肉が美味しい?
この乾燥してかたいものが、ほんのわずかな肉の味とまったくジューシーさを感じさせないものが、美味しいとは思えない。
野外旅行でなければ、絶対にこんなものは食べたくない。
「これは超不味いと思うんだけど。チャンスがあれば本当に美味しいものを作ってやるから、その時になったらこの不味さがわかるよ。」
「本当に?じゃあ、あたしは…って食べ物で誘惑しない!というかあたしたちは冷戦中だから!」
こいつ、本当に冷戦って言葉の意味を理解しているのか?
「質問だ。干し肉を食べるためには生物を殺さないといけないとしたら、あなたは殺すか殺さないか?」
「そ、それは…難しい質問ね!とにかく、無意味な殺しは反対!あなたみたいにスライムを殺すのは全く意味がない!」
「どうして意味がないと思うの?本当に意味がないなら、どうして僕はスライムの死体を回収するんだ?」
僕はそう言って、スライム狩りの依頼書をエルフに投げた。
「よく見ろ、依頼主は誰だ?」
「冒険者ギルド…付属のレストラン?」
「そうだ、依頼主は冒険者ギルドのレストランだ。メニューにはスライム料理がいくつかあるだろ?スライムメーン、スライムシチューとか。だからこれは食用のスライムを回収するための狩りで、動物を殺して干し肉を作るのと同じくらいの意味があるんだ。無駄な殺しじゃない、ただ食べるための狩りさ。」
スライムの食感が気になっても、経済的に苦しいから、もっと良いものを食べるのはある程度裕福になってからの話だ。
計画に従って東西のすべての任務が終わったら、約1銀60銅ほど稼げるはずだ。
バカエルフに分け与える報酬と雇用の費用を差し引くと、おそらく66銅しか残らない......
見たところ、もう少し努力が必要そうだな。
スライム狩りは確かに簡単だが報酬が低すぎるため、ほとんどの冒険者はそのようなクエストを受ける気はない。
ただし、僕のようなまだ低レベルの冒険者には他に選択肢がない。
RPGと同じように、低レベルの状態で高レベルクエストを受ければ死を招くだけだ。
しかし、このような考え方もやや異質な感じがする。
スライム100匹狩猟で1レベルアップなんて、経験値の比率がどう考えても合理的ではない。
レベル23の戦士がどれだけ強力であるかを考えると、この世界ではレベルは単なる数字ではないかもしれない。
もしそうなら、適切な方法を見つけさえすれば、レベルと質を迅速に向上させることは難しくない。
「く、くそ!なんで言い返せない!なんでこんなことになるの!」
「なぜならあなたは僕が言っていることが事実だとよく分かっているからだ。だからあなたは反論できないんだ。」
エルフは泣きそうな顔で僕をにらみつけ、最後には首を振り払った。
「とにかくどうでもいい!全部あなたのせいだから!そしてあたしたちは冷戦中だからね!」
これは何とも非論理的な結論だ......
女性って本当にこんなに面倒なのか......
こいつはこうだし、シャーロットもこう......彼女も同じだ。
ついつい元カノを思い出してしまう。
付き合っていたとき、僕たちは何度かこんな感じで論争したことがあった。
もちろん、相手の論理や考えはエルフほどひどくなく、本当の論争や口論は時間がかかって終わることがほとんどだった。
いつも最後には僕の主張が勝利し、彼女は僕が正しいことを理解しつつも負けたくない一心で首を振ってこのような理不尽で問題を僕のせいにした。
僕は論争好きというわけではなく、間違いを見つけたときでも詭弁を張ることは絶対にない。
論破した後、彼女はいつも同様の言葉を僕に投げかけてきたが、それは一種の甘えであることをよく理解していた。
だから僕はいつも最初に謝罪し、彼女も謝罪を受け入れた。それが僕たちの合意だった。
しかし、そのような合意が彼女に利用されてしまい、最良の別れの口実になってしまった──
女性が何を望んでいるかを理解できないときがある。
女性の心を読むのは難しい。
なぜなら僕はプロメテウスのように他人の心の声を聞くことができないからだ。
女性には譲るべきだという理解はあるが、自分が損することばかりだ。
もちろん、これは単なる自責の考え方に過ぎない。
事実は僕が考えているほど複雑ではない可能性もある。
実際、おそらくそれは単に金の問題だ。
金のために去るのは仕方がないことでしょう。
結局のところ、僕の財布は貧しく、チリンチリンと鳴っている。
現実は理想よりもずっと重要だ。
彼女は僕の家族の背景や状況をよく知っており、今思い返せば、彼女が期待していたのは僕ではなく、おそらく継承するかもしれない家産の部分だったのかもしれない。
こう考えれば気持ちが楽になり、自分を慰められる。
間違いは自分にあるわけではなく、彼女がただの金銭至上主義者だっただけで、惜しむに値しないと感じられるのだ。
これは自分欺瞞に過ぎないことはよく理解している。
相手をどれだけ悪く言っても、心からの不快感を無視して自分を欺くことはできない。
本当に奇妙だ。
明らかにバカな言葉を口に出しただけなのに、こんなにも多くのことを回想できる。
エルフに影響を受けたのか、それとも他の人が言うように僕は本当にバカかもしれない。
「な、なんでいきなり黙ってるの?」
エルフがそう言いながら、明らかに寂しそうに僕を見ている。
それに僕はため息をつかざるを得なくなった。
こいつは本当に冷戦の意味を理解していない。
たぶんどこかで覚えた単語を持ってきて適当に使っているだけだろう。
「あなたは僕と冷戦するって言ってたじゃないか?だったらあなたの冷たい尻に熱い顔を当てるのは何でだ?」
「本当にエロい!顔をあたしの尻に押し付けようなんて!」
「その言葉はそういう意味じゃない!あなたはどういう風に理解したんだ?僕があなたの尻に顔を押し付けるってどういうことだと思ったんだ?」
「明らかにあなたが言ってたじゃない?シャーロットも言ってた!もし乱れるつもりなら、あたしはヘロさんを折ってしまうって!」
「何を折れってんだ!」
エルフの怪力を考えると、彼女は本当に僕を地面に押し付けて、僕の大事なものを折ることができる。
「そうだよね…何を折れってことなんだろ?」
バカで良かった。




