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009 悪役令嬢マリア、戦場に行くその4

「曲乗りをする大将とは珍しい」


「ありがとうございます」


「お前は女か?」


「はい、王国軍にも色々事情がありまして、私のような若輩者で申し訳ございません」


「いや、気に入った。ワレの妻になれ!」


「今は神々への祈りの最中でございます。真面目にしてくださいませ」


「これは参った。すまなかった」


 到着の儀式は草原を人の血で穢してしまう事を神々にお詫びする儀式だったりする。この後は大将の馬比べになる。どこまで相手の馬に並走できるかを争う。


「お前の馬は良い馬だが、まだ若い。そろそろ限界だろう」


「はい、おっしゃる通りでございます」


「なぜ、走らせた?」


「たぶん、横に走っている馬に負けたくなかったのでしょう。この馬は必ず成長します」


「久しぶりに気持ちの良い到着の儀式だった。ところで、お前の名前は何という?」


「マリア・フォン・クレールでございます」


「ワレはイワンだ。お前の名前しかと覚えておく」


 イワンは騎馬集団の中へ、私はクレールの騎馬隊の中に戻って行った。イワンの騎馬集団が大盛り上がりをみせている。なんか相手の士気を上げただけの気分になった。


 オットさんが近づいて来て、「お見事でした」


「そうですか? 相手の士気を上げただけの気分ですけど」


「いえいえ、作戦が立て易くなりました。相手の騎馬隊はクレール家の令嬢を狙いますれば」


「はい? 今なんて」


「あれだけ見事な乗り手と一戦を交えるのは戦士の誉れですから、間違いなく令嬢は騎馬隊に追いかけ回されます。ですので、敵の騎馬隊を誘導していただければ良いのです」


「相手方もお馬鹿ではないので、すぐにバレると思いますけど」


「彼らにそんな我慢は無理です。罠があれば食い破る。良き敵がいれば戦うのが彼らですから」



 オットさんの言うように、私は敵の大半の騎馬隊を引き連れて草原を駆け回っている。マリオも負けたことを自覚して、イワンさんの馬をよく見て、体力の配分をして走っている。


 私はマリオの上で立ったり、横に隠れて相手の騎馬兵を落としている。でも、王国軍の歩兵は怖がって落馬した騎馬兵にトドメがさせない。と言うことで騎馬兵が減らない。


 自分たちの馬が疲れてきたのを見て、相手方の騎馬兵団が兵を引いた。


 私に新しい二つ名がついた、馬上で舞う舞姫。これもなかなか恥ずかしい。





 その後戦闘はなく、私とイワンさんの騎馬集団が楽しく草原を駆け回る日々が続いた。


「オット殿、これはどう言うことなのか?」


「彼らは欲がないですから、新しい楽しみ、マリア様と草原を駆けることに見出したようです」


「どう言うことだ」


「そうですね。捕虜にした騎馬兵に聞けば今年は羊もよく育っていますし、イワンの部族含めて彼らはとくに何もする必要がなく、王国からの招きがなければ、ここには来なかったわけですから。もはや攻める気持ちはないのではないかと」


「そろそろ、和平交渉の頃合いかと思われます」


「私が使者に立ちましょう」


「オット殿、よろしく頼む。いつまでもここにいるわけにも行かないのだ」


「承知しました。ハインリヒ王子」



 オットさんが、厳しい顔でイワンさんのところから戻って来た。


「イワンから出された撤退の条件は、捕虜の返還とマリア・フォン・クレールを寄越せと言うものでした」


 こう言うバッドエンドもあったのか知らなかった。それとも新しく追加されたストーリー何だろうか? あっ断頭台に行かなくてすむからバッドエンドとも言えないのか。転生後に遊牧民になる運命とはままならないものだ。でも遊牧民生活を小説に出来るかな。


 ハインリヒ王子としては、どうでも良い婚約者を渡すことで、平和的に解決出来るので、良い取引だと思う。


「オット殿、マリアはクレール家本家の娘で、私の婚約者だ。婚約者を取引材料にして私は王都に戻ることが出来ない」


「ハインリヒ王子、私とオットさんでイワンさんのところに行っても良いでしょうか?」


「何か策でもあるのか?」


「ありません」


「オットさん、私がイワンさんのところに行ってそのまま戻されない可能性はありますか?」


「イワンはそんなマネはしません」


「では、次の交渉では私も同行します」


「マリア、お前、万一と言うこともあるのだぞ」


「その時はイワンさんの馬を盗んで戻って来ます」


「クレール家の令嬢は豪胆だ。母上様そっくりですな」


「オットさんは母上をご存知なのですか?」


「はい、盗賊集団が王都周辺を荒らした際、その指揮下におりました」


「その時の母上の印象はいかがでした?」


「絶対に敵に回したくありません!」


 よくわかる。


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