どうもー勇者でーす!今回はですね!無敵モードと壁貫通モードを使って魔王城に速攻で行ったら魔王がどんな反応するのか見ていきたいと思いまーす!
「はいどーも!勇者でーす!!」
手に映像を録画できると言う不思議な結晶を持ったその男はその結晶にそう話しかけた。装備は鎧と伝説の剣といういかにも勇者という感じだ。
「今日はですね。この壁貫通モードと無敵モードを使って魔王の驚く顔を見てやろうと思います!!」
そう言う勇者が壁に触れると、体が壁を貫通してしまう。コメントには《やばいだろこれ》《見つかったら終わりじゃないか?》と言ったようなコメントが書かれている。もちろんこの2つはいわゆるチートというやつで本来ならできないものなのだ。もちろんコメントにあった通り見つかればどうなるのか分からない。勇者もそれを覚悟でこの配信をしている。
「まずは洞窟のボスのところに行ってみます」
勇者はそう言いながら洞窟の中をするすると進んでいく。道中鉄格子で通れない道や謎解きをしなければならない場所に遭遇するが、壁を貫通できる勇者には関係ない。でスルスルと何の問題もなくそのボスの部屋へと辿りついた。
「ん?きたか」
「来てやったぜ」
そのボスはトカゲのような見た目で舌を出しながら剣を握る。勇者が余裕そうに「来いよ」とだけ言うと勢いよく襲いかかってきた。勇者は抵抗をせずただ攻撃をくりかえす。だがその攻撃は効いているとは思えないのだ。その攻撃を受けてもなお未だに余裕の笑顔を見せている。先ほど言っていた無敵モードで全くダメージを受けないのだ。その姿にトカゲのボスは少しずつ焦りを見せる。
「なぜだ?なぜ効かない」
「どうしてだと思う??」
「フレイムブレス!!」
そう言いながら口から炎を吐くが無敵モードの勇者には全くと言っていいほど聞いていない。困惑するトカゲのボスに一発、また一発と攻撃をする。トカゲのボスは応戦するがやはり全くと言っていいほど効かない。痛めつけるかのような陰湿な攻撃にコメントも《こいつ性格悪いな》などと言う否定的な意見も見受けられる。
「どうした?もう終わりか?」
「くっ!!」
「ほらほらー!早く倒さないとやられちゃうぞおー」
「くっ」
その光景は戦いというよりもうイジメに近しい何かだった。何度も攻撃をするボスに嘲笑うかのように痛ぶる勇者。コメントでも《もうお前が魔王でいいよ》と言われるぐらいだ。
「はーつまらん。魔王倒すか」
「うぐあああああああ」
ボスを倒してつまらなそうにため息をついた勇者は洞窟の先を進んだ。その先も全くと言っていいほど同じ展開だった。敵が現れても攻撃でダメージ1つすら受けない。ただ倒して終わりと言う単調な作業と化していた。それゆえにコメントにも《単調だ》だの《同じことばっか》だのと言い始める者もいる。勇者はそれはいけないと早く魔王の所に向かおうとするが鳥のボスが行く手を阻む。
「ゲゲゲー!!お前が勇者か!」
「もういい、消えろ!!」
ドーン!という音と共に鳥のボスは一瞬にして消えて無くなった。勇者はついに攻撃力9999を使う事にした。これで魔物達は一瞬にして消し炭になる。楽に魔王の所へと向かった。
「来たな勇者...なんだか早い気もするがまあいい」
ツノと邪悪なオーラにマントを羽織ったその魔王はその威圧感のある雰囲気だ。赤や紫のデザインされた椅子に座っている。
「早いことはいい事だ。これで側近にいちいち場所を尋ねなくて済む」
「そうかい、行くぞ!!」
戦いが始まった...のだが激しいバトルとはいかなかった。それもそのはず、無敵モードの勇者には何一つとして攻撃はが通らないのだから。攻撃力9999のチートは切ってあるため、勇者の攻撃はそこまで喰らわせてないのだが勇者側は一切の攻撃を受け付けていない。
「なんだ?なんだ??」
「お前には教えてやろう。俺の『無敵モード』の事をな」
「何だと!」
「これで俺は無敵!!何もダメージを受けない!!俺は最強!!!はっはっは!!」
「そんなわけ...ないだろう!!!」
魔王は邪悪な波動を飛ばす。これで全てのバフなどを消せる。これで消せないものは無いのだ。魔王は高笑いしながら攻撃をする。
しかし勇者はニヤリと笑いながら涼しい顔をしている。全て打ち消したはずなのに全く効いていない勇者に驚きながらもう何度も攻撃を繰り返す。だが結果は同じだ。効いていない。
「はっはっは!!」
「くっ!!
いくら魔王の力とはいえどチートという根本を変えるものに対しては無力だ。何も手がしできるはずがない。
「もう終わりか?魔王のくせにこんなに雑魚なんてな」
「っ!!」
「俺と止めたければ神でも運営でも持って来い!はーはっはっは!!!」
そう高笑いする勇者に悲劇が起きた。突然勇者の姿は消えたのだ。そしてこんな文章が現れる。
《不正なデータが検出されました。即座に使用を禁止します》